「夢は第2の人生である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」 第77回

 

佐々木 眞

 
 

 

私の詩集の校正をしているのだが、目次に聞いたことも見たこともないタイトルが続々と登場するので、いったいこれはどんな詩に対応しているのかさっぱり分からず、右往左往しているわたし。8/2

スズキ氏の新刊が出たので、その編集者に会いたいと思って、版元まで直行したのだが、彼女は超多忙で、とても面会できそうにない。ふと足元を見た私は、両足がいつの間にか毛むくじゃらの密毛で覆われ、右足の踵の上の白骨が剥き出しになっているので驚いた。8/3

真夜中に社員寮に住む社員をホールドアップさせた怪盗がいたが、頭髪が逆さだったその後ろ姿は、さながらこの男の遺影のようだった。8/4

2校が上がったので、校正しようと机に向かったのだが、文字の大きさも書体も、字間の開け方も、どうにもこうにもしっくりこないので、私はその違和感に激しく落ち込んで、思わず泣いてしまった。8/5

わが軍の猛烈な爆撃によって、敵の攻撃がようやく一段落したが、敵は今度は海上を漂っているわが軍のエリート専用の別荘を狙い撃ちしはじめたので、われら2等水兵は再び戦場に担ぎ出された。8/6

こんなトロイ内容の詩が、いきなり冒頭に据えてあったら、誰だって、読む気がしなくなるに違いないと、私は、校正刷りを前にして、頭を抱えた。8/7

ショウを終え、疲れきったヨージヤマモトが、黒づくめの衣装で出てきたので、私が挨拶しようと待っていたのだが、いつの間にか彼の姿は、魔法使いの老婆のように、消え去ってしまった。8/8

私らに襲いかかるゾンビには、獰猛なライオンがアシストしているので、私らは、まず獰猛なライオンを斃してから、ゾンビをやっつける計画を立てた。8/9

太平洋で、工作船ファシスト号が沈没した時に、はなった号砲ひとつ。8/10

◎◎事件については、警察は、頭から首を突っ込む私の姿勢を、高く評価してくれた。8/11

隣国の王子が呉れたものは、夏のお菓子ではなく新曲の楽譜だったのだが、簡単なメロディだけだったので、私たちは、演奏するのにえらく苦労した。8/12

消防署への通報は、○×△という奇妙なキーワードしか送られてこなかったので、消火活動が遅れに遅れて、とうとう館は全焼してしまった。8/12

第2次ロケット打ち上げ計画の対象は、火星だったので、地球に嫌気がさしていた私は、イの一番に手を挙げて、意気揚々と乗り込んだ。8/13

息子が乗った飛行機は、台風10号の渦巻の遥か上空を、悠々と飛翔して、姿を消した。8/14

おなじ業種でライバル同士の両社は、今期も激しい売上競争を繰り広げたが、結局年度末には、ほぼ同じ成績で終わった。8/15

今夜は、長野県史上最大最高の花火大会で、なんとこれから3日3晩にわたって短距離ミサイルを打ちあげるというので、世界中のメディアが詰めかけているようだ。8/16

追われ追われて、2人のお尋ね者は、岩山のタコツボ状の穴に飛び込んだが、生憎ちょうど頭だけが飛び出していたので、追跡者の草刈り機で、スパリと刈り取られてしまった。8/17

その指導者は、「53分後に終着駅に来い。俺はそこで待っている」と言い残して、列車に飛び乗った。8/19

3千人の日本女性軍は、8千人の米国女性軍と熾烈な戦闘を繰り広げた挙句に、かろうじて勝利を収めたそうだ。8/20

射撃場の向こう側には、標的としてビール瓶と書物が入り混じってぶら下げてあった。どっちを狙う?と聞かれたので「ビールを」というて撃ち始めたが、そのうち書物にも弾が当たりだしたので、私はライフル銃を見境なしにぶっぱなし続けた。8/21

おっらちは中年のケイカンだが、ケイカン食堂で定食券を持ったまま隣に並んでいる若いフケイが気になって気になって、どうしてもキスしたくなって、ついキスしたところが、案の定大騒ぎになって、これがほんとのケイサツザタだと思った次第。822

国王となった弟は、長年の宿敵であった兄を、絶海の弧島へ永久追放したが、じつは兄も、それを、他ならぬ弟のために望んでいたことを、弟は死ぬまで知らなかった。8/23

社食が終わったために、ランチをとれなかった社員のために、名ばかり社長である私は、ここぞとばかり、隣の会社の社食から、大量のカレーライスを持ちこんで食べさせたので、中村七之助似の社員は、泣いて喜んだ。8/24

アーノルドパーマーという傘のマークのポロシャツが、爆発的に売れたので、その年のボーナスをもらったアートディレクターのムラクモ氏は、給料袋から取り出した紙幣を机の上に立てて、「ほらほら見て御覧、ボーナスが立ってるよ」と、私ら新人社員に自慢した。8/25

米大リーグ選抜チームを9回まで3-1でリードしていたのだが、案の定我われ日本選抜チームは、ガダルカナルの決戦の時のように平常心を失って、一挙5点を奪われて沈没してしまった。8/26

大金持ちの若旦那で、若い燕であるおらっちは、惚れた情人が見境なしに着物を買い漁るので、だんだん懐具合が心配になって来た。8/28

参戦か非戦かの最終判定を委ねられた超有名な反戦派の町内会長が、日ごろの政見と打って変わって、参戦の断を下したので、おらっちはとても驚いた。8/30

 

 

 

家族の肖像~親子の対話 その42

 

佐々木 眞

 
 

 

去るって、なに?いなくなること?
そうだよ。

駅構内は?
駅の中よ。きっぷ買って入るとこよ。

お父さん、保土ヶ谷、保土ヶ谷区でしょう?
そうだよ。

お母さん、ゼンジさんねえ、近鉄丹波橋でお仕事してる?
そうよ。

お父さん、ご無沙汰って、なに?
お久し振りですね、のことだよ。

お母さん、ジョウトってなに?
譲り渡すことよ。
そうよ、そうよ、ジョウト、ジョウト。

テレビで新木場って言ったよ。ぼく今度、新木場行きますよ。
そう、いつ行くの?
わかりませんお。

お母さん、くつろぐって、なに?
ゆっくりすることよ。

お父さん、ロープウエイ、止まってますよ。
どこのロープウエイ?
大涌谷の。
ああ、箱根のね。

愛子さん、平成14年に亡くなったよ。
平成14年って、西暦なんねん?
2002年だお。
コウ君に聞くと、なんでもすぐわかるから便利でいいわ。

お父さん、それからの英語は?
アンドだよ。
それから、それから。

コウ君、この葉書、出してきてくれる?
いいですよ。
車に気をつけてね!
わかりましたお。

お母さん、居酒屋ってなに?
お酒を飲むところよ。

ご先祖さまって、なに?
おじいちゃんとかおばちゃんとかよ。

ホソカワさん、社長だったでしょう?
そうだったねえ。

お父さん、やりにくいって、なに?
それは、やりにくいことだよ。コウ君分かるでしょ?
分かりますお。

お父さん、左足の英語は?
レフト・フットだよ。
ひだりあし、ひだりあし。

お父さん、完成ってつくることでしょ?
そうだよ。でもなかなか作れないんだよね。

お母さん、予感って、なに?
そういう気がすることよ。

お母さん、感じるって、なに?
思うことよ。

座布団、綿でしょ?
そうだね。

お母さん、申すと甲、違うでしょう?
違うね。

お母さん、申し込むって、なに?
お願いします、のことよ。

結構、いいことでしょ?
そうだね。

お父さん、難しいの英語は?
ディフィカルトだよ。
デエフィカルト?
ディだよ。ディフィカルト。
デエフィカルト、デエフィカルト。

明日、西友行きます、お母さん。
分かりました。

離山好きですお。
離山って?
大船の。
ああ、ウダさんちのあるとこね。

ぼく、オオツカ先生好きだお。
そう。良かったね。

絶対離れちゃだめだお。

ぼく、ジュンサイ好きですお。
そう。
ジュンサイ、ハスに似ているよ。
そうね。

ミエコさーん、ぼく、さいたま市すきですお。
そう、お母さんも好きですよ。今度一緒に行きましょう。
いやですお。サイタマシ、サイタマシ。

お母さん、ぼく心配ないですよ。
何が?
マスイですお。
マスイ、できそうですか?
できそうですお。

お母さん、下らないってなに?
つまらないことよ。

遅れてるって、なに?
遅れてるってことよ。

だからって、なに?
それだから、よ。

コウ君、きょう夕飯なににしようかな?
コンスープがいいですお。コンスープにしてね。
分かりました。

お母さん、いかんにたえないってなに?
残念、残念ということよ。

お母さん、孤独ってなに?
ひとりのこと。耕君、孤独ですか?
孤独じゃないよ。

ワタナベさん、逗子に引っ越したの?
そうよ。

お父さん、スーパーワイドドア、凄いですよ。
そうなんだ。

お父さん、ケイタイ無くしました。
どこで?
ふきのとう舎の2階で。
あったの?
無かったお。

「若し」は若いっていう字でしょ?
そうだね。

お母さん、抜群って、なに?
ほんとにすごいことよ。

お父さん、ぼく地下鉄す好きですお。ブルーライン、ブルーライン。
ブルーラインてなに?
横浜の地下鉄ですお。坂東橋、坂東橋。

お母さん、御無沙汰って、なに?
長いことお目にかかっていませんね、よ。

 

 

 

鎌倉三文オペラ<全4幕>

音楽の慰め 第34回

 

佐々木 眞

 
 

序幕

 
亡年亡日
昔ひとりのあきんどが、諸国一見の旅をしながら、屑払いの仕事で僅かに口を糊していました。

わいらあ、しょこくいちげんの屑はらい
クズイイイ、くずいい、おたくのどこかに、屑はないかいなあ
いままでみんなが捨てていたあんなもの、こんなもの、みーんなまとめて超々高値で引き取りまっせ

いくらで引き取るかって?
例えば、初代のリカチャン人形→、5万円以上
ビックリマンシール「スーパーゼウス」、10万円以上
壊れたオーディオ機器、8万円
昔使っていたバイクのヘルメット、1万円
状態によって金額は前後するけど、このように意外な品物に意外な金額がつくことが、ほんまにしょっちゅうありまっせ

んで、おたくにこんなもん、あらしまへんかいな

毛皮のコート、スーツ、洋服全般、ジーパン、デジタルモンスター、ブランドバッグ、ブランド洋服、参考書、鉄道チケット、ゴルフ用品、ウクレレ、貴金属、使い古したアクセサリー、片方のピアス、石の取れた指輪、イミテーションアクセサリー、ネクタイピン、カフス、ピンバッチ、エアコン、車のバッテリー、シンセサイザー、こけし人形、贈答品のお皿類、亀の剥製、火鉢、革製品、自転車、車のパーツ、電子ドラム、ウオシュレット、スポーツ用品、お酒、ワイン、ブランデイ、ウイスキー、芝刈り機、圧力鍋、包丁、ミキサー、ギター、釣り竿、ルアー、キャンプ用品、筋肉マン消しゴム、レゴ、ファミコン、プレステ、ネオジオ、pcエンジン、ゲームソフト、古いキューピー人形、美容器具、健康器具、TOMY、市松人形、キャラクターカード類、切手、収入印紙、コイン類、レコードプレーヤー、オープンリールデッキ、望遠鏡、三味線ばち、ハッピーセットの景品、映画の半券、期限切れの仕立券、トランシーバー、カラオケセット、昔の携帯電話、電子ピアノ、ブランデーの空き箱、炊飯器、サーフボート、リモコン、カタログ、取り扱い説明書、ポイントカード、懸賞応募シール、芸能人記載の新聞紙、象牙、サックス、パイプタバコ、シルバニアファミリー、リカちゃん人形、ペコちゃん人形、マルちゃん人形、エースコック人形、壊れたエレキギター、古いバイオリン、フィギュア、ヒーローものオモチャ、使えなくなったカメラ、骨董品、鉄器、鉄瓶、茶器、銀盃、香道具、日本刀、学生制服、様々な業種の制服、天然流木、古びた漫画、チョロQ、ミニカー、アンプ、昔のapple製品、ビックリマンシール、ギザ10、MDプレーヤー、ポケモンカード、テレフォンカード、フロッピーディスク、ウオークマン、壊れたカセットレコーダー、昔のカセットテープ、ブランデーの空ビン、南京虫(婦人用時計)、古いアンプ、昔のベータテープ、工具、壊れたパソコン、鉄製のミシン、壊れた時計、使い古しの化粧品、香水、ブランド品の空箱、F1ポスター、欠品プラモデル、のこぎりの刃

などなど、なんでも高値で引き取りまっせ

 

第2幕 片方のピアス

 
亡年亡日
昔沖縄で結婚式を挙げた時に、白い砂浜に片方の青いピアスを忘れてしまった八島洋子ちゃんは、小町通りを左に折れた鏑木清方記念美術館の前で、赤瀬川原平氏と連れだって歩いていたこおろぎ嬢と出会った。

左の耳に青いピアスを付けた八島洋子ちゃんは、朝顔の柄の浴衣を着て、紅いぽっくりを履いたこおろぎ嬢めがけて、ぐんぐん近づいていく。

こおろぎ嬢の右の耳には、青いピアスが小町通りの夕陽にキラキラと輝いていた。

 

第3幕 期限切れの仕立券

 
亡年亡日
若い母親たちから、憲法9条についての講演を頼まれた劇作家の井上ひさし氏は、御成小学校の中にある木造校舎の一室で、レジュメを出そうとしてポケットの中をさぐっていた。

すると、昨夜書いた講演会のためのレジュメの代わりに、皺くちゃになった紙切れが出てきた。

それを広げて良く見ると、銀座三越の特選スーツの無料仕立券であったが、生憎ちょうど昨日で期限が切れている。

井上ひさし氏は、チエっと舌打ちすると、その仕立券を丸めて、部屋の片隅にあった屑籠にポーンと投げ入れた。

 

終幕 壊れた時計

 
亡年亡日
新橋の内幸町のNHKホールで大道具のアルバイトをしていた、当時慶應義塾大学商学部4年生の加藤幸吉君は、「歌のグランドショー」の裏方の仕事を夢中になってやっている間に、父の形見のオメガの銀時計を失くしてしまった。

加藤君は「歌のグランドショー」の空舞台の最前列で、「こんちくしょおおお! こんちくしょおおお!」と、何度も何度も悲痛な声で嘆き悲しんだが、いくら探しても、いくら叫んでも、時計はとうとう出てこなかった。

それから何十年も経ち、リタイアしてから鎌倉に住む加藤君は、市立中央図書館の帰りに、ニンニクもニラも入れない山本餃子の餃子をお昼に食べようと思いついた。
餃子の本場中国では、ニンニクもニラも入れないのである。

狭い山本餃子の横一列のカウンターには、幸い一人しか先客はいなかった。

やれうれしや、とグラグラと不安定なイスタンドに腰を下ろした加藤君は、いつものように餃子9個入りの「餃子定食中」を頼んでから、ふと隣の客を見ると、加藤君とほぼ同年代の後期高齢者が、次々に餃子を平らげている。

しばらくして加藤君は、その男の左腕に、古いオメガの銀時計が嵌っているのを認めた。
さっきから秒針はまったく動いていないので、きっと伊達時計だと思われるが、その時計は、昔むかし若き日の彼が、内幸町のNHKホールで失くしたオメガに、じつによく似ていた。

気がつくと加藤君は、すでに勘定をすませて店の外へ出ようとするその男の左腕を、ムンズと掴んでいた。

 

*この作品は、我が家に配達された「珍品新聞号外」の文章を、出張買取「トータル」の代表、坂根太郎さんのお許しを得て一部リライトして使用しました。

 

 

 

「夢は第2の人生である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」 第76回

 

佐々木 眞

 
 

 

私はシゲハラ印刷に頼んでAPフェアの5点セットPOPを作ってもらい、それを全国各地の百貨店の売り場に飾りつけると、日本の名城をデザインした扇子を額に鉢巻きで巻いて、カッポレカッポレを唄いながらそこらを練り歩いた。7/1

女の子の家庭教師をやっていると、必ずその子が涙する時がやってくると先輩がいうので、私は何年も待っているのだが、まだその時は来ない。7/2

いつも京に来ると道に迷ってしまうのだが、今日も山科の里山辺で、どっちが駅なのか分からなくなってしまった。道を聞いても言葉が通じないし、そのうち私は、私自身が何者であるのかすら、茫洋となってきた。こんなことは初めてだ。7/4

京都駅から下り電車に乗ったら、鳥取や島根方面に行くおばはんたちが大勢乗っている。聞けば彼女たちは、みな地元の町会議員で、党派は違うが、研修という名目で京で観光してきたそうだ。7/5

久しぶりに五反田のダーバンへ行ったら、ナベショウ氏につかまって、彼が海外で買い集めた玩具のミニトロッコの御託を耳にする羽目に陥っていたく消耗していたら、折り良くミズノ氏から、「ちょっと来いよ」という電話があったので、これ幸いと逃げ出した。7/6

私は中原中也の真似をして、詩集の初校を持って、あちこちで見せびらかしているうちに、1枚、また1枚とどこかへ消えてしまい、しまいには全部無くなってしまった。7/7

家の鍵とか車の鍵とか、探しても探しても、長い間見つからなかった紛失物が、次々に出てくるので、夢かと喜んだのだが、目覚めてみると、それは全部夢だったので、コンチクショウメと歯ぎしりしている私。7/8

東京に本社があるために、いつも東京ファーストで東日本地区のことしか頭になかった私は、時々大阪支店の連中から、苦情と警告を受ける羽目になった。7/9

ルックのオオムラさんが、芸大の教授になったというので、私はいったいどういう裏技を使って、そういう芸当ができたのかを知りたかったのだが、オオムラ氏は、それは企業秘密ですというて、どうしても教えてくれない。7/10

私は昨夜の夢を、ケイターメールにしたためておいたので、それからは安心して、朝まで眠ることができた。本当は、夢見た直後に蒲団の中で録音しておけばいいのだが、それでは家人を起こすことになるので、要注意だ。7/12

アカプルコの海岸のカフェバーで、日向ぼっこをしていたら、店の女の子が、ここらへんは殺し屋の殺し屋がうじゃうじゃいるから、中に入っていたほうがいい、という。でも、どうしておらっちが殺し屋と分かったんだろう。もしかして彼女も殺し屋?7/13

宿命のライバルである我々は、アメフトの試合の途中で大乱闘となり、お互いに殴る蹴るの乱暴狼藉を繰り返しているうちに、多数の負傷者どころか、死者まで出てきたのだが、調停役のレフリーが、とっくの昔に逃亡していたので、誰も止める者がない。7/14

飛行機の前でマゴマゴしていると、衝突しそうになったので、どうも縁起が悪いな、と思いつつ、最前列に乗り込むと、ちょうど真向かいに停止中の飛行機の窓から、私を狙っているライフルが見えたので、すぐにカウンターに戻って、搭乗をキャンセルした。7/15

◎◎市の○内の範囲では、うんとん家が惹き起した暴動に巻き込まれているという情報が、テレビの速報で流れた。7/16

どういう風の吹きまわしか、馬鹿殿の不興を買ってしまったので、なんとかして元通りに修復したいと思うのだが、なんせ相手が相手なので、どうすればいいのか、妙案を思い付けずにいる次第。7/17

世界最短詩の候補として、愛、愚、凡、穴、人、友、生、死、無、息、根、交、神などの漢字が浮かんだが、そういう既成の単語以外に、新造語や絵文字、混成語もあるのではないかと思い付いた。7/18

7月になって、朗報が飛び込んできた。私の芝居を、紀伊国屋ホールで上演するというのだが、ついては200万円寄越せというので、それはどういうことかと、文無しの私は、吃驚仰天だった。7/19

台所の床下収納庫の蓋を開けたら、底に巨大な魚の目玉が爛々と輝いていたので驚いた。この目の大きさからすると、地球上に棲息する魚ではなく、もしかすると、伝説上の大魚、鯤鵬ではないだろうか?7/20

内田百閒の「東京焼盡」から霊感を受けて、たった1晩で書き上げた私の「こうすれば10の天変地異から身を守ることができる」という本は、あっという間に、ベストセラーになってしまった。7/21

イデ君と素材メーカーとの打ち合わせに出張してきたのだが、バスを降りてから峠道を歩いても歩いても、目的地に着かない。そのうちイデ君が、道端でちょっと小用を足すから先に行ってくれというので、どんどん登っていったら、三差路に差し掛かり、イデ君もどこかへ消えてしまった。7/22

神宮球場のスタンドで、次の投球を打者がホームランすれば、私の歯痛が治るはずだ、と確信して待ったが、生憎三振に終わってしまったので、痛みは倍増するようだった。7/23

うみうし氏は、おもむろに懐の中から魚を取り出して机の上に並べ、若き兵士たちに食べさせてから、降り注ぐ弾雨をものともせずに戦場に飛び出し、まだ息のある若者を背負って、次々に塹壕の中に引きずりこむのだった。7/24

どういう風の吹きまわしだか、イケダノブオのアルファロメオの新車の助手席に乗ってしまった私は、シカゴ市警の全パトカーから追われる身となってしまった。7/25

誰かの詩集のなかに、1本の木の写真が挿入されていたのだが、それがあまりにも美しいので、書かれた詩のことなど、すっかり忘れ去ってしまった。7/26

戦況が思わしくないので、かつて戦場で一度も敗れたことのないスナフキン野郎を思い切って投入したのだが、敵軍の強襲に、たちまち撃退されてしまった。7/28

オオキさんチのアパートの近くで、誰かにどーんとぶつかられて、ばったり倒れてしまい、身動きできないでいると、またしても、そいつがのしかかってきたので、ひらりと身を交わして、避けたのよ。7/29

「世界大変」「世界大乱」「世界最凶」などの言葉が駆け巡って「万事快調」と覇を競い合うので、なかなか眠れなかった。7/30

これからの自動車業界を展望するS氏の本が刊行されたが、特別付録の、S氏が所属するA社の社長と、そのライバルのB、C社の社長との対談が面白いというので、業界の話題になって、アマゾン売上のトップに躍り出た。7/31

 

 

 

家族の肖像~親子の対話その41

 

佐々木 眞

 
 

 

はてしないって、なに?
どんどんどんどんどんどん、よ。

チキショウって、いっちゃダメでしょう?
ダメだよ。

お母さん、お気に入りってなに?
すごく気にいっていることよ。

とぐは、お米でしょ?
そうだね。

アザミにトゲあるよね?
あるね。
トゲ、痛いよね。
痛いね。

お母さん、従うって、なに?
いうことを、きくことよ。

お母さん、こんど平成なくなるの?
そうよ、5月から令和になるのよ。
「さよなら平成」、ぼく、いいましたよ。

ぼく「おしん」面白かったよ。
そう。良かったね。
また見ますよ。
見てね。

110番て、なに?
警察の電話番号よ。

お母さん、こんど令和でしょ?
そうよ。
ぼく、令和、好きですお。
そう。
レイワ、レイワ、レイワ。

お父さん、草むしりしないと、ダメでしょう?
そうだね。草ぼうぼうになっちゃうからね。
草むしり、草むしり。ネ、ネ。

お父さん、家族の英語は?
ファミリーだよ。
カゾク、カゾク、カゾク。

お母さん、しりとりしよ。むさしこすぎ。
ぎ、ぎ、ぎ、ぎぼし。

お父さん、勝手なこといっちゃだめでしょう?
そうだね。

お母さん、ぼくはマツダ先生好きだよ。
お母さんも。

お父さん、ゴロゴロは雷でしょ?
そうだね。
ゴロゴロゴロゴロ。

永遠なれ!って、なに?
いつまでも、よ。

お母さん、蓮は水を張って、でしょ?
そうね、水盤にお水を入れるのよ。

大半て、なに?
ほとんど、のことよ。

フホウは、亡くなったときでしょ?
そうよ。
ナカノ君、亡くなった?
そうよ。
フホウ、フホウ、フホウ。

お父さん、気絶するって、なに?
気を失うことだよ。コウ君、気絶したことあるの?
ありませんよ。キゼツ、キゼツ、キゼツ。

笑いごとじゃない、って言われたよ。
誰に?
鎌養の先生に。

ゴキゴキって、なに?
コウ君、ゴキゴキすることないの?
ないよ

一晩中って、なに?
夜の間ずううっと。

お母さん、担うって、なに?
それをおんぶすることよ。

お母さん、ぼく明日もセイユーへ行きますよ。
はい、分かりました。

綾瀬は長後からバスでしょ?
そうなの?
そうだお。

ぼく「ブタブタ君のお買いもの」好きですお。
そう。おかあさんも。

マリちゃん「任侠ヘルパー」見た?
見たでしょう。

受け止めるって、なに?
そのまま認めることよ。
蓮佛さん、「受け止めてね」っていったお。
そうだね。

蓮佛さん、なんで「よろしくお願いします」っていったの?
お母さんのことを頼んだのよ。
ぼく、蓮佛さんの声、好きだよ。
お母さんもよ。

お父さん、カミキリュウノスケ、「いだてん」でどういう役をやってるの?
分かりません。お母さんに聞いたら?
お母さん、カミキリュウノスケ、「いだてん」でどういう役をやってるの?
落語家よ。
「いだてん」、「せごどん」の次だよね?
そうよ。

お母さん、やりにくいって、なに?
やるのがむずかしいことよ。

お母さん、事故防止って、なに?
事故が起こらないようにすることよ。

お父さん、「気持ち悪い」の英語は?
I feel sickかな。コウ君、気持ち悪いの?
悪くないお。

「わたし、オカジマ先生ですよ。」
こんにちは、オカジマ先生
ぼく、オカジマ先生すきですお。

お父さん、椅子の英語は?
チエアだよ。

お父さん、少ないの英語は?
リトルとかスモールとかフユウとかかな。

お母さん、いわゆるって、なに?
よくいわれている、よ。

お父さん、カワシマさん、六地蔵に住んでたの?
そうだよ。

毎度、いつも、でしょ?
そうよ。

お母さん、おもしろいって、なに?
そうですねえ、コウ君、おもしろいって、なんですか?
おもしろい、ですよ。
コウ君、人生おもしろいですか?
おもしろいですお。

お父さん、デリケートって、なに?
超微妙なことだよ。

お母さん、ぼく令和好きですお。
そう。お母さんは、昭和が好きでしたよ。
レイワ、レイワ、レイワ。

リョウちゃんがねえ、「コウ君が嫌がってるよ」と言ってくれたお。
そうなんだ。よかったね。

サッチャン、ずうーと笑ってたんですお。
そうなの。

お母さん、アイラブユーって、愛してますのこと?
そうよ。
アイラブユー、アイラブユー、アイラブユー。

症状って、なに?
お腹がいたいとか、体の状態よ。

 

 

 

西歴2019年葉月の歌

 

佐々木 眞

 
 

 
 

その1 西瓜の味

 

海水浴から帰ってきました。

毎日のように少し昼寝をして、午後から1時間だけ海水浴に行くのです。
そして帰りには、逗子池田通りのウララ果物屋さんで大きな三浦西瓜を買ってきて、食後にいただきます。

西瓜ほど美味しい果物は、ありません。

大きな三浦西瓜をどんどん食べていると、家の外ではニイニイ、アブラ、ミンミン、それに時折は関西から北上してきたクマゼミもやってきて、小さな庭のまわりでいつまでも恋の混声合唱を繰り広げています。

エアコンをつけなくても、涼しい風が陋屋に吹きわたり、東の窓一面に2階まで這いあがった天青と沖縄雀瓜が、強い日差しを遮ってくれます。

世間では悪代官がテロリストに暗殺されたとか、地震が明日やってくるとか、そのうちに世界が終焉するとか、ラチもなくラアラアと騒いでいるようですが、いったいそれがなんだというのでしょうか?

われらは、生きる間は生きており、死ぬるときには、みな死ぬのです。

後で振り返ったときに、恐らくはあのときがいちばんだったと思えるような人生の小さな夏休み、平穏無事で格別なことが何ひとつ起こらない、このささやかな仕合わせを、朝な夕なに、じっとかみしめているところです。

 

空白空白西瓜ほどおいしい果物はない いずれは君にも分かるでしょう 蝶人

 
 

その2 鈴木志郎康著「攻勢の姿勢1958―1971」を読みて歌える

 

600頁もある部厚い詩集のド真ん中を開くと、
いきなり飛び出したのは、プアプアちゃん!

腰周りには、番町皿屋敷のお皿サラサラ
何枚何十枚の処女膜ぶら下げ、
「いつでも誰でもいらっしゃい」と、
いといやらしき、危なの腰付き。

きゃああ、純粋桃色小陰唇のプアプアちゃんだあ!

はじめに言葉ありき。
生の混濁とドン詰まりを、性の最先端で一点突破せんと喘ぐ詩人の口先に、
突如京の空也上人、南無阿弥陀仏の5連発のごとく、
天孫降臨城のごとく降り立ったのは、突然変異の守護神ジャンヌ・ダルク、
いやさ、売春処女にして聖処女のプアプアちゃん!

「プアプアちゃん、お元気ですか? あなたの生みの親の、お茶の水博士のような鈴木志郎康さんは、お元気ですか?」

「あーた、そんなことより、今夜のニコライ堂のイベントには行かないの? 深夜同盟暴力員会主催の『聖ニコライ堂で処女の生血を啜ろうぜい!』がそろそろ始まる頃よ」

「えっ、そんな素敵なことして、日韓談判や学費学館やセレブvs貧民の階級闘争はどうなるの?」

「あーた、絶対矛盾の自己同一、知らないの? 一点突破、全面展開、知らないの。
まずは父親と母親を殺して家族帝国主義を粉砕し、父母未生以前の自己を取り戻すのよ。そのためには、みんなで処女の生き血を一升枡で汲み交わさなくちゃ」

「フマやヨシダも来るのかなぁ?」

「そんな一部のはねっかえりだけでなく、全都の学友諸君が、挙って立ち上がる記念碑的な夜なのよ。乾坤一擲、エラン・ヴィタールの爆発なのよ!」

黄金の乳房をゆらゆら揺らすプアプアちゃんの話では、純粋桃色小陰唇の処女プアプアちゃんに加えて、虎の子廃処女キイ子ちゃん、もとい路上血まみれタイガー処女キイ子ちゃん、謎の洞窟処女、私小説的老処女キキ、純粋処女魂グングンちゃんも、全員腕を組み足を踏みならしてラッタラッタラアと参加するという。

そして全員が横浜港の大桟橋からバイカル号に乗り組み、
全世界を一挙に獲得する、革命的なツアーに出るという。
全世界を横領しているツアーリどもを、ことごとく暗殺するという。

お尻ぺんぺん、プアプアちゃん。
なんという、あらましき、かつあほらしき旅立ちであることか!

プアプアちゃんは、家族帝国主義と父母未生以前の生と性への煩悶を一気に立ち截り、絶対矛盾を自己同一化することに成功したかにみえたが、それは一瞬の夢、うたかたの幻。過酷で残酷な国際政治の荒波に翻弄されて、ふたたびみたび、混沌と混迷の闇路を流離う運命にあった。

ムツグーゥーッ、
生の極まるところ、燃え盛る性の炎。
今まさに、薪に油は注がれ、
ムツグーゥーッ、
悶える十字架上の聖女、プアプア・ダルクの断末魔の叫びを聞け!

 

 

 

「夢は第2の人生である」あるいは「夢は五臓六腑の疲れである」 第75回

西暦2019年皐月・水無月蝶人酔生夢死幾百夜

 

佐々木 眞

 
 

 

町内会長が、駅前広場の真ん中に座りこんで、「オラッチは町内会費をちょろまかしてモンブランの万年筆をたった70円で手に入れた」と自慢していたら、たまたまオート三輪で通りかかった男がそれって犯罪じゃんというてエンジンを吹かした。5/1

A社の思い出撮影機のお陰で、私の父の映像は、かつてない鮮明さと、深みを、併せ持つようになった。5/1

鍾乳洞のように真っ白な巨大なU字溝の下を、高速鉄道が走っている。少女とムク犬がU字溝をぴょんと飛び越して、向こう側に行ったので、私も真似をしようとしたが、怖くてできないので、U字溝の内部を歩いて、昇り降りしながら彼らの跡を追った。5/2

そこは70年代の夏の以前どこかで見たような街だったが、どこかから性風が吹いてくる。ミモザの花の香りだ。これが吹くと、男も女もセックスをしたくて堪らなくなるのだ。とある店先に、さっきの少女が座っているが、この店の主人に抱かれる順番を待っているようだ。

目の前を、やたらと奇麗で淫美な女たちが、行き来している。どれでもいいからいい女を早く捕まえてモノにしよう、と焦っているのだが、選択を誤るとヤバイ結果になるに違いないと思うと、なかなか手が出せず、ますます焦り狂っているわたし。5/2

おらっちはロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで「テンペスト」を演じているんだが、途中で腹ペこになってしまい死にそうだが、ここで止めるとみんなから怒られそうなので、じっと我慢してる。5/3

L社では、年に一度軽井沢でお客様を招いて、特別謝恩会を開催している。今年は売れっこふぁっちょんアイコンのヨシダヨシコ嬢が登壇しておしゃれセミナーを開始したが、客層とかけ離れた自慢話ばかりだったので、30分もたたないうちに誰もいなくなった。5/4

朝夷奈峠のてっペんまで登ったら、オオシマさんがいたので、アクアの新車には自動停止装置がついているのかどうか、を尋ねたのだが、彼がいるのは、なんせ奥深いほら穴の中なので、声が反響して、なにをいうているのか、てんで分からなかった。5/4

その施設が丸焼けになってしまったので、焼跡を見に行ったのだが、その入口にまだ辛うじて残されている「千客万来」の歓迎の辞が、哀しかった。5/5

映画を鑑賞しながら世界1周するクルーズツアーの最後の晩餐会で、出てきた豪勢な料理をおいしく頂戴していたら、サイトウさんが鍵を呉れた。きっとこれで荷物をロッカーに入れてからレジで精算するのだろう、と思いながら、なおも喰っていたら、誰もいなくなってしまった。5/6

真夜中に物音がするので階段を降りて明かりをつけて居間をみると、チュウチュウネズミがとうとう罠にかかってもがいていたが、10連休の間、林檎を食べたり、ドアを齧ったり、糞をまき散らしたり、悪さのし放題だったので、誰からも同情されなかった。5/7

半永久的に戦前のはずだったのに、新年号に切り替わってから突如戦中になってしまって、ほとんどの若者が徴兵されてしまったが、私は透明人間に変身したので、何枚赤紙が舞い込んできても、平気の平左で銀座通りを闊歩できるのだった。5/8

官憲の弾圧が、だんだん酷くなっていた。まだ召集されない大学生たちは、喫茶店や定食屋にたむろしていたが、時々やけくそになって素っ裸になり、裏通りで、「猫じゃ猫じゃ」踊りをおどっていた。5/8

このほど○×党に納品した×○社製作のCMは、かなりシュールなテイストに仕上がっているが、担当者の凸凹部長によれば、それは編集の隠し味として、随所に2人の人妻の嬌声を入れ込んだからだという。5/9

東京駅からスカ線に乗ろうと思ったが、気が変わって久し振りに市電に乗ってみたら、東京は全面的に昭和の風景だった。運転手が気まぐれな奴で駅でもないところで勝手に止めて、客と一緒に楽しそうに酒を飲んでいる。5/10

そうだ、ついでに昨日無くしたカバンを探そうと思って、運転手に頼んで展示会場駅まで行ってもらったが、あんなに数多くのバイヤーたちで賑わっていたのに、驚いたことには建物の影も形もない。5/11

戦争になったので、急に物不足になり、八百屋に行っても私の好きなミカンやイチゴもない。なんとかしてくれえやと怒鳴っていたら奥の方から親父が10個500円の格安で林檎を出してくれた。5/12

私の授業は、学生が少ないので、いつも1つの丸テーブルに座ってゼミを始める。今日は全部で10名だったので、私は「さあ今日は2人づつ5つのグループに分けるから2人一組で他のチームと闘論してくれ給え」というて右手で4回手刀を切った。5/13

困っているその子に向かって、「将来はどんな仕事に就きたいの?」と親切な振りをして訊ねてみるのだが、いかなる言葉も発しようとはしない。5/14

早く早くと急かされて駆けつけるとなんと昔別れた女の結婚式だった。相手の男も私よりも遥に男前で堂々としており、羽振りもよさそうで、私はなんとなく引け目を感じてうなだれていた。5/15

ホテルのバーで人と会う約束があったので、先に来てジュースを飲んでいたら、周りの人たちが次次に斃れていく。後で聞いたらどうやら全部のアルコール類に毒が入れられていたらしい。医師の禁酒命令を守っていてほんとに良かった。5/16

その外国人の女を殺したのは私だが、そのことは誰も知らないと思っていたのに、ある朝彼女の家族と称する人たちが突然我が家に押し寄せてきたので、冷汗三斗のわたし。5/17

アジアの片隅でほっそりとした夜の女が近付いてきて、身をひさごうとしたので、どうしようかとひるんでいたら、その後にその女の夫と子供と思われる2人が物陰に潜んで事の成り行きを見つめていたので、驚いて逃げ出した。5/18

私が入っている刑務所ではどんどん人が増えるので、不審に思って観察していると、真夜中になるとこの国に押し寄せた世界各国からの難民が、三食昼寝付きの安住の地であるこの国立刑務所に潜り込むことが分かった。5/19

ビルの通路の向こう側の植木鉢の葉っぱに蝶の幼虫がくっついているのが分かったので、コウ君と一緒に駆け寄ったがいつまで経っても辿りつけない。善チャンも出てきて手伝ってくれたが見つからないので朝食をとることにしたが既に済ませているコウ君はどうしよう?5/20

絶海の孤島で絶世の美女と2人だけの生活をしているのだが、3日間にわたる壮絶な性生活を終えることなく私は絶命していた。5/21

ハ長調のドは分かるが、ト長調とかへ長調のド、まして変ロ短調のドがどこなのか、そしてそれらはピアノのどこを弾けばいいのか、がさっぱり分からなくなっていたので、パニック寸前のわたし。5/22

「大川周明の3つの遺言を聞かせようぞ!」という声が聞こえたので、外に飛び出すと、幸福の科学の大川隆法が街宣車に乗って叫んでいるのだった。5/23

犯罪に巻き込まれた私は、無実を証明するために、私が映っているビデオを証拠品として警察に提出したが、それは私が誰かに脅されて誰かの寝室に連れて行かれると、そこには近所の奥さんが横たわっているよという実に珍妙な代物だった。5/24

いつか夢見た夢をまた見ようとして特別ドレームフェアなる催しに出席しているのだが、会場に設置された即席簡易ベッドの中で何回トライしても、絶対におなじ夢を見ることはできず、途中から他の夢に変わってしまうのだった。5/25

将軍は私らにカレンダー付きの鍵を呉れたのだが、その鍵は1日に2回しか使えないので、私らは往生した。5/26

獅子舞になって子供の頭を1回がぶりと噛むと100円頂戴するという仕事で長年にわたって生き延びてきたのだが、少子高齢化の大波に呑みこまれてもはや二進も三進もいかなくなっていた。5/27

前回は2500回だった名人の連続太鼓叩きは、今回はなんと8500回という驚異的な数値に達し、わたしら弟子どもはただただ怖れ慄くしかなかった。5/28

その男は時代がバブリーになると謹厳実直に、バブル期が終わると途端に衆酒池肉林状態に突入するという特色を持っていた。5/29

若い女性モデルたちを石垣の上に横一列に並べて撮影しようとしているのだが、言うことを聞かないで勝手に動きながらおしゃべりしている彼女たちに頭にきているカメラマンの私。5/30

パン屋の私の前に、突然見知らぬ女が現われて、むかし学生時代に私との間に子をなしたが後に堕したというのひと違いではないかと驚いているが、梃子でも動こうとしないで、私が作ったアンパンをむしゃむしゃ食べている。5/31

大宴会で合計8皿のフルコースの御馳走が出されたので、夢中で食いまくったが、だんだんお腹が痛くなって来た。しかも最後の7皿目と8皿目しかそのメニューを覚えていない。豚に真珠とはこのことなり。勿体ない限りだ。6/1

マエダ女史の紹介でサンダース氏に会った私は、彼から懇切丁寧にフライドチキン事業経営のノウハウを伝授されて大感激した。6/2

疲れきっていたが一睡もできずにいた私の頭の中では、あの悪名高いハズキルーペのCMが朝まで流れ続いていた。6/4

土曜夜の試写会でゴダールの新作映画「スプラッシュ」をみていたら、「これから私はしろうやすの世界を立ち上げるんだ」とゴダールが呟いていたので、近くのカフェに入ってコーヒーを飲んでいたら、なんと鈴木志郎康氏がいたので、かくかくしかじかと報告したが、「あ、そうですか」というつれない返事だった。6/5

240円で出来立ての冷たい薬?を売っていたので、私はすぐさまそれを買った。6/6

妻が足利学校の校長になるという話を聞いて、私は耳を疑った。妻もどうしてそうゆう次第になったのかについてまったく知らないという。足利に移住して、就任の挨拶の原稿はたぶん私が書くことになるのだろうが。6/7

テレビ局で仕事をしているヤシマ嬢のシャツの上に「ネコテペス」という意味不明の西洋文字が刺繍されていたので、私はさりげなくその「ネコテペス」を触ってみた。6/8

巷の噂では、この食堂では蛇や猫や人間の肉まで惜しみなく味付けに投入しているので、ラーメンのみならず何を喰っても旨いという定評があったが、臆病な私にはあえて試してみる勇気はなかった。6/9

ついに宿敵と相まみえた日、私は腹を撃たれるのを避けるために左半身に構えながら、右手で握りしめた拳銃で、彼奴のどてっぱらに熱いダムダム弾を撃ち込んでやったのさ。6/10

今は江戸時代なのだが、その隠密は100メートル10秒フラットの記録保持者なので、藩主が参勤交代をするたびにその先導役として東海道を何度も往復して安全警護に貢献したので、ついに第3家老に出世したそうだ。6/11

病院長はその患者は政治的に特別に重要な人物なので、財前教授とその反対派の有力教授の2人が1日おきに完全かつ徹底的に看護するよう厳命を下した。6/12

2人の宿命の対決が始まった。2人とも抱いて殺して煮立った鍋に投げ入れた女をもう一度甦らせよと天主から命じられたので、懸命に祈りを捧げているところだ。6/13

水兵の私は軍艦に乗り込み、敵艦の外壁にとりついてガリガリ穴を開けようとしていたが、味方のコンパス銃は0.1ミリ口径、敵は0.3口径なので作業が捗らず、先に撃沈されてしまった。6/14

せっかく新床教授の授業に出ようと早くから下宿を出たのに道草を食って開始時間を5分過ぎてしまった。2人連れの学生にEW教室がどこにあるのか尋ねたら、「今日はもう諦めて、助手のフクダさんに来週から出るからよろしくと根回ししといたほうがいいですよ」と言われた。6/15

お上の不在を衝いて私は裏山のウサギ穴に潜り込んで、秘密の財宝を探し出そうと意気込んだが、穴があまりにも深すぎて帰り道を見失ってしまい、途方に暮れている。6/16

手や胸や腹が痒くて痒くて堪らないので、もう狂ったように目茶目茶に掻き捲っていると、突如得もいわれぬ快感がどこかから湧き起ってきて、これはいかなる生理現象に起因するのかと考え込んでしまう。6/17

私は新種のサルだったが、友人サル宅を訪ねて玄関口の靴脱ぎの置き石の断面を見ると、「令和はかなし」と刻んであったので、これは「令和は悲し」と読むべきか、はたまた「令和儚し」と読むべきかいずれとも決めかねてその場に立ち尽くしていた。6/18

「佐々木眞文学全集」のどの箇所に「世界最短詩の試み」が挿入されるのかを、いちいち検証していくので、眠るに眠れない夜だ。6/19

「2年間あんたをよその飛ばして悪かったけど、今月からまたうちの課の戻ってもらうから、すぐに来年度予算を案を作っといて」とタナカ課長は平然とのたまうのだった。6/20

息子にいい嫁を見つけるために、ゴッドマザーはどんなことでもした。朝から晩まで影のように息子に張りつき、息子の目となり手となり足となって、よさそうな女性を血眼で探しまくったのである。6/21

お父さんの仕事の都合で離れ離れになっている私たち。お父さんは田舎の実家に、私はお母さんと一緒に都会の一部屋で暮らしている。お父さんは「もうちょっとでみんな一緒に暮らせるようになるからな」、というて私を励ましてくれた。6/22

その男は、いやあ美味いなあ、ウマイ、旨いと言いながらその料理に舌鼓を打っていたが、良く見るとその口元は○というより△なので、小さな魚などはどんどんこぼれて逃げ去っていくのだった。6/23

半世紀ぶりに訪ねてみると、その下宿はいまなお京都の左京区にあった。私が2階の部屋に入ると2人の大学生がいたが、構わず押入れの中を開けると、その中には私がこの部屋の住人であった頃に買い集めた「世界文学全集全100巻」がそのまま出てきた。6/24

また新しい戦争が始まりそうなので、私はアシスタントの女性に命じて長さ10メートルの鋭く尖った竹竿をたくさん用意させた。いったん事があれば、これで雑兵集団を武装して敵に先制攻撃を仕掛けるのだ。6/26

ネーミングに関しては業界ナンバーワンの私は、完成まじかの高層ビルを見学しながら、その呼称を考えていたが、その間にも世界中の建設業者からネーミング依頼の電話が殺到するので、脳味噌が破裂寸前だった。6/25

まったく仕事がないので新企画をでっち上げて某出版社の重役に売り込んだら、幸い興味を持ってもらえた。その夜西麻布のバアで重役の意を受けた坂谷由夏似の編集長に会ったのだが、完全に化けの皮を剝がれてほうほうのていで逃げ出したわたし。6/27

生まれて初めてみたアフリカのセネガル映画があんまりおしゃれでシックで素晴らしかったので、会う人ごとに吹聴していると、ふぁっちょん評論家のフジオカさんという方が、「あらあなたご存じなかったの、セネガルは最近モード界でも注目されているのよ」と仰った。6/28

「今後のあらゆる創作基準はこのメートル法原器に準拠していきます。これは「2001年宇宙の旅」で原始猿が初めて他者を殺害し、宇宙に抛り投げた堅骨片の長さと形状と重量に匹敵します」と私が宣言すると、一同は諾諾諾!とうべなった。6/29

いつまで経っても大学を卒業できない私は、真夜中に突如その原因に思い当たった。毎年の新学期に履修科目を登録していないし、学校に行かないし、授業も試験も受けないから何年経っても卒業なんかできるわけがないのだ。6/30