滑稽な干物のダンス

 

村岡由梨

 
 

先日通りがかった上原小学校の前で
2匹のカエルが死んでいるのを見た。

2匹とも、車に轢かれたのだろう。
ぺしゃんこで、黒く干からびていて、
ベージュ色の手先足先の斑点と水かきだけは、
かろうじて確認することが出来た。
2匹は仰向けで、片手を繫いで
ダンスをしているみたいだった。
2匹はつがいだろうか。
春が来て、やっと地上に這い出て、
これからどこへ向かうつもりだったんだろう。
誰も気に留めない死。
一緒にいた野々歩さんと私は、どちらともなく
「こういう風に死ねたらいいね」
「死ぬ時は手を繋ごう」と悲しい約束をした。
明日こそは、私たち
ちゃんと生きようと誓い合って目を瞑るのに
後から後から涙が流れ落ちて、
眠れずに顔が粉々に壊れてしまう。
毎日を無為に生き、着々と死にゆく私たち。

それから暫くして、また上原小の前を通った。
2体あったカエルの亡骸の内、1匹がきれいに無くなっていた。
きっとカラスか何かに食べられてしまったのだろう。
それを見て「もう1匹の残った方の亡骸を口に入れて噛んだら、
どんな味がするだろう」と思ってツバが出た。
ツバが出た。
私たちは生きている。
死ぬ瞬間まで、生きている。

残った方のカエルは、ひとりでダンスしているみたいだった。
ただの気持ちの悪いカエルの亡骸なくせに、
誰にも気付かれず、意味もなく朽ちていくことに抵抗していた。
死ぬ瞬間まで生きていたんだと、全身で叫んでいた。

 

 

 

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