やぶ

 

塔島ひろみ

 
 

やぶには怖いものが棲んでいる
タヌキ という人
こじき という人
おばけ という人
私は
「インベーダーの秘密基地かも」
といってみた
かみ終わったガムをそこに捨てた
空缶や石ころを投げたりした
ガサゴソ 音がして
やぶが揺れて
声みたいな声じゃないみたいなのが 聞こえてきた
春には小さな黄色い花が咲き乱れた

鬼を殺して埋めた塚
いらないものはそこに捨てて
やばいものはそこに隠して
邪魔なものはそこに追いたて
やぶは鬼の棲みかとなり
葉が落ちた黒い木々の間で角が揺れる
私の犯罪を捨てた場所
掘り返してはだめな場所

きれいに整地された一丁目公園
サッカーをしている
黄色い花は咲かなくなった
探している
隠れる場所を探している
パパに向かってボールを蹴りながら
一生懸命探している
パパも探している ボールがそれて飛んでいく
しゃがんでいた私の頭にあたり、私はぬっと立ちあがる
子どもがおびえた

もうここに鬼はいない
もっと怖い人間がいるだけ

バウムクーヘン
その地層のような固まりを
薄く剥がしながら食べるのが好き
残酷に 薄く剥がしながら
食べるのが好き

 
 

(1月某日、奥戸一丁目鬼塚公園で)

 

 

 

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