道 ケージ
登戸から
多摩川を左に見ながら
土手を下る
自転車の
いつもの帰り道
東名下を抜けると
それはある
ずらりと並ぶ車
川は小さく左に蛇行する
対岸の駒大グラウンドのサーチライトが
川面にまぶしい
「金の家」
ふざけた名前のマンションの駐車場である
見下ろすせいだろうか
すべて後ろ向きのせい
うすきみわるい
ずらりと並ぶ蓋は
虐殺のあとのよう
白い車
灰色、黒
白いのが多い
トランクには
骨壺が一つずつ
収まっている
駐車場って変だよね
学生に言ってみる
キョトンとしている
駐車場は本当はお墓なんだよ
いないのにある
そこにはいないものがある
いることを示すいないもの
白いエレベーター塔は
大きすぎるスツーパのよう
多摩川に
Nのように入るなら
ここと決めた蛇行地点ではある
冷たいのは嫌だから夏がよい
お墓に行く
こちらは緑ヶ丘霊園
多摩丘陵の端
桜並木が悲しい
そこにはいないものがある
咲いていないからというわけではない
そこから
多摩川を見る
あまり光っていない
Nは繋ぎとめて
自らを
流れないようにした
註 Nとは西部邁氏のこと。Wikipediaにその自裁の詳細がある。