花札

 

廿楽順治

 
 

知っているひとたちが
その夜ひそひそとあつまっていた

だれもがじっと
じぶんの手のうちがわをみている

誰ひとり
花も 動物も 月も
そろっていない

ぽっくり死んだり
まだ生きていたりしているが

もうやめましょうよ

という意味のことばを
みんなで思い出そうとしていた

顔の恥部は
深くつぶされたまま
(結局なにも裏返しなどはしなかった)

花も 動物も 月も
誰ひとりそろわないのに

夜が終わったかのように
みんなは
深く息を吸っていた

 

 

 

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