光の果実

 

原田淳子

 
 

 

きみが知らない
きみを葬ったそのときのことを

雪で埋もれたきみの墓のまわりを
一羽の尾長が
真っ黒な尾を振りながら舞い降りた

手向けられた花は凍っていた

尾長の彼はわたしのそばから離れず
歩きながら剽軽に尾を振った
わたしは笑って
尾とともに頷き首を振った
それが大地を刻むリズムであることを
生きてる彼は彼の体積で示した
彼のやり方で

それが鈴懸の木の実を揺らす歌であったこと

それが愛おしい歌と似ていたこと

終わりに吹く風は
始まりの歌であったことを
きみの土に口づけで伝えよう

まいにち、砂を噛む思いだと、
いつかきみは囚われた家の窓から呟いた

毒を培養する壁を
わたしはなぜ焼かなかったのだろう

送受信が緻密に発達したこの家を
わたしはなぜ壊せなかったのだろう

毒を薬に換える手立てを
まだわたしは探している

きみに似て非なる近しい者たちが
鈴懸の実を揺らす
ここそこに

これが時間なんだね

水と
歌が流れる
誰もが光の子どもだったことの標に

貝は傷ついて真珠を生むのですって

その光の粒は
埋もれても
汚れることはないでしょう

ゆきたいのは 春のむこう
触れても壊れることのない あたたかさ

 

 

 

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