「はなとゆめ」19 おびただしい死

 

 

灰色の

瞳をしていました
わたしの

祖母は灰色の瞳でみていました

いつも窓辺に着物でたって
みていました

窓辺から
みていました

過ぎていくもの
消えていくものの

山百合の

花の
暗い林の中の

しろく咲いて揺れていました
しろく咲いて揺れていました

灰色の
瞳でみていました

沖縄で死んだ息子や

近所のヒトや
親類のヒトや

あじあのヒトたちや

てんのうへいかばんざい
てんのうへいかばんざい

そう叫んだことや

窓辺から
みていました

窓辺から
みていました

死者たちをみていました

おびただしい死者たちが過ぎていくのをみていました
おびただしい死者たちが消えていくのをみていました

 

 

 

※この作品は以前「句楽詩区」で発表した作品の改訂版です。

 

 

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