かだん

 

道 ケージ

 
 

かずかずの呵々大笑
かんかん照りのかめかめは
かぴかぴの湖面
かなかなの声
鎌とぐ鍛冶屋わきの
カンナ華麗で

キリン草
きちきちの岩壺
ぎすぎすの二人
きつきつのテント
キズなめキスぎみ
ぎりぎりの稜線

くりくりのぐりぐら
くちなしの花で
くよう、くもなく
ぐだぐだのくやみ
くすくす、くにゃくにゃ
虞美人草もくよくよ

けしの花
けへけへケロケロ
けっしてそんな
ケタケタ、ケラケラ
ゲジゲジが見える
げばげば、ケケケケ

こわごわ恋人占い
コスモスに託す
ことことこんにゃくを煮る人
こでまりの小道
これで終わり?
「こりごり、コストコの胡蝶蘭、送るわ」

 

 

 

いちみり

 

道 ケージ

 
 

いちみり
あといちみり
風に消えるか
風を迎えるか

罪人になるか
罪人にするか

あといちみりは
耐えられない
耐えられる

起こってみないと
わからない
どこかで
音がする

バンジョーではない
祭りではない
何かが轢かれている
何度も何度も
細切れ
切り落とす

穴のような
寝床で
腐ったものを食べる
雑巾のようなものが放り込まれる

皿の破片がアヘンのように白い
指で拾う
どこに落とすか
マネスキンだよ

 

 

 

 

道 ケージ

 
 

しとしと
しをしを
しがしが
しへしへ

しんしん
しみじみ
しばしば
しずしず

しをうつ
しがうつ
しとうつ

しのーと
しのうつ
しるし

しおあじ
しみる
しあわせ
しかし
しらん

しきしる
しくしく
しのび
しのばれ
しれっと

しらんね
しろいと
しばし
しびれ
しばり

しか
しいか
しが
しずまる

しりあす
しりうす
しこしこ
しだしだ

しごとしろ
しまい
しょうちせん
しゃーしか
しろしか

しをうつ
しがうつ
しとうつ
しのう

しめを
しらん
しどけない

 

 

 

落ち着くんだ

 

道 ケージ

 
 

落ち着くんだ
空が青いぞ
空を見て
眩しそうな顔をすればよい

丹沢の稜線が見える
奥までよく見える

大丈夫、大丈夫
大丈夫、大丈夫
落ち着け落ち着け
生きていることに
さほど意味はない

可不可一条
ケンコーも言っとる
どうもこうもないから
ただ息をすればよい

それだけ

 

 

 

ヒポクラテスが出てこない

 

道 ケージ

 
 

 

あの、あれ
あれ、ヒポクラテスが出てこない

もうすぐ
全てを忘れる

忘れたくないことや
忘れたいことなど
忘れたことすら

壁の誓い
は読めない
少し習って忘れたから

糸文字と言うのよ
ヒスボラの君は
δデルタを
精子の囁きと呼んでいた

性は
忘れない装置よ
忘れても
残るでしょう

乳房を体にあて
その肩衝に
止まるζゼータ

σシグマの形で
λラムダが迎え
忘れ合う
咎め合う

あとかたもない
それ

ないのだから
なかったことになる

青い人だまが
ヒポポタマスで
覚えればいいじゃん

そういうことじゃない
髪を撫でるしかない
もう応えられなくなる

時間に遅れている
時に遅れて
いつも
何かを探している
何か忘れて

 

 

 

鳩尾マンバ

 

道 ケージ

 
 

あなたがこうなったのは
私のせいでもあるが

キモい、うるさい、しつこい
息のように繰り返す
バリバリマンバ
「この貧乏人が!」

子鹿のような
華奢なあの人はいない
まぁ、フサフサの凛々しい男も
いないのだけれど

救う術の
ハグしたら
鳩尾
うずくまり
トシャ、トシャ、トシャ

気がふれて
呟き続けている

ご飯作らなきゃいいんだ
掃除しなきゃいいんだ
期待しなけゃいいんだ
あー、作らなきゃよかった
あー、生まれなきゃよかった

何度も何度も
聞かされて

シャワーを止めにくる
水もったいない
お湯もったいないとガスを切る
カーテンをシャーッと
カッターで身を翻す
目が怖い

この頃、人を殺す夢を見る
やたら乱射するから
当たらない
そんなことにホッとして

風呂場に多くの人がいる
網戸のあたり
彫りが深いので見惚れる
なぜ君たちは
絵画から抜け出せたの

セスを求めて
ベランダで叫び
布団を飛ばす
色んなものが落ちていく
当たらなきゃいいが

植木に語る時
正気を取り戻す
「いい子ね」
水をやる手が優しい

朝寝すると起こされる
「なぜ休んでんだよ
 こっちゃぁ一生、安らげないんだよ」

妬む嫉む羨む
「なんで留学しなかったのかな
 留学してたら
 アンタと会わずにすんだ
 もう何で生きてるかわかんない」

人は人。生きたいように生きれば
「一ミリも喋らないで
 いいことなんてない
 死んでやる」

私のせいではあるのだが
互いに嘘に嘘を重ね
互いに狂いあう

帰ってくると舌打ち
お笑いでバカ笑い

キモい、うるさいを
息のように繰り出している

 

 

 

蚯蚓(みみず)

 

道 ケージ

 
 

アスファルトの空に
横切る
列なす彗星

多摩川土手の自転車道
月曜の炎暑の道に
身をジッと擦り付け
ひと刷毛の
尾を伸ばす

雨後の朝
蚯蚓たちは息継ぎに出て
白昼に干からび
踏まれ踏みつけられ
証しを地に残す

赤茶の沁みが
箒のような尾を引き
いくつもいくつも
点在している

垂れ糞とも螢火とも
脳漿と内臓が沁み入る
地の神の目ん玉として

夜空の彗星も
擦り付けているのだろうか
地の星の尾っぽは
執念、邪念とも呼ばれ
みっともないわけだが

あらゆる染みは死体である
あらゆる死体は作品である
どうすり込もうか
頭からおろす
足先から入れ込んで
脊髄を伸ばす

土を食(は)み沃土を放(ひ)る
蚯蚓
潜ることで残せたら
足先に垂線の涙を伸ばし
核を溶かし尾へ導く
茶色の体液の箒星よ

家族で関門トンネルを歩いた
隧道で蚯蚓になる
何を残したのか
空洞を走る空音(からおと)

また小田急と田都が蚯蚓であるのなら
不愉快な乗客はすべて土塊(つちくれ)の糞であり 
沃土である
 
新宿駅を下痢のように降りる
私たちは沃土である
擦り付けなくとも
すでに干からびつつ
潰されつつ
アスファルトを
擦過している

 

 

 

随分と殺してきたが

 

道 ケージ

 
 

いくら頼まれごととはいえ
確実な死をもたらすのは
それなりに大変で
気苦労も多い
 
体を鍛えても
役に立っているのやら
安全装置を外し
スコープ越しにとらえる
こめかみ
 
安全装置って
変なネーミングやなぁ
で、撃つ
 
何かがいつものように
飛び散る
銃身を少し撫で
ケースにしまう

ダケカンバの狂いもみぢ
ぬかるみの峠道
小鹿の目尻かわして
 
生きすぎた
ボートデッキで葉巻
南洋の素潜りはまだしも
北国の撃鉄は真に凍てつき
宇宙の弓引き、砂塵で仮眠
 
後ろに立ち
卒倒した者が
それを誇る始末
 
何度でも何度でも
撃ち撃つ、撃つ撃つ、うつうつ
強欲なバキシル、レメロン
生き難いぞ
ラム酒浴びて牛になる
尊勝陀羅尼
とそそめく

それを続けるのだ
もみあげはどうします?
あ、長めで

 

 

 

 

道 ケージ

 
 

草が昨日、獣の背のように揺れ
撫でてみようとすると
風は揺れ、揺れもどり 
緑の皮膚になる

翡翠竜の背中が
ああだった
羊歯の汁をしきりに啜っていた

水面へと続く草陰に何匹も潜む
草波の揺れ具合が違うからわかる
数えきれない程の数だ

あまりに遠いと近くに感じる
身近というのではない親しみ
抱え込まず
風が通る
風が揺らす

曼珠沙華の咲いた辺りに
今日は忘れ草が
一斉に赤橙している

まさかそんなことはあるまい
全ての彼岸は同一である
全ての過去は現在である

 

 

 

国より個

 

道 ケージ

 
 

ニク食べても
味がしない
ニク出来て
ニクに生まれ
ニク出て
コにくらしい

ニクは実在しない
ニクあると叫ぶ 輩は
ニクタイの変態

ニクはヒト使い悪く
ニクいらしい
ニクニクしい
ニクはニクを憎み
ニク滅ぼす
ニクイクサ
ニク戦に苦戦
ハジ
めからないって

ニンニク
ニンニク
だれかが算段をし
地図をみる
振込の確認

ニクのコ作り 奨励
コウメ
うんとウメコ
コつくり
コ増やせ
デカクなりたい
ニク
あぁ、際限ない
境界はないのに

間に合わない
イミン
コの弔鐘が鳴る
ナンミン
ナンマンダブ
イミン
逸民、常民、漂民
シニン
ヒニン
キミン

コハ怖いよ
クサイヨ
ニンニクの存続
ホイホイ行く人 、行かぬ人
石垣を積んで 分ける
このコのニク
このニクのコ
苦ニクのコ

コの管理、DX?
顔ないんで総番号化
取り締まる
にゅうかん
帰っていいよ
いていいよ
帰れよ
ヒトデナシ
ヒトデナイ
「まあ少し死ぬのはやむを得ん」
ニクのため

外人さんいらっしゃい
ヒトデナシのニクニクニ
コいないなら
連れてくる
で、また返す
連れてきて
また、収容
また、帰す
いつでも捨てる
428091744279292871

ない所に帰る
ないのに帰る
ないから帰る

 

   ※ すべては連動しています