稀人たちの止まり木で

 

小関千恵

 
 

彷徨うゆうれいだった
家を無くしたのか
またはそれを予てから持たないのか、
小さな止まり木を渡っている
そこで会う
この穴とは違う、未知の穴
この空洞とは別の象をした空洞
その空間こそ、きみの家と呼んでしまえるのかもしれない
故郷ように何度でも帰ってしまうその洞からの景色を
ほんの少し覗きあう
触れずに潜る途中で、そこから水が湧き出したなら
わたしは
その痛みを羨ましくも感じるのだった

暮らした家や故郷よりも、
郷愁を感じる絵や風景に出会ったりする
筆の動きが見えることが懐かしい
埋もれたいくらいに愛おしい
きっとただの運動だったところに生まれていた
「稀人たち」

わたしというゆうれいはいま、
過剰に伸びすぎた不毛な髪を天に掴まれぶら下がっているみたいだ
天だと感じているのは、雲かもしれない
ただ流動する小さな雲の何処かに引っかかっているだけかもしれない
宙吊りの脳を切り落とせないまま
地上から浮いた軀が揺れている
揺らしているのは
風か 心か
わたしを吊るした雲なのか
川、

きみから湧き出たあの水が川となって
足先に触れている日

 

 

 

 

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