たぎょう

 

道 ケージ

 
 

         たいそう生きた
多々あって
祟りの末
他殺
         大したことはない
         他人の目なぞ
         樽に入らば同じ
でもね
たあたぁって
武士でもあるまい
筍切って何になる
         小さい小さい
         地上はあとわずか
黄昏るな
助けてと
血出して
知恵を出す
魑魅魍魎
         つまらん
         ついに逝く日
         鶴の喉鳴り
チティチティバンバン
チタン、爆裂の退走
畜生どもの
近い、くせえ息の間を
ちんたら蛇行
         体裁ばかり
         典型を拒み
         てんでダメ
ツェツェ病でたるい
次の池袋が他殺に見える
爪を噛み
妻殺しの秘策
         とうとう来た
         鳥辺山の煙
         時を隔て露と消える
対馬を
刀伊が襲う
たのしげな肉食い、犬食いの人
多殺凌辱の女真
突き刺しの
達人だらけ
ツングースに拉致
月は遠い

隆家、出る
つまらん
退屈な眼の病、将棋もさせず
太宰だってさ
大将の提灯は警固所にあり
太鼓叩いて
手づから切る
腸が出る
千代紙で拭く
朕は退屈なり

杖、トントン
天ちゃん、てんてん
頓馬、馬上にて、ちっ、と舌打ち
太陽と月
魂と体
陳腐な対なの
         たまさかの
         茶碗蒸し
         つれあいは
         亭主の死に賭け
         毒を盛る

 

 

 

さたん

 

道 ケージ

 
 

明治新政府の本質は江戸幕府と変わらず、内実は、 (個の尊重を旨とする) 近代なるものとは程遠かった。「五榜の掲示」では切支丹宗門禁制を布告。地方ではそのような中央政府を忖度し、キリシタンの摘発が始まる。長崎県五島列島では明治元年から上五島、下五島の各地で潜伏キリシタンに対し苛烈な弾圧が行われた。明治元年(一八六八年)、五島列島久賀島では潜伏キリシタン約二百人を捕縛。わずか六坪(十二畳)ほどの牢屋に乳飲み児から老人まで二百人が押し込められ、改宗を迫られ石抱きや水責めなどの拷問を受けた。この極小の糞尿まみれの牢で、四十二人が獄死(出牢後の死亡三名)。「牢屋の窄 殉教事件」(明治元年)である。

 

ささささ さささ
しのびより
外海<そとめ>
しず集落から

すーっ(姿なく)、すーっ(風?)
隣にさたん(意識なしに)
ジワンノ、ジワンナ
知らぬ名の
死後の石は重い

知らんのか
「さあね、そういうものゆえ」
さむい

足がつかない
さよなら
サンタマリア
ゼススは救わない

「生き血ば吸うげな」
咎める理由はよく知らぬ
さいていな奴

サルビアの花
こわごわ蜜を吸う
相槌にさたん
作り笑いにさたん

「踏み潰され
 煎餅のごつ平とうなったげな
 蠅たかり黒ゴマばまぶしたごたる」
 そげんね
 サタン嗟嘆

「広い狭いはわが胸にあるぞやなあ
 パライゾの寺にぞ参ろうやなあ
 あーしばた山 しばた山なあ
 涙の先にはなあ…」

生活にさたん
さたん飼いならし
誰が何するかわからんめぇも
血の聖牌にぎる

太古丸フェリーは
滑るように進む
島は明るい
さたん、笑う

 


    以下の著書等を参照した。一部引用もしている。

    1.世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」パンフレット
    2.森 禮子『五島崩れ』(主婦の友社、一九八〇)
    3.津山 千恵『日本キリシタン迫害史』(三一書房、一九九五年)

 

 

 

かだん

 

道 ケージ

 
 

かずかずの呵々大笑
かんかん照りのかめかめは
かぴかぴの湖面
かなかなの声
鎌とぐ鍛冶屋わきの
カンナ華麗で

キリン草
きちきちの岩壺
ぎすぎすの二人
きつきつのテント
キズなめキスぎみ
ぎりぎりの稜線

くりくりのぐりぐら
くちなしの花で
くよう、くもなく
ぐだぐだのくやみ
くすくす、くにゃくにゃ
虞美人草もくよくよ

けしの花
けへけへケロケロ
けっしてそんな
ケタケタ、ケラケラ
ゲジゲジが見える
げばげば、ケケケケ

こわごわ恋人占い
コスモスに託す
ことことこんにゃくを煮る人
こでまりの小道
これで終わり?
「こりごり、コストコの胡蝶蘭、送るわ」

 

 

 

いちみり

 

道 ケージ

 
 

いちみり
あといちみり
風に消えるか
風を迎えるか

罪人になるか
罪人にするか

あといちみりは
耐えられない
耐えられる

起こってみないと
わからない
どこかで
音がする

バンジョーではない
祭りではない
何かが轢かれている
何度も何度も
細切れ
切り落とす

穴のような
寝床で
腐ったものを食べる
雑巾のようなものが放り込まれる

皿の破片がアヘンのように白い
指で拾う
どこに落とすか
マネスキンだよ

 

 

 

 

道 ケージ

 
 

しとしと
しをしを
しがしが
しへしへ

しんしん
しみじみ
しばしば
しずしず

しをうつ
しがうつ
しとうつ

しのーと
しのうつ
しるし

しおあじ
しみる
しあわせ
しかし
しらん

しきしる
しくしく
しのび
しのばれ
しれっと

しらんね
しろいと
しばし
しびれ
しばり

しか
しいか
しが
しずまる

しりあす
しりうす
しこしこ
しだしだ

しごとしろ
しまい
しょうちせん
しゃーしか
しろしか

しをうつ
しがうつ
しとうつ
しのう

しめを
しらん
しどけない

 

 

 

落ち着くんだ

 

道 ケージ

 
 

落ち着くんだ
空が青いぞ
空を見て
眩しそうな顔をすればよい

丹沢の稜線が見える
奥までよく見える

大丈夫、大丈夫
大丈夫、大丈夫
落ち着け落ち着け
生きていることに
さほど意味はない

可不可一条
ケンコーも言っとる
どうもこうもないから
ただ息をすればよい

それだけ

 

 

 

ヒポクラテスが出てこない

 

道 ケージ

 
 

 

あの、あれ
あれ、ヒポクラテスが出てこない

もうすぐ
全てを忘れる

忘れたくないことや
忘れたいことなど
忘れたことすら

壁の誓い
は読めない
少し習って忘れたから

糸文字と言うのよ
ヒスボラの君は
δデルタを
精子の囁きと呼んでいた

性は
忘れない装置よ
忘れても
残るでしょう

乳房を体にあて
その肩衝に
止まるζゼータ

σシグマの形で
λラムダが迎え
忘れ合う
咎め合う

あとかたもない
それ

ないのだから
なかったことになる

青い人だまが
ヒポポタマスで
覚えればいいじゃん

そういうことじゃない
髪を撫でるしかない
もう応えられなくなる

時間に遅れている
時に遅れて
いつも
何かを探している
何か忘れて

 

 

 

鳩尾マンバ

 

道 ケージ

 
 

あなたがこうなったのは
私のせいでもあるが

キモい、うるさい、しつこい
息のように繰り返す
バリバリマンバ
「この貧乏人が!」

子鹿のような
華奢なあの人はいない
まぁ、フサフサの凛々しい男も
いないのだけれど

救う術の
ハグしたら
鳩尾
うずくまり
トシャ、トシャ、トシャ

気がふれて
呟き続けている

ご飯作らなきゃいいんだ
掃除しなきゃいいんだ
期待しなけゃいいんだ
あー、作らなきゃよかった
あー、生まれなきゃよかった

何度も何度も
聞かされて

シャワーを止めにくる
水もったいない
お湯もったいないとガスを切る
カーテンをシャーッと
カッターで身を翻す
目が怖い

この頃、人を殺す夢を見る
やたら乱射するから
当たらない
そんなことにホッとして

風呂場に多くの人がいる
網戸のあたり
彫りが深いので見惚れる
なぜ君たちは
絵画から抜け出せたの

セスを求めて
ベランダで叫び
布団を飛ばす
色んなものが落ちていく
当たらなきゃいいが

植木に語る時
正気を取り戻す
「いい子ね」
水をやる手が優しい

朝寝すると起こされる
「なぜ休んでんだよ
 こっちゃぁ一生、安らげないんだよ」

妬む嫉む羨む
「なんで留学しなかったのかな
 留学してたら
 アンタと会わずにすんだ
 もう何で生きてるかわかんない」

人は人。生きたいように生きれば
「一ミリも喋らないで
 いいことなんてない
 死んでやる」

私のせいではあるのだが
互いに嘘に嘘を重ね
互いに狂いあう

帰ってくると舌打ち
お笑いでバカ笑い

キモい、うるさいを
息のように繰り出している

 

 

 

蚯蚓(みみず)

 

道 ケージ

 
 

アスファルトの空に
横切る
列なす彗星

多摩川土手の自転車道
月曜の炎暑の道に
身をジッと擦り付け
ひと刷毛の
尾を伸ばす

雨後の朝
蚯蚓たちは息継ぎに出て
白昼に干からび
踏まれ踏みつけられ
証しを地に残す

赤茶の沁みが
箒のような尾を引き
いくつもいくつも
点在している

垂れ糞とも螢火とも
脳漿と内臓が沁み入る
地の神の目ん玉として

夜空の彗星も
擦り付けているのだろうか
地の星の尾っぽは
執念、邪念とも呼ばれ
みっともないわけだが

あらゆる染みは死体である
あらゆる死体は作品である
どうすり込もうか
頭からおろす
足先から入れ込んで
脊髄を伸ばす

土を食(は)み沃土を放(ひ)る
蚯蚓
潜ることで残せたら
足先に垂線の涙を伸ばし
核を溶かし尾へ導く
茶色の体液の箒星よ

家族で関門トンネルを歩いた
隧道で蚯蚓になる
何を残したのか
空洞を走る空音(からおと)

また小田急と田都が蚯蚓であるのなら
不愉快な乗客はすべて土塊(つちくれ)の糞であり 
沃土である
 
新宿駅を下痢のように降りる
私たちは沃土である
擦り付けなくとも
すでに干からびつつ
潰されつつ
アスファルトを
擦過している

 

 

 

随分と殺してきたが

 

道 ケージ

 
 

いくら頼まれごととはいえ
確実な死をもたらすのは
それなりに大変で
気苦労も多い
 
体を鍛えても
役に立っているのやら
安全装置を外し
スコープ越しにとらえる
こめかみ
 
安全装置って
変なネーミングやなぁ
で、撃つ
 
何かがいつものように
飛び散る
銃身を少し撫で
ケースにしまう

ダケカンバの狂いもみぢ
ぬかるみの峠道
小鹿の目尻かわして
 
生きすぎた
ボートデッキで葉巻
南洋の素潜りはまだしも
北国の撃鉄は真に凍てつき
宇宙の弓引き、砂塵で仮眠
 
後ろに立ち
卒倒した者が
それを誇る始末
 
何度でも何度でも
撃ち撃つ、撃つ撃つ、うつうつ
強欲なバキシル、レメロン
生き難いぞ
ラム酒浴びて牛になる
尊勝陀羅尼
とそそめく

それを続けるのだ
もみあげはどうします?
あ、長めで