「夢は第二の人生である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」第92回

 

佐々木 眞

 
 

 

西暦2012年皐月蝶人酔生夢死幾百夜

 

その老人にはさんざん感染防止の注射をしたのだが、どこのワクチンをどれだけ注射しても効きめがないので、しばらく放置していたら急激に健康を取り戻した。5/1

あの家は無人のはずだが夜になると電気がつく。この頃誰かが住み着いているようだ。5/2

冷たい川に足を踏み入れたら、足の裏に何匹もの小さい鮎が潜り込んで、私の足を擽っては逃げ出していくのであった。5/3

子供たちの読み聞かせ塾で、日本国憲法をテキストに使っていると、どことなく良い子になるそうだ。5/4

歯医者の私が頼んだのは歯医者ラーメンだったが、もしかするとハイチラーメンだったかもしれない。5/5

私は早稲田駅から地下鉄に乗ってどんどんどんどん乗り進んだが、いったいどこへ行きたいのかは自分でも分からないのだった。5/6

私の体内に2つの怪しい影が発見されたので、2人の主治医がこれは癌だとかいや単なるオデキだとかいうて論争しているので、その間に私は病院を抜け出した。5/7

東京駅の大広間で私に向かってワンワン吼えながら飛びつく犬がいるので驚いてよく見れば2002年に昇天したはずの我が家の愛犬ムクではないか。5/8

私が設計した車の外装についてカラリストが毎回へんちくりんな「流行色」を押し付けるので、頭にきて自分でペンキを塗ることにした。5/9

あの憎たらしい奴がおらっちを車で追い詰め、撥ねたのでおらっちのメガネがフッ飛んだ。5/10

超時代的な愛子さんの恐るべき下着コレクションを見せつけられた連中は、唖然として見入っていた。5/11

明日病院でどういう風に右手が痛むか、どういうふうにMRI検査やリハビリを頼むか、その練習をしているうちに朝になったようだ。5/12

私その1は激痛に耐えながら右手を動かしていたが、私その2がその1の肩を叩いたので、あまりの痛さにうめき声をあげた。5/13

巨大で真っ白な2頭のチャウチャウにすっかり気にいられて、おらっちは、嬉しいような悲しいような気持で、彼らの面倒をみていた。5/14

ここはアフリカか、それともインドなのか? 大地に横たわっていると、周りでいろいろな鳥が鳴き、獣や大蛇が動いている気配がする。5/15

閉店寸前の真っ暗なデパートの奥の方で、誰かが誰かと争っているような不穏な声がする。5/16

パソコンで妻のウイルス接種の予約をとろうとして何回も何回モアクセスするのだが、その都度「予約できませんでした」という返事が帰って来るので、またしてもパソコンで妻のウイルス接種の予約をとろうとして何回も何回モアクセスするのだが、その都度「予約できませんでした」という返事が帰って来るので5/17

同和円と同心円の違いについて親しく教授のレクチャーを受けていたのに、いざそれらが実際に虚空に姿を現すとどれがどれだかさっぱり分からなくなってしまい、いったいオレは何をしてきたのだと中原中也のように呟くおらっちなのであった。5/18

私は自由が丘に下宿していたが、毎晩駅前の食堂で比較的高価なかつ丼を食べることが固定観念になってしまい、他のもっと安い食堂で蕎麦やラーメンを食べるという選択肢があることすら知らなかった。5/19

すると周りにいた男たちが、この女はまったくの変態だと口々に罵り始めたので、私は割って入り、そもそも変態とは何ぞやと問いかけるとみな論争を避けてちりじりになってしまった。5/20

オレは電話で起こされた。家に電通と博報堂の連中が来ているという。我が家にはモローイ部分があるかから、そこに跨って至急修理せんけりゃならんそうだが、その嘘ほんまかいな。5/21

東京駅の駅員事務所の傍で制服に身を包んだ元D社社長のミズノ氏を見かけた。静岡県で隠棲しているはずなのに、こんな所でなにを? 今更第2の人世という年でもないのに、と謎は深まるばかりだ。5/22

久しぶりに昔の恋人に再会したので懐かしく、どことも知れない町はずれをさまよい歩くのだが、どことなく実在感が希薄なので、本当に彼女なのかと首をかしげている。5/23

せっかくリモートを誓ったのだが、どうしても3密、4密、5密、6密状態に戻ってしまうので、それが人間の本性なだとようやく気付いた訳よ。5/24

老いたる両親を東京のあちこちに案内し、ふと気づけば2人ともいないので、懸命に探したらなんと横須賀線の始発電車に乗って発車を待っていたので、さすがだてに年は取っていないなあと妙に感心した。5/25

私たち元同級生は、いまなお太陽の如く光り輝く彼女のためならどこどこまでも付き合うぜという固い決意を互いに披歴しあいながら地獄の底へ降りて行ったのであった。5/26

その僻地の僻映画館では私が観たいと熱望していたさる名画を上映するというので、朝から期待して待っていたら、上映の担当者が泥酔してフィルムをかけられないといので、激怒して宿に戻ったら、映画館主が恐縮して映写機とスクリーンを持って訪ねてくれたので感激しましたね。5/27

久しぶりに郷里に帰省したら噂を聞きつけた新旧の友達が次々に来訪してくれて、元電通でいまあはその傘下の下請け会社で営業をしているときくワタナベ君が訪ねてくれたので、驚いているところだ。5/28

ヘビ捕り娘のおじいちゃんとおばあちゃんと仲良くなりました。3人は次々に現れる大中小、赤青緑のいろんな蛇の首を後ろ側からエイヤっと捕まえてはおらっちのほうへ投げて寄越すので、たまったものではありませんでした。まる。5/29

晩年のモザールは思いついたらどんどん適当な楽章をこさえて、それがある程度溜まるとセレナードにしたりピアノ協奏曲にしたりしていた、余が適当な川柳が溜まると泥詩抄に転送していたように。530

私は交通事故の後遺症で右腕が痛むので、病院のリハビリに通っていたが、いつも右腕を大根のようにぶら下げていたので、医師たちから白い目で見られていた。5/30

その公園の深い池から吹き上げる臭素が人々の鼻に異常な影響を与え、彼らをして原因不明の殺人事件を惹き起す要因になっているようだ。5/31

 

 

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