百年後の.

 

原田淳子

 
 

 

四月
すみれ色の時刻

くぐもった声に似た宵
あの満月が身籠る

樹々に呑みこまれ
わたしは身籠られる
領土の争いから逃れて横たわる
荒地

記憶の断片に震え
涙すら石となる

クローゼットの奥に密やかに墓
そこが最期の家となろう

墓碑にあしらわれた羽根
林檎を配した
わたしの心臓とおなじ色の.
 

小石を置いてゆく

離れれば離れるほど
それが星座となるように
 

ー 百年後の荒地にて

 

 

 

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