イーロン・マスク、騒ぎ立つ

 

佐々木 眞

 
 

風が立つ、風が立つ
いざ生きめやもと、風が立つ
いざいざ生きよと、風が立つ

家が建つ、家が建つ
赤、青、白の家が建つ
あっという間に、家が建つ

八雲たつ、八雲たつ
八岐大蛇がそそり立つ
須佐之男命、奮い立つ

色めき立つ、色めき立つ
政権交代できるかと
他力本願、勇み立つ

腹が立つ、腹が立つ
毎日100万ドルを配るやつ
イーロン・マスク、騒ぎ立つ

面影に立つ、面影に立つ
亡き父母が、ぞぞ髪立つ
夢枕獏、夢枕に立つ

弁が立つ、弁が立つ
口から先に生まれたる
論破小僧、浮かれ立つ

上に立つ、上に立つ
腕は全然立たないが
悪運強く、白羽の矢が立つ

倉が立つ、倉が立つ
黄金虫が、蔵立てた
息子に水飴舐めさせた

角が立つ、角が立つ
目立ちすぎると、文句言う
消息絶っても、ぶつくさ、ぶつくさ

俵屋宗達、筆が立つ
フリーマンは、役に立つ
乱麻を断った、逆転サヨナラ満塁ホーマー

門松が立つ、門松が立つ
日本全国、正月だあ
今年はめでたい、甲辰(きのえたつ)

 

 

 

三十年寝太郎

 

佐々木 眞

 
 

おらっち、三年寝太郎、改め三十年寝太郎。
ついこないだまで暑くて、暑くて堪らなかったのに、いまはもう寒くて、寒くて堪らない。
人間なんて、おらっちなんて、勝手なものだ。

「そうだ、ペルルに行こう!」
と龍宝部長が叫ぶので、みんな仕方なく西武新宿線の鷺宮にある井口君がやっている小さなバアへ行った。

アルコールなんぞ一滴も飲めないおらっちは、なぜだか寒くて、寒くて仕方ないので、井口君の奥さんが出してくれた2枚の布団を上からかけて、まるでヤドカリみたくソファーに横たわっていると、

「おらおら寝太郎、そんなとこでなに寝てる。今度は銀座の太牙へ行くぞ。荷風散人がやって来る頃だ」と、今や酒呑童子になっちまった龍宝部長が、ジャック・ダニエルをラップ飲みしながら叫ぶのだ。

荷風散人なら仕方がない。
もしかすると、30も年下の、花も恥じらう美人妾のお歌さんの、花のかんばせを拝めるかも知れん。

と思うと、可笑しなもので、おらっち、げんなり困憊した皆の衆の先頭に立ち、帝都タクシーを呼び止め、意気揚々と乗り込んだが、お目当ての太牙には、お歌嬢どころか散人の姿さえ欠片もなかった。

おらっち、しょうがないから、太牙の支配人から借りた2枚の布団を頭からかぶって、まるでヤドカリみたくソファーに寝そべっていると、そのまま3年どころか、30余年も眠りこけてしまったらしい。

んで、突出する陰茎が宝石箱を蹴飛ばしたようなある朝、いと爽やかに目を覚まし、あたりを注意深く見まわしてみると、今井専務も、龍宝部長も橋本&今中両次長も、前&若林両課長も、前田夫妻も、青木夫妻も、永原さんも、柿崎さんも、金原さんも、矢島さんも、

善太郎君も、安永さんも、酒井君も、毛塚君も、その他大勢のリー(ウー)マン諸君も、みんなみんな姿を消して、もちろんあの憎々しい金髪大統領も、軍事オタクの裏金党首さえも、全国各地の原発や米軍基地と共に、姿を消していたのよ。

 

 

 

「夢は第2の人世である」第107回

 

佐々木 眞

 
 

 

2024年9月

左の膝をハタと打つと、その夜にみた夢のあらましが、ありありと浮かび上がってくるのだった。9/1

成績優秀なタクちゃんを採用しようと、AB2つの会社がPVを作成した。前者は会社挙げてタクちゃんを熱望していることが整然と示されており、B社は女社長のタクちゃんへの熱愛が如実に示されたラブレターのようのもので甲乙つけにくかったので、持ち帰って再度検討することになった。9/2

だいぶ前に他界したタツミ君が、うちの近所に居酒屋を開店したというので、ちょっと覗いてみたら、懐かしい顔ぶれが思い思いに陣どっていたので、酒類はドクターストップのおらっちだったが、これもサービスだと思ってジャック・ダニエルのボトルキープを頼んでしまった。9/3

ふぁっちょんの深化とか退化とかは紙一重。例えば製作過程の1プロセスを無意識に飛ばしてしまうとそれは退化といわれるが、意識的に飛ばすと、逆に大いなる深化と評価され、時には「完成された未完成」と褒め称えられたりするのであるよ。9/4

また台風が来襲して集中豪雨だというので、エイヤっと畳をめくってみたら、床下を轟轟と泥水が流れていた。9/5

おらっちのインタビューでは、あの歴史的な敗戦日に昭和天皇の訳の分からぬ念仏を聞きながら性交していた男女は少なからず存在した模様であるが、かというて、彼ら彼女らが天皇制に反対だったのかといえば、そんなことはさらさらないようだった。9/6

アサヒナ会社のバーゲンで特別びっくり玉手箱を5千円で販売するというので、買おうとしたら、その値段は明日からで、今は8千円だというので諦めた。9/7

だんだん食欲がなくなってきたので、毎日水ばかり飲んでいるのだが、それでけっこう元気に暮らせるので、どれくらいもつか試してみようと思っているのよ。9/8 

モーレツに広い敷地を、モニターに映る範囲でシャッターを切り、フィルムに収めようと早朝から撮りまくっているのだが、夕方になっても、ほんの一部しか撮影できていないのだ。9/9

「我らが身近な宝物」という企画趣旨は、とても興味深いものがあったが、ドイツ中世の農民たちのお化けが紹介され、天井から巨大な足長人形が吊り降ろされてくると、はて、これはなんじゃらほい、という思いが湧き出してくるのだった。9/10

いたるところに地雷が埋められた坂道を、猛スピードで下り降りる黒いボデイスーツの美少女を、おらっちは、はらはらしながら見つめていた。9/11

敵に暗殺されたからというて、こちらが敵を殺すことはないし、敵を殺したからというて自死する必要もないと、おらっちは、そのとき考えた。9/12

そうか世の中のひとはなーーんもしないので、自分がなんかするほかないのじゃ、と、おらっちは、そのとき分かったのじゃった。9/13

敵の間者を捕まえて「お前を拷問するぞ」と脅したら、即秘密事項をべらべら喋り始めたのはいいが、こっちの間者も捕まって拷問されて秘密事項をべらべら喋っているというので、これはこまったことになったと、おらっちは思った。9/14

元の図像が徐々に姿かたちを変えて、現像されるまでのプロセスを、一目で把握できるような多重複層図像を、デゾルブと呼ぼうかと、さっきから考えている。9/15

久し振りに家族一同で楽しく夕餉をとっていたら、舞の海などの黒覆面の日本会議のファシスト連中が殴りこんできたので、カラシニコフ機関銃で皆殺しにしてやった。9/16

いつの間にかモザールが終わって、気がつけばバッハに似ているが、微妙に異なるハッハが奏されていた。9/17

私が愚かしい政治ごっこから足を洗って、西園寺公の真似をして公邸に引き籠ると、もはや誰も訪ねて来なくなったので、毎日のように床屋に通っている。9/18

ガザの住民がやってきて、空からはミサイルが降ってきて、陸地からは戦車が攻め込んできてどんどん人が殺されています。助けてくださいと訴えられたが、おらっちは「自分はイスラエル担当ではないので」というて逃げ出したのよ。9/19

親友がこの界隈の秩序を破るのが心配で心配で、それがおらっちの気弱い神経をずたずたに切り苛んでいる、そんな剣呑な状況がいつまでも続く。9/20

朝から温泉に入っていたら、色っぽい熟女がしきりに余を誘うので、仕方なく奥の奥まで突っ込んでしまったが、結局1ミリも精が出なかったようなので、挨拶もそこそこに朝食をたべにいったのよ。9/21

誰もみていない「徹子の部屋」に、なんたら女王という女性が出ていたので、こいつはエリザベス女王の隠し子かSⅯの女王様だと思ったのだが、そのどちらかはついに分からなかった。9/22

No1になるのが嫌でその地を一人脱出したおらっちだったが、5年ぶりに帰国してみたら、世界でも指折りのキョウフの独裁政治が敷かれていた。9/23

2029年9月9日の午前9時に、おらっちは、綾部大橋の真ん中から、由良川の激流に飛び込んだのよ。9/24

「主体の行動が不在の時空は虚妄である」と誰かが託宣しておるのが、枕の下から聞こえる。9/25

港川人と蝦夷が南北から攻め上がってくるというので、わいらあ、名古屋城で、じっと待ち受けておる。9/26

「お若いの、娘さんにちょっかい出すのはやめなはれ」と自分も若者のつもりで声をかけたのが運の尽き。おらっちがガンベルトから拳銃を抜き出す、その時早く、かの時遅く、彼奴の2丁拳銃から飛び出した弾丸は、おらっちの心臓を2か所も射抜いていた。9/27

珠玉を転がすようなコロラトゥーラの美声が、天空の遥か彼方まで駆け上ったかと思うと、猛烈な勢いで地表すれすれにまで急降下してきたので、おらっち、正直頭の中がクラクラしちまったのよ。9/28

集英社のパーティでヤマモトダイスケに挨拶してから朝日のアルガさんと来週の大阪行きの話をしていたら、毎日のホリウチさんと日経のコスギさんが割り込んできたので困っていたら、講談社のトミタさんと小学館のウメザワさんが、おらっちをうまく連れ出してくれた。9/29

この会社では、毎日ランチとウエアが無料で支給されたが、出張の際にはウエアが届けられないので、あらかじめ申し出ておかねばならんかった。9/30

 

2024年10月

「この勝負ドレスはなかなかいいね」「勝負ドレスじゃなくて決戦必勝ドレスと呼んでるんですけど」「ドレスで戦争に勝つんですか?」「勝てるかも」10/1

どんな微細な物音でも爆発する、最新型地雷が至る所に埋められている国境地帯を、俺たちは、恐る恐る匍匐前進していた。10/2

2アウト2、3塁でシングルヒットで2点取れるか、それが問題だと、おらっちは一晩中考えていたずら。10/3

そのスーパーのレジには、係員の両側に清算ラインが流れているので、客はどこが空いているのかを見定めながら、並んでいるのだった。10/4

公園の入り口の傍にある、洒落た古本屋で、横文字ばかりの洋書を眺めていると、おらっちは、自分が永井荷風の後継者になったような気が、ちょっとだけ、してくるのだった。10/5

知らない間に、鉄線で足や指がちょん切られるのを恐れるあまり、本日の「五山送り火」には出かけなかった。10/6

昨日頂戴した饅頭は、毒を恐れて捨ててしまったのですが、本日は思い切って無毒を信じて食べてみることにしました。10/7

特攻隊員の遺書の中身は、「天皇陛下万歳」とか「父上、母上、本日まで有難う御座いました」というようなものが多いのだが、たった一人だけ「君の瞳は100万ボルト」と殴り書きしたものがあった。これぞ戦後詩の誕生である。10/8

長兄と次兄が不和なので、3男のおらっちは、彼らの仲を取り持とうと、亡父の故里の古城で一大融和パーティを開催したのだが、2人共来てくれなかった。10/9

長い撮影が終わって、スタジオから出てきた彼女に、「お疲れさん、送っていこうか」と何気なく声を掛けたら、驚いたことに、彼女が軽く頷いたので、また驚いたのよ。10/10

荷風散人のわたくしは、真夜中に偏奇館に忍び込んだ美貌の女を、わが両膝に乗せ、袷の下を這わせた指先で、その乳首を優しく撫ぜると、宵闇の書斎に、押し殺したような呻き声が響き渡るのだった。10/11

ようやく衣服なども、人間の本性に適合したアイテムが求められるようになったので、丹波の山奥から、山猿さながらに都に上ったおらっちは、法然上人を尋ねて、その極意を学んだのよ。10/12

超高層ビルのエレベーターが突然落下し始めたので、慌てて夜警に電話したが、なかなか出ない。きっとビルの夜回りに出ているのだろうが、その間にもエレベーターは激しく落下していくので、おらっちは困り果てた。10/13

駅前広場で、三婆が呆然と口をあけているので、何事かと視線の先を辿ると、なんちゃら大臣のズボンの下の真っ赤なパンツが、透けて見えているのだった。10/14

東海道新幹線の東京駅のさきっちょに、国会議事堂駅という秘密の駅があって、超エリート議員だけがそいつを利用している。10/15

こんなに芸術的なと形容すべき美しさに輝く樹木を伐採するのか、と、おらっちは激しい憤りに駆られたのよ。10/16

おらっちは、学芸員たちがどのようにゴヤの銅版画を配置しているのかが心配で、夜も寝られんかった。10/17

下関映画祭に呼ばれていたことを、すっかり忘れて四谷三丁目で踊り食いしてたら、オヤジさんに呼び出されて、首になっちまったよ。10/18

夜、駅の高架下を歩いていたら、カモちゃんとハンカワちゃんが酔っぱらっているところに出くわしたので、とても驚いた。10/19

帰宅すると、昔の恋人かもしれない女性からの手紙の束が、壁にピンで刺されていたので、言いようもない突然の不安に駆られる。10/20

小6の西村先生の国語の授業でオガワトモコが「着の身着のまま」を「着の身着のまま」と発音したので、ボクとヨシオカ君が「え!?」と疑問符を発すると、オガワトモコは「何よ、文句でもあるの?」という顔で僕らを睨んだが、西村先生は「その発音でいいんだよ」と意に介しなかった。10/21

アホバカ犬を飼っている男が、「貴殿はなにを飼っておられるかな?」としつこく聞くので、「わいらあ猫又を飼うとりまっせ」と答えたら、その猫又が分からないようだったので、「お暇なら徒然草を読んでね」というてやった。10/22

「背中越しの風景」という展覧会に行ったが、それはちょっと懐かしい思いがする風景画ばかりが並べられていた。10/23

カンヌ、ヴァネチア、ベルリンで最高賞を獲得した超有名な大監督ではあったが、その助監督のおらっちに下らない掣肘を加えるので、わいらあ社長に直訴して、配転してもらってやっと一息ついたのよ。10/24

明治9年の宮中某重大事件とは、天皇に食われると知った3匹の子ブタが、ある夜こっそり逃げ出したことをいう。10/25

衣食住のトータルファッヨンフェアが開催され、余はそのプロデュサーに任命されたのだが、担当の腕利きデザイナーたちが、さる大手建設メーカーの私邸の仕事に駆り出されたので、頭にきて辞任したのよ。10/26

現場の雰囲気がみるみる荒々しくなって、その中からただならぬナイフのように尖った悲鳴が当たりに響き渡り、それをきっかけに、もはや誰にも収拾できない大混乱が始まった。10/27

2階に来客があると受付から電話があったので、5階からエレベーターで降りようとするとエレベーターが故障していたので、階段で降りようとしたら、途中で工事しているのでどうにも辿り着けないのだ。10/28

おらっちは当代一の人気スタアなので、次々に当代一の美人女優と共演するのだが、そのたびに情交シーンがあるので、お互いに身定めしながら最適の伴侶探しをしているといえばしていたのよ。10/29

急に昔ながらの駅弁と急須のついたお茶が欲しくなって、駅前のなんとか軒に走ったのだが、売ってなかったし、そもそも建物自体が変わっていた。10/30

「神々の深き欲望」の撮影現場にいるんだが、今村監督と三国連太郎は代わる代わる肉感的な沖山嬢とやりまくっているし、呆れ果てた大河内伝次郎は東京に帰ろうとするので、プロデューサーのおらっちは必死で止めたのよ。10/31

恒例のかぼちゃ祭りを祝うために、我も我もと遠方からやって来た連中がドンちゃん騒ぎを繰り広げたので、町内会長や警察署長も懸命に宥めすかしたのだが、誰一人言うことを聞かないので、ついに自衛隊が出動して皆殺しにしはじめた。10/31

 

2024年11月

ついさっきまで戦場にいた隣の仲間たちが全部死んぢまって、生き残ったのはおらっちだけだったが、このぶんでは間もなく殺されてしまうだろう。おらっちは、どうして彼らと一緒に殺してくれなかったんだと恨むような気持に、ついなってしまうのだった。11/1

1階の受付でタクシーを呼んだナカヤ部長が、「一緒に乗せてやる」というて待っていてくれるというので、5階から急いで降りていこうとしたら、階段で死人のように青ざめた顔つきの部長を見かけたので、戸惑っているところ。11/2

せっかく和平が成就したのに、両国の代表は、席の着順や協定書の署名の順番がどうのと枝葉末節にダメ出しを始めたので、仲介役のおらっちも、「それじゃあ、おめえらの勝手にしろ」と匙を投げてしまったのよ。11/3

てらこの店頭で朝から晩まで待ち受けていても、西本町は死んだように静かで、誰一人やってこなかった。11/4

「終了しても電源が切れないパソコンは、どこかが壊れているんですよ」と、誰かが教えてくれた。11/5

会社から帰宅すると息子がいない。誘拐されたかと思って警察に電話したが何もしてくれないので自分で探そう。おらっちにはコンクリートの壁でも撃ち抜ける両の拳があるじゃないか、と思って両手でさすった。11/6

6点のリードがあれば楽勝だと思って、しばらくトイレで用を足していたら、同点にされていた。世の中何が起こるか分からない。11/7

うちの事務所にハセガワアキラさんがやって来たので、一緒にランチでもしようとエレベータに乗った途端、3階から1階まで墜ちてしまったので、もしかすると死者と一緒だったのかと思ったずら。11/8

国民党政府が出来て町内会館で「非常時の心得」という題名の大本営映画を、強制的に鑑賞させられていたが、あまりにも詰まらないので退席しようとしたら、ジミン党の町内会長が2万円の裏金を呉れるというので、みな思い直して席に戻ったのよ。11/9

ふと気が付くと、いつもの海が見渡す限りの砂地に変わってしまったので、我らはこれはほんとに津波がやって来るんだと思って、ぞっとしたんだ。11/10

超重度で薬漬けの子供たちを、まるっきり施設からの管理のないフリーな空き部屋に移して、それこそ自由に暮らさせることに決めた。11/11

出てくる敵をみなぶっ殺すつもりで、国境の最前線の町の広場に突撃したが、どうも様子が変だ。肝心の敵は、住民とジョークを飛ばして笑っているし、我々を見ても平気な顔をしているので、我々は拍子抜けして、構えた武器を下ろしてしまった。11/12

逗子の展覧会場は、サーカス小屋になっており、そこでは参加者全員が、宮中ブランコを楽しむことが出来た。11/13

コウ君は父母に混じって、ずいぶん長く会話できているようだが、私はなにか別のことに気を取られていたので、それが普通人の正常の会話的なものなのか、いつものオウム返しの自己本位の発語なのか判断できかねた。11/14

憲法第9条では、国際紛争を解決する手段として、武力による威嚇または武力の行使を禁じているが、国際紛争以外、例えば国内における革命や武装蜂起に際してはあてはまらないというのかしら、と自問自答してた。11/15

さる学校で、衣服を服飾としてではなく、生物生態系の一部として論じていた時に、「さりながらこの問題は先日卒寿を迎えたおらっちでは無理なので、あとは若い諸君の精進に待ちたい」と言うたところ、死人のような紫色の顔付をしたをタカイチ女史から、「あーた、そおいう極私的な発言は慎んでくらさいと」警告されたよ。11/16

愛犬ムクの先導で海の底まで潜っていくと、そこには20匹以上のさまざまな犬が思い思いの姿勢で寝そべっていた。11/17

彼女はやっと安住の地を見つけたとでもいうように、私の痩せた胸にすがって抱きついていたが、侘助少年の姿が見えないという声をきくや、すぐに立ち上がって、明けることのない白夜の底へ飛び出していった。11/18

東京駅の端っこにやっとこさっとこ着いたのだが、ホームの数が一杯あって、どこにも何番線と書いてないので、適当に階段を登っていくと、後ろから「ササキサンではありませんかあ?」と呼びかける人がいるので、振り向いたらビクターのトマツさんだった。11/19

広瀬さんと野良仕事に来ている。昨日は2人共5時半に仕事を終えて、一緒に宿舎に帰ったのだが、今日は疲れて居眠りしてしまい、目を覚ましたら6時で、広瀬さんは居なかった。11/20

そいつは大腸と小腸を全摘して、お腹の中ががらんどうになってしまったにもかかわらず、相も変らぬ悪党だった。11/21

私は夏仕様の紋付姿になった。アオキは赤橙の、タケダは青紫のスーツになった。それ以来3人が一緒になる機会はなかった。11/21

大統領選挙で実際には大敗したトランプ陣営が作った共和党大勝利の偽動画は、全米のみならず全世界に流通したので、とうとうそれが真実になってしまった。11/22

ドジャースのGⅯからドジャースタジアムに隣接する小さなスタジアムでも野球が出来るようにしてほしいと頼まれたが、ここはユニホームや野球グッズの販売店や土産物屋、おもちゃ屋などのブースが所狭しと並んでいるので、簡単に退去させられない。11/23

およそ半世紀ぶりに余のふぁっちょん原論を書き直して、師匠のイマイカズヤ氏に読んでもらおうと思ったのだが、既に泉下の人になられていた。11/24

親分の提案で百貨店に強盗に入ったら、そこでは社員販売教育が行われていたので漏れ聞いていると、なかなか立派な内容だった。11/25

大阪駅までやって来たのだが、そこから新幹線に乗っていいのか、乗ってどこへ行くのかもさっぱり分からず、左手の掌の上のセンチ虫が無事かどうかを、時々確かめていた。11/26

結局山崎という駅に到着したが、同行している2人が急に喧嘩し始めたので、おらっち一人で親戚の家の2階から、大きな入道雲が夕焼けに燃えていくのを眺めていた。11/27

その事件の結末をじっと見つめていると、現在が過去に、過去が大過去に、大過去が未来に、そしてその未来が現在へと、くるくる循環していくのだった。11/28

監察官に選ばれた我々は、その映画に反米的要素があるかどうかを、朝から晩まで苦役のように審査しなければならなかった。11/29

おらっちオオタニ・ショウヘイ。さいきん戯曲を書いては世界各地で上演されるので、「投・打・演」の三役揃い踏みだあ、と褒め称えられるようになっちゃった。11/30

おらっちオオタニ・ショウヘイ。最新作は「O嬢の物語」。たった一人で天・人・修羅・畜生・餓鬼・地獄の六道輪廻を経て、野晒にされる可哀想な女の物語だ。11/30

 

 

 

薦田 愛詩集「そは、ははそはの」を読んで

 

佐々木 眞

 
 

題名がなぞなぞのようなので、ちょっと調べてみたら、「ははそ」はドングリの実がなる木の総称である柞の葉っぱで、「ははそはの」は母にかかる枕詞らしい。万葉集の他三好達治の詩集「花筺」にその引用があるというので、岩波文庫を探してみたらありました。

いにしへの日はなつかしや/すがの根のながき春日を/野にいでてげんげつませし/ははそはの母もその子も/そこばくの夢を夢みし、で始まり、ははそはのははもそのこも/はるののにあそぶあそびを/ふあたびはせず、で終わる「いにしへの日は」という全部で21行のみやびやかな詩でした。

ちょっと驚いたのは、三好達治の最終連である

 ははそはのははもそのこも
 はるののにあそぶあそびを
 ふたたびはせず

という3行のひらかなが、今回の母子二人の長いようで短い道行きをうたい上げた薦田さんの第4詩集の、すべてを象徴するように印象的なエンディングになっていることでした。

それで、この詩集における作者の語り口はというと、本書の題名や詩の凝った表題の付け方にみられる古語、古典文学の広くて深い素養と、平明な現代日本語とが自然に融合したユニークな修辞によってさりげなく彩られ、現代を生きる大人の詩篇として興趣が尽きないものとなっています。

巻頭から母子は、鳥羽、河津、新宮、茅野、長崎、犬山、尾道と、全国各地に同行二人の旅に出ます。

 女ふたりで「夫婦岩なんてえね、と/鼻をかむ/だって/縁結びを祈る女子旅ではなくて/恋のアルバム作成中のふたりでみなくて/父つまり夫を送って三十年の母との旅だ」(「ふたみ、夕暮れの」より)

どうやら母親は高齢であるにも関わらず、桜をカメラに収めるのが趣味で、そのために桜前線の北上を追って全国の桜名所の寺社や名城に出かけるらしいのですが、母子とも結構うっかりもので、時間に遅れたり、大事な忘れ物をしたり、旅の失敗談がいくつも出てきて微苦笑させられます。

けれども世間の母子の大方が表向きは仲睦まじくとも、一皮めくればいろいろあるように、詩集の主人公である私とその母との間にも、ある日亀裂が走ります。私と恋人との3人暮らしに軋轢があったのか、母が突然家出して、東京から故郷の四国に戻ってしまったのです。

長く暮らした東京をはなれ/戻らないと言っていた土地へ戻ったひと/はは/母という/ばっこばっこ/はは ばっこ/その母/舜動する(「ばっこばっこ、ははは」より) 

そしてその道行の掉尾は、子が母に成り代わって事態の全貌を序破急の急で歌い上げる物語第3篇≪参≫のにあり、それが≪壱≫、≪弐≫と続いた人世の一大事の荘厳なコーダとなって、私たち読者の胸をしたたかに打つのです。

 あな、恥ずかしの身の上かな/おうおう と/聲あぐるはいと易けれど/おしころし押し殺す底ひより/たぎりたちくるもののさうらいて/あの/あの子/あの子の名 を/こゑ に/こゑ に出ださず/聲 にせむ(「ものぐるひ」より)

なお、本書のあとがき「後記、そのいきさつの」によれば、「母は郷里の街で、老境を生きている」そうであります。

 

・浜風文庫の本
https://beachwind-lib.net/?page_id=4694

 

 

 

村岡由梨第2詩集「一本足の少女」を読んで歌える

 

佐々木 眞

 
 

血を流しながら書き綴られた村岡由梨の第2詩集は、読めば血が出る22篇だ。
私は、この真率で、真情溢れる、痛切な詩行を読みながら、改めて詩とは何かと考えていた。

最初に浮かんだ考えは、詩とは「見守りボッド」のようなものではないか、というまことに幼稚なものである。

病ゆえに絶えざる自殺願望に取り付かれ、陸橋を渡りながら、何もかもを、愛する家族さえも見捨てて、硬い車道に身を投げようと思う作者を、詩は、「跳べ」とも言わず、「止めよ」とも言いわず、黙ってじっと見つめている。

その時、詩はまるで天体をぐるぐる経めぐりながら、地上に蠢く微細な存在、生きとし生ける森羅万象を、ことごとく把握しながら、じっと見つめている。
見守っている。

詩はもとより、人間と同じく無力で、そもそも無用の存在であるが、人間がそこにあって、心身に刻み付けられる体験する喜怒哀楽をしかと見届け、激しく流動する事態を、一時的に棚上げして、半永久的に保存することもできるのである。

なぜ詩を書くのか?と問われた谷川俊太郎は、「書いてくれという注文があるからです」とユーモラスに答えたが、村岡由梨は、「私が詩を書くのは、まっとうな人間になりたいからです」(「No.46」より)と、まっすぐに答えている。

詩を書くことによって、まっとうな人間になることはできないかもしれないが、 まっとうな人間になりたいという願いを、詩は、そして天は、嘉して受け止めてくれるだろう。

まっとうな人間になりたいと祈り続ける人を、
詩は、そして天は、
ずうっと優しく見守り続けてくれるだろう。

 

 

 

尻子玉

 

佐々木 眞

 
 

極楽の昼下がり、お釈迦様は長い、長いお昼寝から覚めて、遥か下方の地上を眺めていると、おりしもハロウィンで賑わう、渋谷のスクランブル交差点が見えました。

と、ふとあることを思いついたお釈迦様は、女郎蜘蛛の杜子春を呼びました。

「これ杜子春や、あのスクランブル交差点全体を覆うような、大きな、大きな巣をかけなさい」

「はい」

と答えた杜子春が、お釈迦様の仰せの通りに、天上から大きな、大きな蜘蛛の巣をふんわりと投げかけましたが、せわしなく交差点を行き来する人々の目には、もちろん見えません。

さうして、この見えない蜘蛛の巣のベールの下を通る人は、男も、女も、男でも女でもない人たちも、大人も、子供も、みんな揃って尻子玉を引っこ抜かれてしまいました。

とさ。

 

 

 

家族の肖像~親子の対話 その71

 

佐々木 眞

 
 

 

2024年5月

モノレール、ジエットコースターみたいですよ。
そうですか。
そうですよ。

お父さん、黒柳徹子と石原さとみの番組、録ってくれた?
撮りましたよ。帰ってきたら一緒に観ようね。

ボク、クレソン大好きですお。
お母さんもよ。こんど買いましょうね。

感謝って、ありがとうのことでしょう?
そうだよ。

コウ君、来週図書館お休みだってよ。
なんでお休み?
特別整理期間だって。
なんでお休み?

ボク、ペヤングのソースヤキソバ、大好きですよ。
そうなんだ。

ハイハイ、お父さんですよ。
お母さん、出してください。
お父さんじゃダメ? お母さんは今忙しいからお父さんが出たの。
お母さんがいいよ。

感じるって、思うこと?
そうだね。

お父さん、ショードクって、英語でなんていうの?
ショードクねえ。分かりません。今度調べとくわ。
お母さん、ホケンのタカギ先生、「手をショードクしときなさい」ていったお。
いつ?
小学2年生のとき。

戦うラーメンマン、おもしろかったですおお。
そうなんだ。

一度きりって、なに?
一回だけ、よ。

生糸、オカイコのこと?
まあそうだね。

お母さん、あした東急行きます。
はい、分かりました。
お母さん、あした図書館とたらば書房、行きます。
はい、分かりました。

 

2024年6月

ぼく、ヨシタカユリコとお父さん、好きですお。
そうなんだ。コウ君、ありがとう。

ボク、オマツリ好きですお。
そうなんだ。

 

2024年7月

お父さん、田中みな実が出る「ギークス」録画してくれた?
しましたよ。
した?
したよ。

さまざまな、ってなに?
いろいろな、よ。

吉高さんに子どもが出来たんでしょ?
そうね、でもドラマの中でよ。

お父さん、田中みな実が出る「ネプリーグ」みますお。
いつ?
今ですお。
そう、みてね。

 

 

 

静かなる休火山

――目黒実氏に
 

佐々木 眞

 
 

小学生の頃、火山には、活火山と休火山と死火山がある、と聞かされていた。

それで僕は、山を人世に譬えて、山頂から激しく火をふいいて地下からのマグマを天に向かって吹き上げる活火山は、青少年期。

その勢いがだんだん収まって、
時々爆発するオヤジのように丸くなる休火山が成熟期。

そして思い出だけを懐かしむ老人期が、
死火山に似ていると思ったものだ。

それから半世紀の歳月が流れ流れて、
僕は今まで見たこともない秀麗な休火山と巡りあった。

花と嵐のこの世を渡り、酸いも甘いもかみ分けたお洒落な伯父さん、目黒実。
それはいつも静かなる頬笑みを湛えた休火山。

その山頂には、来る朝毎に昇る太陽にキラキラと輝く透明なカルデラ湖を湛え、その下にはいつでも爆発せんばかりの、ふつふつと情熱をみなぎらせたマグマが赤黒く滾っている。

この山は、もしかすると、この国でいちばん美しい休火山かも知れない。

しかしある朝、それが静かなる休火山であることをやめ、
その端正な面立ちを崩して、天空に向かって地下から激しくマグマをまき散らすだろう。

その時こそこの山は、世界でいちばん美しい山になるだろうことを、僕は確信している。

 

 

 

「夢は第2の人世である」第106回

 

佐々木 眞

 
 

 

2024年5月

ラジオ体操とメンデルスゾーンの「言葉なき歌」に、なんか文句をつけようと必死になるが、なかなかうまくいかないのだ。5/1

名工タキガワが、「今回は妻のマケカリの助太刀も得て、意欲作に挑戦したい」というので、商品部長を呼んで意向をきいてみたが、大量の在庫処分に追われてまるで馬耳東風なので、さすがのおらっちも匙を投げたよ。5/2

長らく小さな箱の中で育てられてきた小人が、ある年限を過ぎると、みるみる大きくなって、それはそれは立派な成人となりおおせるのだった。5/3

同級生たち10人で揃って歯医者に行ったら、虫歯にもなっていない丈夫な犬歯を麻酔なしで引っこ抜かれた友人もいて、いやはや大騒ぎだった。その後娘と坂道を登ってサテンで砂糖をどっさり入れた熱い紅茶を飲んでからバスに乗ったが、行き先を間違えてしまって別のを待ってる。5/4

するとクラタが勃発してきたので、ヤカハシはまた小説を追加したので、また美女が近づいてきたので、これを抱いているうちに、また喉が渇く、その繰り返しだ。5/5

ナンガパルバットの最高峰に挑んでいるおらっちだったが、同行する命綱を付けないことで知られる世界最高級のアルピニストが、突如8千mの高さから墜落してしまったので、呆然としている。5/6

バカダ大学の阿呆莫迦教師、ヒラオカトクの授業中に、とても大事なことを思い出したので、急遽下宿に戻って録画をセットしてから、またバカダ大学に戻ったら、誰も居なかったずら。5/7

彼は、かねての誓約通り、敵の囲みを破って、孤立無援の私を、救い出してくれたのよ。5/8

男性初の弁護士になるため、2つの難関を突破したおらっちは、ついに最後の三次試験の受験日を迎えた。5/9

在庫を一掃するべく、巨大な武器倉庫の武器弾薬をすべて処分したので、1946年11月3日の日本国憲法発布の公布日以来の、さっぱりとした気分になった、のよ。5/10

家の中に転がっている5種類のステレオ装置の5個のアンプと10個のスピーカーを、次々に接続しているうちに、どれがどれだかてんで分からんようになっちまった。5/11

「確かにこの文章にはいくつかの問題がある。しかし最も大きな問題は、私の署名があるこの文章は、私が書いたものではないことだ」と私がいうと、AI野郎がこそこそ逃げ出そうとしたので、私はドンと叩き潰してやった。5/12

小学5年か6年の時「顔洗いひょいと目を上げ四尾山」という川柳みたいな俳句を詠んだ時、弟と妹が「近くの寺山なら見えるかもしれんえど四尾山なんか絶対見えへん」といううたので、母が「別に見えんでもええの。寺山だと字足らずになる」と断じたのでさすがは愛子さんと見直したずら。5/13

クライアントからCⅯ製作を依頼されたので、すぐに夏色コンテを書き、チャイコの劇伴を副えてスタッフに見せたら、カキちゃんとモチ子は「マイマミロケですね」と即答したが、ケヅカ&イシワタ両君は、「スタジオ空舞台でSF合成ですね」というのであった。5/14

明日は戦国時代の最激戦になることが予想されるのに、大勢の戦士たちが、意外とのんびり構えているのは、そんなこととは、てんで知らないからなのだろう。5/15

おらっちの友人の中小企業の社長は、かなりの好条件で帝国一の大企業に引き抜かれようとしていたが、若くて優秀な30人くらいの従業員を思って、言下に断ったようだ。5/16

ゲーム中なので、メシはカレー中心で行こうとする作戦は大失敗。ホームラン賞こそ2回獲得したものの、連日連夜のカレーライス攻勢にすっかり食欲を失った私は、肝心のゲームに集中できず、無残な敗北を喫したのであったあ。5/17

日本竹槍武装党党首のおらっちは、日本会議の女ボスに呼ばれ、ジパング革命党に党名を変えたらあらゆる協力を惜しまないとまで言われたんだが、いろいろ迷った末、断固断ったのよ。5/18

私が定年退職する夜に歌い踊った「おぢやどんぶり」は、後にその会社が倒産してからもユネスコの世界文化遺産に登録され、短かったわが生涯の掉尾を、いと哀しく彩ったのだった。5/19

とてもやさしい料理人で、ランチのお米が切れるとおこわを山盛りにもってくれるので、あのレーニンをはじめ、世界中にファンが多かった。5/20

八百屋で超破格値のイチゴを買ったら、「できるだけ早くお召し上がりください」と言われたので、忘れないように部屋のあちことにイチゴインテリアとして置き捲ったのよ。5/21

永福寺の傍の竹林に、ちょうど手頃な大きさの筍が捨ててあったので、持って帰ろうとしたが、生憎布製の袋をどこか途中で無くしてしまったので、涙を呑んで諦めた。5/22

5枚組、6枚組、7枚組のおんなじブランドのパンを、何故かおんなじ値段で売っているのだが、あまりにもいろんなことを考えすぎて、どれを選んでいいか分からなくなってしまったのよ。5/23

「狙え!打てえ!ズドーン!」 恩知らずの僕は、身代わりになってくれた親友の心臓に、サンパチ銃の鉛を撃ち込んだ。5/24

隣を歩いていたオバハンが、「この近くにトウジョウ外科はありますか?」と訊ねるので、「すぐ近くだよ」と答えると、「そこで自分を殺してもらえますか」とまた訊ねるので「病院はガザのように人を殺す所ではなく、人を救う処だよ」と諭してやった。5/25

単なるピッチャーゴロというが、ピッチャーが取って一塁に駆け込んだんかいな?いやピーゴロやと思う。試合を終えて、そのままここへきてもうたんや。なら、それセーフやろ。ヒットやないか?なんで勝手に試合を終えてここでカレーライス食べとるんや? 5/26

ウンノ家を護っていた生き神様が、大火事で焼けてしまったので、ウンノ家は、運が尽きたようだ。5/27

有名デザイナーの工場に招かれて、服や雑貨や靴を見学していたら、そのデザイナーが「何でも原価でお頒けしますよ」と囁いたので、みんな競うように大量の買い物をしてしまうのだが、それって新手の商売ではないのだろうか?5/28

図書館では何冊でも本を貸してくれるので、どんどん借りるのだが、2週間はすぐに経ってしまうので、殆ど読まないままで借り直しになるから、図書館へ行くたびに持っていく本がどんどん増えてしまうので大変だ。5/29

私は、とうとう人を殺してしまったようだが、その時のことを、あまり思い出したくないので、わざとのように曖昧なまま放置して、時の流れに押し流されるよう願っているのだが、はてさてうまくいくかどうか。5/30

どういう風の吹き回しか、みんなで芝居をやることになった。まずは場慣れたタコ八郎、続いてドシロウトの私とゼンタロウ、それから駄犬のムクだが、こんな4人でもなんとかなるのだろうか?5/31

 

2024年6月

おらっちしかいない職場に知らない男がやってきて、「お前んとこの課長が帰ってきたらすぐに連絡せよ」と命令するとすぐ立ち去ったが、おらっちそいつが誰だか分からないので課長が戻っても放置しておいたずら。6/1

私は花園中学の女子中学生と手に手を取って、朝のラッシュで大混雑している京都駅に到着したが、それからどうしていいのか分からんかった。6/2

短文をつくったあとで、この文章にはどんなハッシュタグをつけるべきか大いに迷って、とうとう朝を迎えてしまったよ。6/3

友人から挨拶を頼まれたので、おらっちは昔書いた「なんでも挨拶事典」を引っ張り出して、よさそうなクダリをそのまま引用したかったのだが、んなもん皆無だったずら。6/4

若い2人のために別荘を建ててやったというのに、さして感謝も感動もしていないのは、なぜだろう? もしかしてワシの建築センスがダサイのではないのだろうか?と思うと、気が気ではなかった。6/5

商品を1個づつ手に取って、大勢の写真が販売に出る効率の悪さが、堂々とまかり通っている不思議さよ! これで人並み以上の給料が出ているのだが、ますます不思議だ。6/6

はじめは北に向かって歩きだしたのだが、思い直して、今度は南に向かって歩き続け、とうとうナニワエに着いたのよ。6/7

結果的には、予がその殺人事件の判事を担当することが分かっていたので、犯行以前の彼の動向を探ってみたのだが、どう考えても、あんな残酷な人殺しを実行するような人物とは思えなかった。6/8

容疑者を取り調べながら、「これが重要なんだよ、重要」と偉そうにいいながら黒板に「重要」と書いた重の字が間違っていることに気づいて、おらっち大層恥ずかしかったのよ。6/9

A君は秒速18km、B君は15kmの目にもとまらぬ超快速剣で、群がる兵士を切り捨てていたが、最終的に最も多くの敵兵を退治したのは、ほかならぬ秒速3kmの吾輩だった。6/10

草笛城の外観は、城壁が抉れて物凄い様相を呈していたが、世界中のアナキストたちが、八方破れのそのアナーキーな状態を讃美してやまなかったので、お隣の若月城も城壁の一部をわざと崩したりしていた。6/11

工業団地の土地を一応確保したコウドウカンは、自社の4区画を、それぞれトヨタ、NTT、ソフトバンク、大洋漁業などに提供してやったので、ひどく感謝されたのよ。6/12

健康診断を受けていると、市役所の職員が大事にしているという写真をこっそり見せてくれたのだが、その写真が、あっという間に脱走して、一人で遠くの方へ行ってしまったのよ。6/13

宮沢賢治記念館の公演の最後に登壇した花巻青年団の若者たちの風貌が、揃いも揃ってミヤザワケンジに生き写しだったので、とても驚いたが、よく考えると、あれもこれも当地によくある顔なのだった。6/14

予の豪邸が、時ならぬ大火で焼け落ちたので、町内の貧民どもが、なにか金目のものがないかと大挙してやって来たので、ドタマにくるぜよ。6/15

サキちゃんに誘われて京都に出て、そこから左京を歩き始めたら、汚い東屋にコ汚いおばはんがいて、それがサキちゃんの母親だったので驚く。それからさらに歩いて、西部講堂でマルセルメイエのパントマイムを見物したのよ。6/16

世界最高級のヴァイオリニストとして内外の尊崇を浴びている彼だったが、いくつかの有名曲を絶対に手掛けないのは、それを弾くと、おのれが死んでしまうと知っているからだった。6/17

ここイランでは、ウイルスのワクチンの入手が困難なので、罹患しないよう、毎日アラーの神に祈っている次第だ。6/18

長針が12時にやって来た時に、しっかりつかまえたので、時計は無事に元に戻った。6/19

あまりにも地味な身なりの男なので、誰一人注目しなかったが、あにはからんや彼こそ真の予言者なのだった。6/20

家族全員が出かけて私しかいなかったとき、もう若くないピンクのラバースーツを纏った女がやってきて、「もうすぐ地球に大洪水が起こるから、これを買っといた方がいいですよ」と勧めたが、「わしはまたノのアの箱舟に乗るからいいや」と断った。6/21

わが社は、書体づくりをしている社員5名の超小企業だが、このたび明朝の新書体づくりの社内コンペを行ったところ、新入社員のモリサワ君が最高級の成績だった。6/22

マイナカードによるAI検索で、リベラルないしは反権力派と見做されると、直ちに警察の特殊部隊が派遣され、有無を言わさず検挙され、徹底的に拷問された挙句に抹殺されるのだった。6/23

獣皮のテントで開かれたバッロック音楽の演奏会に退屈したので、おらっちは一人で夜のジャングルの中に入っていったのよ。6/24

お母さんとセイユーで買い物している間、コウ君はお昼のお弁当を選んだり、アイスクリームを買ったり、トイレに入ったり、週刊誌を立ち読みしたりするので、けっこう忙しいのだ。6/25

泌尿器科の医師であるおらっちは、若い時から年が年中クラシック音楽、わけてもモザールをまるでBGⅯのように流し続けていたので、たまにコンサートで聞いても生々しいBGMとしか思えないのだった。6/26

もはや余命半年の旧態以前たる百貨店に勤めているおらっちだったが、そこは腐っても鯛、毎週のように立ち上げられる「なんたらフェア」や「きゃんたらセール」に忙殺される毎日だった。6/29

そろそろ実家暮らしをやめて町に戻ろうかと思いつつ、息子の姿を求めて2階を覗いてみたら、なんとなんとどの部屋にも彼の友人たちがグースカ、グースカと高らかに鼾をかきながら眠っているのだった。6/30

 

2024年7月

3時28分にケイタイがぶるぶる震えたが非通知だった。それから彼女と手をつないで夜の小道を歩き出したのだが、どんどん道が悪くなって道そのものが無くなってしまったのだが、それでも無理矢理歩き続けていると、突然死んだふりをした中年女が寄りかかるので一喝した。7/1

もしかすると、この中年女も、手をつないでいる若い女も、そしておらっち自身も、この世の人間ではなく、冥界の人なのかもしれないが、そんなことを考えても仕方がないので、なおも道なき道を突き進んでいったのよ。7/2

部落代表同士で争論しているんだが、おらっちは、今争っている前の段階で、より重要な論点があったことに気づいて、えらく焦っているところ。7/3

帰路駅馬車に乗った私は、モーレツな勢いで急坂を駆け降りる最中に岩にぶつかって空高く飛び跳ねる馬車に驚いて、降りるべき駅で降りられず、取引先に契約違反で訴えられたりしたのだが、それどころではない、命あっての物種だったのだ。7/4

一死一塁でおらっちに打順が回ってきたのだが、おらっちはジャッジや大谷ではないので長打狙いを捨てて、あわよくば自分も生きられる犠打的な単打狙いに切り替えた。7/5

フロイトか誰か精神分析の専門家が、入門書の中でインタビューに答えながら、「無意識」についてとてもいいことを語っていたのを思い出して、その本を探しているのだが、どこにも見当たらない。7/6

長い欧州旅行を終えてしばらく経った頃、ヴェネチア書房という本屋から、手数料を払えという督促と請求書がきたが、なんのことやらさっぱり分からないので、ほったらかしにしている。7/7

わがホテルの従業員たちは、ホテル内に1つの組合本部と、1つの空き部屋を労働組合の権利として確保していたのだが、思うことあって組合の書記を辞めた私は、もう宿泊施設として利用できなくなってしまった。7/8 

あらゆる映画のエンドシーンを作り直すことになったので、製作会社はてんやわんやの大騒ぎだ。7/9

前歯の犬歯がひどく痛むので、朝一番でキシモト歯科に電話しなくちゃと思っていたが、不思議なことにいつのまにか痛みが去ってしまったのよ。7/10

全国136か所の貿易港にミサイルが撃ち込まれるのを、あんぐり口をあけて鑑賞していたが、いきなり自分の背中で爆発したのには驚いた。7/11

夕方夫と共に公園を散歩していた妾は、突如見知らぬ暴漢数名の襲撃を受け、夫婦で防戦したものの2人共大怪我をしてしまった。いったい彼らは何者だろう?7/12

それが景物であろうが、動植物であろうが、私が丁寧にスケッチすると、その図絵が、たちまち「そのもの」になるのでした。7/13

おらっちが、なぜか世界的に権威がある「日本賞」を受賞したので、建築界は大喜びだった。7/14

純白のドレスを纏ったブロンズ新社のワカツキさんが、南青山の洒落たお菓子屋さんの庭で、一心不乱に読みふけっていた。昔ながらのオカッパ頭で。7/15

烈女の誘いに乗るとか、いっちゃん洒落たレストランの料理を口にするとか、おいしそうな夢の中に入っていくと、碌な結果にならないことが、よーく分かったずら。7/16

エレベーターとは何をする機械か、てんで分からなくなった老人たちは、思い思いに大小便をしたり、告解したりしている。7/18

我は凸凹中学校の代用教員だったが、教頭の不祥事で修学旅行が中止になる噂を耳にしたので、勝手に子供らを引率して、日本全国遊覧の旅に出たのであった。7/19

革マルのナリオカが、いうに事欠いて、偉そうに「お前たちはインポだ」と決めつけのだが、おらっちは、そういう夫子自身が間違いなくインポなのだと思うに至った。7/20

明日の本番を前にして、主役のオセロが降板することになったので、みんなで少しずつ分担することにしたが、本来の役との区別を付けられないので、観客は大いに戸惑ったようだったが、そのうちに斬新でシュールな演出だと思ってだんだん納得してくれたようだった。7/21

報国寺の裏道を歩いていたら、川原という表札が出ている寂しそうな家があったので、カワハラアキコさんのお宅ではないのかと思ったが、もうこの世の人ではなさそうなので、諦めて通り過ぎた。7/22

馬鹿殿のドラ息子であるおらっちは、酒煙草ヤク女遊び革命ゴッコまで、ありとあらゆる悪さをやりまくったのだが、世話係のジイだけはいつもやさしく見守ってくれたのよ。7/23

学校の試験問題は、決められた時間内に、決められた形式で回答しなければならなかったが、それからおよそ50年後に正しく答えられた問題もあった。7/24

町内会から推薦されたウザッタイ元悪童が、あれよあれよという間に保守党と右翼の大物にのし上がって、夜郎自大な専制政治を独裁している。7/25

「水爆実験で繰り返し爆破されながら、残骸を悉く集積しましてね、こいつを再利用して何とからなんかいなと思っていたら、さる奇特な方が現れて、これで素敵な別荘を造ってくれませんかと仰るんですよ。」7/26

そとほり姫を、決して陸地にあげないよう、あらかじめ取り決めてあったのが、幸いした。7/27

わが市では、戦後70年間イスラエルと友好都市条約を結んでいたが、この夏市長と全議員の勇断の元、そいつを一方的に破棄してガザ市とのそれに切り替えたのよ。7/28

南に急行すれば、船が壊れて破滅する、という長老の予言を退け、わいらあゆっくりと帆先を南に向けた。7/29

ここ沖縄のナンタラ記念館で、おらっちは、日本人のお面を引っ剥がされて、醜いヤマトンチュの顔貌と向き合う羽目に陥ったのよ。7/30

打ち上げ失敗が相次ぎ、仕方なくおらっちは愛する虎の子の女性宇宙飛行士を最後の有人ロケットに搭乗させる羽目になったので、管制塔の秒読みが気になって気になって仕方がないのです。7/31

 

2024年8月

既に世界中が戦争状態なので、戦争から目を背ける映画が世界中で大ヒットしている。8/1

小二郎がもっと声を大にして仲間たちを説得すれば、近藤選手を死なせなくとも良かったはずなのに、しばらくすると彼の身代わりみたく組織を抜け出して外国に留学したのは、いったいどおゆう風の吹き回しだったんだろう。8/2

「お父さん録画した?」という息子の問いかけが絶え間ないので、それが実際の声なのか、電話の声なのかもわからずに、いまも続いている。「お父さん、録画した?」8/3

私の目の前で一人の知人が斬り殺されたので、何故だと訊ねたら、「こいつはお尋ね者の敵の内通者なんだ」というのだが、そいつをどれくらい信用したらいいのかが分からない。8/4

日曜日が来るたびに、僕らはいやいやながら、教会へ行かされた。僕らはやけくそになって、「ニチヨオサンビテエー、ニチヨオサンビテエー」と怒鳴りながら、仕方なく教会へ行ったんだ。8/5

世界中でどんどん人が死んでいくが、おそらくこの国では、おらっちだけがいつまでも死なないで生き残るだろうという噂が一部で流れていたようだったが、意外にもあっさり死んぢまったようだった。8/6

うちの町内会長はすぐに酔っぱらうのだが、酔っぱらうと、すぐに巨大なマサカリを振りかざして町内の家々に乱入するので、住民は怖れ慄いていたのだ。8/7

なんでこんな悲惨な事件が起こったのか、てんで分からないのだが、ともかくまたしても関東大震災が起こってしまったので、おらっちと次男は、車で大和の施設にいる長男の救出に向かい、妻は一人で自宅を守ることにしたのよ。8/8

長男を無事に助け出すことが出来たので、これ幸いと3人で車に乗って自宅まで帰ってきたら、ライフル銃で武装した正体不明の怪しい男が玄関口にいたので、急いで車から降りたおらっちは、コルト1発で彼奴を仕留めたのよ。8/9

コウ君が「タナカミナミのビデオ録ってくださあい!」と絶叫するので、急いで録ったのだが、60分の正規版ではなく、5分間の短縮版だったので、こはいかに!?と頭を抱え込んでいるところ。8/10

われは国内ではそれなりのレベルの選手であるし、われの唯一無二の必殺技が評価されて、今回の五輪に出場したのだが、いざ初戦で相手と対戦したものの、われはわれの必殺技をど忘れしてしまい、予選で敗退の憂き目にあったのよ。8/11

モモとマツヤマのコンビが、初めて映画で主演したので、その記者会見が開かれることになったのだが、彼らのテーノーぶりを熟知しているジャーマネのおらっちは、ハラハラドキドキしながら見守っているとこ。8/12

2つの連続ドラマの放映中に、同時多発的に爆発シーンが起こったので、上を下への大騒ぎとなった。8/13

極右の富士テレビで「ガチャンピン、ムック、ひらけポンキッキ!」と歌いながら踊っていたら、社員全員からシカトされたので、おらっちは彼奴ファシストどもから嫌われているのだと分かった。8/14

バスに乗り遅れるなとばかり、みんなも行く戦争に行ってみたが、いいことは何一つなく、おらっちの歩兵大隊のうちで、無事帰国できたのは1%だけだった。8/15

パクられた有名芸能人の牢屋情報をネットで無料公開しているそうだ。が、おらっちは絶対に見ないだろうな。8/16

社長の私が留守中に、私のダミーのAIの評判を聞いたら、当の私よりも高く評価されていたので、「だからAIなんてゼッタイ信用できないんだ!」と確信した私は、ダミーの首根っこを引っこ抜いて、滑川に投げ捨ててしまった。8/17

サンフランシスコで買ったお気に入りの腕時計を修理に出したのだが、いつまで経っても返ってこないので、「まだかいな」と問い合わせたら、さる大金持ちの外国人が「いくらでも買うから」と言って、大枚はたいて持って行ったというので、おらっちは激怒したよ。8/18

トミタ課長の格調高い演説を、わいらあ革命3兄弟が嘲笑ったので、動揺した課長は、わが軍のミサイルの矛先を全部クの字に折り曲げてしまったので、せっかくの台湾有事にはさっぱり役立たなかった。8/19

ド・クインシー公爵は、昔白いドレスの若い娘の後ろ姿をみて突如ムラムラし、背後から抱きすくめて、まるでさかりのついた雌雄の犬のように交尾したのだったが、20年後に自分の隣に優美に微笑んでいる公爵夫人が、その娘だったとは、我ながら信じられなかったよおだ。8/20

金ヶ崎で朝井軍に敗れ、信長から殿軍を命じられた秀吉は、「ここでなんとか生き永らえたら、甘い汁も吸えるだろう」と考えることもできたが、俺たち下っ端には、まるで救いのない、地獄のような後退戦が続くのだった。8/21

聞こえず喋れない少女の世話をしていた知り合いの官女が、娘の財産を蕩尽したというので、2年後に北町奉行に検挙され、酷い拷問を受けているそうだ。8/22

巴里の3つ星レストランへ行ったら、爺のくせに若者の顔をしたアラン・ドロンが、レストランじゅうにつるしたイカめがけてライフル銃を撃ちまくっているのだが、こいつが百発百中なので、店長もボーイも「イカス、イカス、イカス、セ・レ・レガンス・ド・ロム・モデルヌゥ」とフランス国歌のように歌いながら拍手喝采している。8/23

閉会式で演奏された曲は、親会社の重役でさえ聞いたこともなく、誰一人理解できなかったが、そこがまたこよなく佳いのだった。8/24

100m短距離走で優勝したのは、アパッカで覆われたフローライン人間だったが、ダントツでゴールインしてからも、スピードを少しも落とさずに、遥か彼方までぐんぐん走っていくのだった。8/25

タクちゃんヒーちゃんとおらっちは、電気的に繋がっているので、双方の様子を瞬時に伝達したり、共同でモノを作り上げることもできるのだった。8/26

余りにもたくさんのロケットなので、場内管理者は適当な感覚をおいて「出発」と書かれた旗を振ると、待機していた大中小のロケットが、その都度焔を吹いて打ち上げられるのだった。8/27

視聴率が取れるテレビの新番組の企画を頼まれて、いろいろ考えてみたが、結局お涙頂戴の母ものくらいしか頭の中に浮かんでこないので、我ながら嫌になってしまったずら。8/28

番ったのか、まだ番わないのか、知らないが、昨日と同じ雌雄のキチョウは、庭のシュウカイドウの上で、いつまでも戯れている。8/29

谷間に聳え立つこの古い尖塔には、東西南北に無数の小さなスタジオ兼用の部屋があり、そこでは複雑怪奇にしてデリケートな写真が撮れるので、世界中のキャメラマンの憧れの的になっているそうだ。8/30

世のテレビが、ことごとく阿呆莫迦番組なので、それとは正反対の、真摯な超優良番組を作ったのだが、残念ながら視聴率ゼロだった。8/31

 

 

 

西暦2024年8月18日の夜から19日の朝にみた夢

 

佐々木 眞

 
 

巴里の3つ星レストランへ行ったら、爺のくせに若者の顔をしたアラン・ドロンが、レストランじゅうにつるしたイカめがけてライフル銃を撃ちまくっているのだが、こいつが百発百中なので、店長もボーイも「イカス、イカス、イカス、セ・レ・レガンス・ド・ロム・モデルヌゥ」とフランス国歌のように歌いながら拍手喝采している。