ひとひと

 

道 ケージ

 
 

多摩川の堤を
走る人、走らない人、寝転がる人がいる
私は自転車に乗る
間に合おうとする人

見送る母、 見送られる子
朝だからね
(見送る息子、見送られる母)
手をつなぐ、つながない、つなげない
上る人、下る人
さよならもいわず

紫の花、花咲かない草
花でもなく花でないわけでもない
鳥、鳴いて
どの鳥かわからない
撃つ人、撃たれる人
鳥刺す人、鳥焼いて、鳥食って
羽を抜くお湯を煮詰めて、見つめて

打ち明ける者、聞く人、黙る人
うつむく人 、空あおぐ人
黒い、白い、赤い、青い、黄色い
橋の上に旗のようなものが
にじんでいる

眼鏡めがね
眼鏡で見る
眼鏡をはずせば見える
眼鏡をかけると見えない

肛門を見せに行く
肛門を見る人がいる
問いを作る人、答える人
壇上から、見上げる人を見る

泳ぐ人、溺れる人
魚はなぜ冷たい水でも
人はなぜ冷たい水では

腐ったものを食べて
吐く
腐ったものを好む
虫になる
ナマでもなんでも

オレは飛ぶよ
で、落ちる
色々、様々、ちがうから
(タヨー)

そういうことじゃない
そんなことではない

ただただ
気持ち悪い

 

 

 

おい

 

道 ケージ

 
 

おいおい
泣いて
樽が軋む
おいおいおいおい
秋霜の鏡

そうなのだけれど
おい、おーい!
とおい、とぉーい人
おいおいと追いかけ
おいつかない
ヨシキリはどう鳴くの
黄色い帽子が浮き沈む

おいおい
疲れて
坂上で見上げた雲
おいおい探す
「優しくなりたい、強くなりたい」
って歌聞いた
えぃえぃ

うえてねじ食う
「ネジしかないからしょうがないでしょ」
でも、歯は欠け
ういうい、なんでもあり
おい、いいかげんにしろよ
「おいはやめて」
えいが飛んでいる
あいはない

うえうえ 
おいおい
おえおえ
あいうえおい
あいは
おいは

 

 

 

にくいため

 

道 ケージ

 
 

憎しみを煮詰めると悲しみができた
悲しみを蒸すと春雨だった
悔しみを茹で上げ筋を抜く
楽しみの唐揚げは二度揚げしない
慈しみを刻んで匂いをかぐ

そうめん
にくいためで一生を過ごす
からすみほうばり
きゅうときゅうっと
おにしめ
だきしめ
血抜き
ちんする
皮むいてむいて
むいてむいて
たるたる
ソース添え
そば
どん

 

 

 

ケラレタサ エス

 

道 ケージ

 
 

ボクけられた
それはボクでないけれど
ボクらしい

デカいブタが
いいかげんにして、ぶー!と
蹴ってきた

ボクじゃないけど
ボクらしい
なぜボクと気づくのか
ブタのくせにさ

ボクじゃないよ
でもボクかな
なぜオマエは気づくの
蹴るかブタ
ブタけったぶたけった

がはがは それエス
独り言だったようだ
ないないないって探してると
蹴られたさ
夜中にパノニカ探すな、マン!ってさ

 

 

 

へぬか

 

道 ケージ

 
 

火曜日
へぬかに行った
何もない
怒鳴り声だけが聞こえる
なれなかった者と
なりたかった者が
罵り合っている

へぬかには何もない
波も風もないから
週末夜明けのFM

廃園の教師が
倒れた鉢を直す
遠くで蹲る男
コンビニの袋を
追い回している

突然耳元でいわれるのだった
言い残すことはないか
ここで終わるとは思えませんが
おまえのきめることではない
丸まった姿をもとに戻すと
すでらかしたのだった

 

 

 

へきそ

 

道 ケージ

 
 

へきそですね
そう言われても
で、どれくらい
わかりません
何をすれば
鶏頭は鶏頭として
その皺を抱えますね
そこの障子に映りますね
牛が
殺されながら
尻尾を振るでしょう
へきそだからです
その紐をですね
ほとけにむすんで
ぶらぶらさせると
よいと言われています
聖福寺
家庭線を引き延ばして
爪弾くことは
やめだらに

 

 

 

月と沼

 

道 ケージ

 
 

沼に差し掛かると
そこへ入るのだった
抜き身は
紫の波紋濡れ
悔いを落とす

月影は伸び
這うように後退りしたのだった
茅で傷だらけになり
黄色い目でマンセー

岸辺ではなく
丸みから肌を知る
時と月(突起と突き)
殺後
笑う

 

 

 

あな

 

道 ケージ

 
 

こんなハムじゃない。こんなあじじゃ南蛮づけにもならない。あなに入って思う。少し飢えて少し痛い。お皿を返す。小さい扉の出し入れ。鉄柵を少し揺らす。赤錆のにおい。罪を考え星状の砂が舞う。酢飯の香りだが、回ってこないことはわかっている。眠れないのは起こされるから。タルズ・ブルースが聞こえ、床のビスケット屑。少しだけ寝る。どうせ起こされる。仕方なしにもう少し掘る。目地の割れ目に釘を指し、ささくれが啼く。免疫学の研究に従事シマシタ。ネズミ、蚤、蠅、蚊。ワレワレノ手ニヨッテ、証明サレタノデス。自慢です。モッタイナイデスカラニ。目地沿いに入る。うまく縮めて。切った方がいいのか。汁状にするか、捩り入れるか。蒸し返す。風は、風は。

 

 

 

なったらしく

 

道 ケージ

 
 

脱皮しようと
もがく
すでに手はなく
脱ぐのは苦労

体液がひどく臭い
うまく脱げない
また嫌われちまうな
「生理的に受け付けらんない」
アクアラングの脱ぐより
ツラい
脱いでも一緒

足は何やらバタフライぎみだが
すでに足なく
妙にばたつく
これ脱皮じゃないよ
呑まれる途中
もがき出てんのかも
まぁどっちも同じ
消化されたらそれになる

歯が当たって
シャーってうるさい

被ってなよ
借り物競走みたい
人殺しの顔して
手癖足癖が悪い
非道の言葉もシャーと同じよ

つけんだりや
殺めたりや
シャー、シャー、シャーって