ひぐらし 硯に向かいて

 

みわ はるか

 
 

久しぶりに布団の上に寝転がっている。

ひぐらしの鳴き声がこれでもかというくらい聞こえる。

でもなぜか、全然耳障りではなくて心地いい。

短い一生を一生懸命生きている。

そんな人生も悪くないのではないかと思う。

蝉の本能はすごい。

 

法事があった。

ごくごくこぢんまりしたもの。

父親の兄弟夫婦のみ呼んだ。

久しぶりに会った叔父や叔母は老いていた。

元気に話してはいるけれど、年齢にはなかなか抵抗できないようだ。

腰にステロイド、お盆に膝のオペ、その後の長い安静期間を経てのリハビリ、糖尿病、肩の内視鏡オペ。

唯一元気な叔父のゴルフ話になんだか救われた。

仲のいい父の三兄弟。

家が近いためわりと行き来をしているようだ。

ほんと、魔法たるものがあったら、前みたいに若々しくしてあげたい。

もっともっとパワフルな叔父叔母であってほしい。

そんな叶わない夢を描いてしまう。

色んな、この先と言われるものを考えなければならない。

次もみんなそろって会いたい、会えると信じている。

信じることでなんとか今の現実を受け入れられたような気がした。

 

帰り際、以前よりよたよたと歩く姿に、ぐすんとなる心を落ち着かせ大きく手をふった。

どうか無理をしないで生活してね。

頼むよ。

 

ひぐらしは今日も大合唱している。

 

 

 

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