ヒヨコブタ
あの緑色のような明るい光が飛び交うのを
ぼんやり眺めていたころ
わたしはまだこどもだった
戦争体験を聴くことも多かったころだ
それでもいったい世界で何が起こっているのか
わからずにいた
緑のような光のもとでどのくらいの人が傷つけられているのかすらわからずにいた
戦争というのはいったい
侵略というのはいったい
人からあらゆるものを奪うことはいったい
わたしには一生解せぬ考えや行為
誰一人として死んでほしくないせめて今日だけは
子どもの頃からの祈りを
いつもこころに秘めているというのに
それは打ち砕かれ、嘲笑うように破壊されていく
傲慢な考えだと友がわたしにいったのは
当たっているかもしれない
子どもじみて上から目線だと
総てが大人になった人間の合理性からは
かけはなれているのだから
言われても泣くことしかできない
それでも下を向いて踏ん張っているじぶんがいる
戦争はだめだ
と思うとき
あの無言の背中を思い出す
あの人はその体験をなにも語らなかった
子どもである人達もなにも知らない
ただ、壮絶な死と隣り合わせだったろう
他の人を振り落としてでも還ってきたのだろう
あの人がいた国が、今侵略と攻撃のただなかにいる
わたしに何ができるだろうか
おこがましくていい
そう嗤うなら嗤えばいい
わたしの大事なこころは
悲しみにいつも寄り添うだけのゆとりを持っていたいんだ