駿河昌樹
本を読むことや
なにか書きつけることについて
もっとも核心的なことを
たいていの人はわかっていない
文字は
否応なしに
人を無私にする
なにかを読んでいる人というのは
名前や履歴や肉体のある誰それではすでになく
読むということの発生場や瞬間でしかない
書いている人も同様で
おそろしいほど抽象的で
非物質的な現象そのものとなっている
文字をめぐる形而上的現象学こそ
まず考究されるべきで
いわゆる文芸的鑑賞や批評は
二の次三の次にされねばならない
文芸形而上学者の
モーリス・ブランショのような人が
いくらも必要とされる所以である