僕は寂しい

 

道 ケージ

 

僕はさびしいって
んっんっんっ
ぼくは寂しいって
んっんっ

繰り返す人
高田馬場で降りるまで
繰り返し繰り返し
僕はさびしいって

外回りして内回り
外と内を逆に
乗せてみる
(変わんねえな)

ラーメン屋の旗が色を失って
はためいてはためいて

訴えるでも
言い表すでもなく
いろんな人の前で
ぼくは寂しいって
んっんっ

まぁそういうことだよ
ささくれ顔で流す

まとも坂を下ると
虚ろ音に出くわす

「死んだ方がまし」と言われ
病院に行けよで
鏡、砕けた朝
でした

 

 

 

マーサ

 

道 ケージ

 

まあさまあまあだ
マーサまだだ
まっいいかまだいいか
待つよ待てよ
舞う前、魔王まさか
摩訶不思議
ママン膜巻く枕
魔剣曲げ巻け
誠、真菰、真琴、馬子マゴまことちゃん
まさかまさしまたか
魔性魔女真白
まずまずマッスルマスター
麻酔マスクまずいマスコット
ませガキ混ぜ
末席まそっとマゾ
またねまたかまたぐまた
待たせたなマタイ
マタギマタンキ又郎
マッチマチマチ待ちかねて町田
マッチョ街場の祭り間違い待って
末端真っ白抹消末梢
待てってマテウス待てない
まとめ纏まどかまとも
待とうまとめて窓からマンタ
学んだ真名序
真夏まなこ眼差し
マイナス間に合うマニ教
マニアマニキュアマニアック
間抜け免れ
マノン目の当たり
マッハマッハマルハ丸々
真昼麻痺マフラー
真冬マフィンマブダチ
眩しいまふまふ
目深真帆魔法
まほろば幻
ママンママ友ままごと
見えるまみれた真向かい
マキシム魔夢まむし
豆つぶ豆まき豆状
まもなく守る摩耗
摩耶馬屋マヤまやかし
眉繭黛眉毛まゆみ
マヨネーズ迷って真夜中真横
魔羅マラソンマラカスマニラ
鞠まりこ摩利支天
マリンマリアマリーマリーナマリコ
丸いマルコスマルサマルクス
丸天うどん丸美屋 
マルタまんまる漫画
まれにマレーまるまろまろん
周り回るまわしマンション
卍漫才万年饅じゅう
まんずまんずマンゴー 
マンタンマント満月
まんまでまんま満州
マンスリーマンキー曼陀羅万力満願
マンセーマンコー!

 

 

 

母体決裂

 

道 ケージ

 

母体の骨片が頭蓋の隙間に残るらしくそれが石灰沈着する。隆起した場合は角化。陥没した場合は脳を圧迫。脳溢血を誘発する。胎児の脳視床下部には恐竜期の角の神経系が見て取れるらしいがすぐに消失するので確かめる恩恵に浴したものはまだおらず、それを原発因とする説もあるが疑わしい。午後にツノが生えそうなので女医に相談する。教え子なので気さくに「痛かゆくてなんかある気がする」。なんとも言いようのない笑みで撫で回す。「まぁ一応、CT撮りましょう」。音無しの被爆か。「母体決裂症ですね。病名が定まるとあとは楽です。マニュアルが確立してます。手術もそう難しくはありませんし。ゴミ取るのと同じですから。癒着もないのが普通です。白く輝いているから見つけるのも簡単です。剥がして欲しいというように咲いています」。咲くは変だろう。「“ハナサケ”といいます。胎盤とは違うから」。また激烈な名前をつけたね。「どっちが? 話せば長いですよ。パルシファル建設は知ってますか?」 誰にもあんのかな。「男性に多いという統計はあります。母親と一緒にお風呂に入った人に有意な傾向があるという論文ありますが怪しいもんです」。間男に角が生えるというじゃんか。あれとは?「寝取られた方じゃないですか? コキュといいます。」おぉ、アンダルシアの闘牛。角あるものは殺されろと。「軒端で月を見ていた女が歌を詠みます。それを聞いた男は言いよる秋の萩」。あまりわからない。「芒が鬼の毛であることはご存知?」知らんな。すすきが原しがらみ果つる黒鹿の。数が多いな。「ため息の数です。だから垂れている。母との決裂に鬼が関わっていることは昔から知られています。探しあぐねた母側から見ても別離ですから。桜や梯子に登ります」。手術はいつ? 探しているわけでない。弱虫というより人でなしに角が生えるようです。

 

 

 

朝潮

 

道 ケージ

 
 

朝まだき
朝つゆ冷たく
朝ぼらけ
朝潮が死んだ

そんな電車道
突っ張っても
寄り切っても

腰割れの
北の海では
比喩は溺れる

花と山が多すぎる
生きる重みをためすぎて
椿の髷が口に入る

チチカカの塩は、体に悪い
取れないので肉をつかむ
比較的痛い

もうやめにしたい
誰も言えない

塩塩のパー
手をついた

 

 

 

覇業 破行

 

道 ケージ

 
 

はーい、はいはい、ハエ
はあ
はあはあ、恥

掃き溜め敗残張り倒す
博多波状攻撃
墓参りハブ吐く

ハマユウハレルヤ
はみ出しもの春晴々
針鳩羽衣配布
挟むハス端境花橋

長谷寺ハマスカ初日の出
波濤果てハラハラ時計
果たし状ハニカミ旗張り
「薄志弱行の美服かな」(日夏耿之介)

二十歳その髪はめ殺し
働きなさい埴谷蜂の巣
ハナタレ放ち花畑
鼻半分は羽生ハマス

ハーモニカ埴輪跳ね
羽田母はハチミツパイ
バネ白菜破棄
ハビタス榛名玻璃法被
はもはパルサーはらり

葉湯はよからハリセンボン
波浪ハレンチ
破裂ハレーション

ハローハロー、パウロ八卦よい
パワー、場を借りて
ハイ

 

 

 

母の習いごと

 

道 ケージ

 
 

門司の県営アパートでは
習い事はしていなかった
と思う
ペレスプラードを聞いたり

宗像に引っ越し
料理教室
変なおかずや
妙なお菓子が
小学校から帰ると
カゴ皿に並ぶ

箱入りがいいのにの
呟きを抑え

次はお謡いだったか
角の杉本さんちにいく
椿の垣根繁く
こけし飾る
お座敷で練習

黒地に金模様の謡本
表紙と草書に惹かれた

刺繍を始めたのはいつ頃か
すぐに
家の中が刺繍だらけ
丸枠のネジを締める係
トレペカバー
コースター
鳥と犬と花
物語はないの?

習字は大学に行った頃
父と二人暮らしのはず
段持ちで漢詩まで書く父に

草書でサラサラと
何を流した
東京への手紙は
読めない

短冊の月並み俳句
さくら、月、つつじ
花鳥風月を丸めて

父の死んだ後は
習い事はなかったのか
庭で菜園
野良猫に餌をやる

縁側から落ちもして
教えずに教えてきた

今、また教えるつもりなく教える
こうやって死んでいくんよって

曲がった指では
何も指させないけれど

 

 

 

なぎょう 無業

 

道 ケージ

 
 

なんだなんだ
なんなんだ
なめとんのか
と言われても
なんだかんだ
なじって慰め
なぁ

何ぬかす
なんぼのもんじゃ
萎えて
なお
なして
泣けて泣けて

中身なし
名古屋でなゐ
なずな納豆
納得の夏に
なでなで那智の波

NASAとNISAって何さ
鍋を菜穂子と
浪子の生ハム
茄子の菜のななふし
ウ.ナロード、ナメクジくん
勿来の関、何時?

二度とない
ニコニコニュース
ニアミスか
二位の兄さん
煮えきらない
匂い立つ
ニルバーナ
にんにく肉薄
にくにくしい如意棒
煮汁にんじんニ丁
西新の尼僧ニタリ
偽物にニスを塗る
日曜日に日課
ニッカ二杯
濁るニューカマー
にっとする仁王
ニーハオニャンコ二兎
肉まんにしんさい
ニヒリズムまで
二歩にじり
日本

ぬるぬる
抜きます
脱ぎます
主の抜け殻
ぬめりヌーボー
沼の主 
盗人猛々しく
抜かりない
ぬばたまの
ぬえ
糠ぬかづく
ヌー

ねやの猫
葱ねっとり  
ネジねじねじ
ねずみネットでねっとり
眠い捻転の年長
練り込んで寝静まり
粘土のネスコ
ネッシー熱波ネチネチ
ネスカフェ子の刻の根
練馬熱心に根付け
値の念書に年限
根津の姉さん寝巻きで寝坊
涅槃の寝息

野原の野中
伸びる伸びる
のび太飲んじゃう
軒先のノコギリ
のけものの獣
のずらのっこみ
野末陳平のしのし熨斗つけて
野りすのりすぎ
のりまき千兵衛の祝詞
野いちご飲んだ
飲んだら乗るな
呑気なノンちゃん
伸びやかな野茂
のほほんと乗る猪
のっそりノジマでノズル
農機の納期
ノンノノンノン剣呑
ノウゼンカツラ伸ばして
ノイマンにノー、ノー、ノー!

 

 

 

たぎょう

 

道 ケージ

 
 

         たいそう生きた
多々あって
祟りの末
他殺
         大したことはない
         他人の目なぞ
         樽に入らば同じ
でもね
たあたぁって
武士でもあるまい
筍切って何になる
         小さい小さい
         地上はあとわずか
黄昏るな
助けてと
血出して
知恵を出す
魑魅魍魎
         つまらん
         ついに逝く日
         鶴の喉鳴り
チティチティバンバン
チタン、爆裂の退走
畜生どもの
近い、くせえ息の間を
ちんたら蛇行
         体裁ばかり
         典型を拒み
         てんでダメ
ツェツェ病でたるい
次の池袋が他殺に見える
爪を噛み
妻殺しの秘策
         とうとう来た
         鳥辺山の煙
         時を隔て露と消える
対馬を
刀伊が襲う
たのしげな肉食い、犬食いの人
多殺凌辱の女真
突き刺しの
達人だらけ
ツングースに拉致
月は遠い

隆家、出る
つまらん
退屈な眼の病、将棋もさせず
太宰だってさ
大将の提灯は警固所にあり
太鼓叩いて
手づから切る
腸が出る
千代紙で拭く
朕は退屈なり

杖、トントン
天ちゃん、てんてん
頓馬、馬上にて、ちっ、と舌打ち
太陽と月
魂と体
陳腐な対なの
         たまさかの
         茶碗蒸し
         つれあいは
         亭主の死に賭け
         毒を盛る

 

 

 

さたん

 

道 ケージ

 
 

明治新政府の本質は江戸幕府と変わらず、内実は、 (個の尊重を旨とする) 近代なるものとは程遠かった。「五榜の掲示」では切支丹宗門禁制を布告。地方ではそのような中央政府を忖度し、キリシタンの摘発が始まる。長崎県五島列島では明治元年から上五島、下五島の各地で潜伏キリシタンに対し苛烈な弾圧が行われた。明治元年(一八六八年)、五島列島久賀島では潜伏キリシタン約二百人を捕縛。わずか六坪(十二畳)ほどの牢屋に乳飲み児から老人まで二百人が押し込められ、改宗を迫られ石抱きや水責めなどの拷問を受けた。この極小の糞尿まみれの牢で、四十二人が獄死(出牢後の死亡三名)。「牢屋の窄 殉教事件」(明治元年)である。

 

ささささ さささ
しのびより
外海<そとめ>
しず集落から

すーっ(姿なく)、すーっ(風?)
隣にさたん(意識なしに)
ジワンノ、ジワンナ
知らぬ名の
死後の石は重い

知らんのか
「さあね、そういうものゆえ」
さむい

足がつかない
さよなら
サンタマリア
ゼススは救わない

「生き血ば吸うげな」
咎める理由はよく知らぬ
さいていな奴

サルビアの花
こわごわ蜜を吸う
相槌にさたん
作り笑いにさたん

「踏み潰され
 煎餅のごつ平とうなったげな
 蠅たかり黒ゴマばまぶしたごたる」
 そげんね
 サタン嗟嘆

「広い狭いはわが胸にあるぞやなあ
 パライゾの寺にぞ参ろうやなあ
 あーしばた山 しばた山なあ
 涙の先にはなあ…」

生活にさたん
さたん飼いならし
誰が何するかわからんめぇも
血の聖牌にぎる

太古丸フェリーは
滑るように進む
島は明るい
さたん、笑う

 


    以下の著書等を参照した。一部引用もしている。

    1.世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」パンフレット
    2.森 禮子『五島崩れ』(主婦の友社、一九八〇)
    3.津山 千恵『日本キリシタン迫害史』(三一書房、一九九五年)

 

 

 

かだん

 

道 ケージ

 
 

かずかずの呵々大笑
かんかん照りのかめかめは
かぴかぴの湖面
かなかなの声
鎌とぐ鍛冶屋わきの
カンナ華麗で

キリン草
きちきちの岩壺
ぎすぎすの二人
きつきつのテント
キズなめキスぎみ
ぎりぎりの稜線

くりくりのぐりぐら
くちなしの花で
くよう、くもなく
ぐだぐだのくやみ
くすくす、くにゃくにゃ
虞美人草もくよくよ

けしの花
けへけへケロケロ
けっしてそんな
ケタケタ、ケラケラ
ゲジゲジが見える
げばげば、ケケケケ

こわごわ恋人占い
コスモスに託す
ことことこんにゃくを煮る人
こでまりの小道
これで終わり?
「こりごり、コストコの胡蝶蘭、送るわ」