訪問看護は いかがでしょう

 

今井義行

 
 

わたしは 週に2回 精神疾患に特化した 訪問看護を 受けている



今日の朝も まだ 成り立てだという 訪問看護師さんが 訪れた



その 訪問看護師さんは 猫柄の マスクなんて してる・・・



(それにしても なんて 若くて かわいい 看護師さん なんだろう)



「はじめまして」
「はじめまして」



訪問してくれる 訪問看護師さんは 決まっていなくて その日によって 変わる



(その 訪問看護師さんたちが 揃いも揃って 皆んな 20代前半の かわいい 
娘たちばかりなのは 何故なんだろう)




わたしは ピンッと きた




(訪問看護ステーションも ビジネスなので 応募者が 資格を持っているのは 当然のこととして 所長の採用基準が 20代前半の かわいい 娘たちばかりに 
絞り込まれているのは 明らかだな)




(これは 風俗 か)




「まず 検温を しましょう」

「はい」

「異常なし ですね」 

「次 血圧を 測りましょう」

「はい」

「異常なし ですね」

「次 脈拍を 測りましょう」

「はい」
看護師さんが わたしの手を 柔らかく 握ってくれた・・・

「異常なし ですね」



わたしは まず わたしの メンタル面での 著しい低下について 相談したかったのだけれど

訪問看護師さんの方から 先に わたしに 相談をしてきた



「わたし マクドナルドの マックフルーリー(アイスデザート)を 食べるのが 
好きなんですけど きのう 体重を 測ったら 1kg 増えてて ショックだったんです
どうしたら いいんでしょうか」



「アイスクリームは 300Kcalくらい ありますからね こまめに 体重測定をして 
体重の キープを 心がけていくのが 良いんじゃないでしょうか」



「わかりました そうしてみます」

「ところで 看護師さんは 何故 敢えて 精神疾患に特化した 訪問看護ステーションを 就職先に 選ばれたのですか」



「そうですね・・・それは わたしの 家族に 精神疾患者がいて それが きっかけで 看護学校に 進学して 何か 精神疾患者の役に立てないかなと 思ったからですね 他の看護師たちも そんな感じだと 思います」



「・・・そうなのですね」



わたしは 今日の 訪問看護師さんを 見送りながら

「看護師さんの お話を 聞けて 嬉しかったです ありがとうございました」

わたしは 頭を 下げていた



わたしはその晩 強い抗うつ薬と 強い睡眠薬を服薬して 就寝したものの 著しい
メンタル面での問題を抱えているにも関わらず どうにも気もちが 高揚してしまって なかなか 寝つく事が できなかった


わたしは 翌朝 訪問看護ステーションの所長宛てに メールを送ってみた



〈訪問看護ステーション

 所長 様



 いつも 大変 お世話になっております

 ところで どうしても ご相談したい事
 があるのですけれども〉  




1時間ほどして ノックを 強く 叩く音がした 訪問看護ステーションの所長が訪れた



「良かった・・・突然の 体調不良でなくて 安心しました」 



「心配おかけして 申し訳ありませんでした ところで 所長に 提案が あるのです

いつも 看護師さんたちには お世話になっていて ありがたい限りです

それなのに このような事を提案して 毎日 がんばっている 看護師さんたちには 大変申し訳ないとも思うのですが・・・



看護師さんの 訪問看護は 30分ですね 最初の15分間は 体温測定・血圧測定・脈拍測定ですね 残りの15分間は 健康相談や雑談となっています」



「そのような システムです」



「この後半の15分の内 5分を 希望する患者さんへの オプションとして
 「ディープ・キス」へと 充ててみるのです



昨日 訪問看護師さんに 脈拍測定をしていただいたとき 手を握ってもらいました そのとき 得も言われぬ 気もちが 湧き上がってきました 



就寝時間を過ぎても 

いつもなら メンタル面での著しい低下に 苦しむのですが 昨夜は とても 穏やかな気もちになって メンタル面での著しい低下が 収まったのです」 



「そうだったのですね」



「希望者する 患者さんには もう1つ オプションとして 訪問看護師さんを 「指名」できるというのは いかがでしょうか

断っておきますが このプランには 確かに「風俗的」な面はありますが これは 
あくまで「医療行為」として行なうものです」

「普通のキスでは ダメですか」 
「ディープが いいです」



「実際のところ わたしたちのビジネスとは「風俗経営」に属するものだとは 分かっているんです・・・

ですから 突然の 提案に すっかり驚いてしまいました・・・

ところで 「ディープ・キス」には 患者さんの 気もちとしては どれくらいの 金額を お考えですか?」 




(所長さんの ビジネス魂が 釣れたかな・・・) 




「税込み5000円です 看護師さんの「指名」をするときには プラス税込み1000円です 後腐れのない「医療行為」としての「ディープ・キス」は いかがでしょうか?

わたしには 既に 指名させてもらいたい 看護師さんが 3人います」



「・・・まあまあの 金額設定だとは思います しかし現在よりも 収益は上がるのだろうか ところで コロナ対策については どのように お考えですか?「ディープ・キス」は 濃厚接触の極みになると思いますが」



「コロナ感染を危惧する 訪問看護師さんには 大変申し訳ないですが 退社して
いただきます コロナ感染を危惧しない

若い看護師さんは オーディションで 積極的に 採用をしていきます



・・・もしも わたしが 指名させてもらいたい 3人の 看護師さんが 
辞めてしまったら 本当に 悲しいのですが」



「・・・患者さん 応募者はいると お感じですか」



「おそらく いま 生活に 困窮している 若い看護師さんたちは とても 多いのではないかと 想像しています・・・」



「患者さん とても メンタル面での著しい低下を抱えているようには見えないです」



「そうかも しれませんね けれども このような 対話も 既に わたしに とっては 大切な 「医療行為」と なっています



この提案は 訪問看護を受けている すべての精神疾患者にとって「救済」になると 思っています



何より わたしは この数年間 病気のため 「ディープ・キス」など 経験できては 
いませんから」



「・・・それでは よく考えさせてもらいましょう 患者さん もしも よろしければ 
わたしたちの ビジネス・パートナーになって もらえませんか 一緒に考えて
もらいたい事など 多くあります」



「はい いまは オリンピックなど 観ている場合ではないと 思うのです
この プランの方が よほど 「平和の祭典」になると思うのです」



「その通りかもしれません わたし 今日は これで 失礼します
これから 早速 訪問看護ステーションのリニューアルについて 検討に 入って
みなくてはなりません

何か ありましたら メールか スマホで 相談させてもらいます」



「もちろんです 新人看護師さんの オーディションを行なう際には 必ずわたしも同席させてください」



「あはははは・・・」

「あはははは・・・」




・・・・・・・・・・




「承知しました わたしたち これからは 手を取りあって がんばって いきましょう」



「はい がんばって いきましょう」

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です