藤生すゆ葉
やさしい風が
わたしを追い越す
木々の香りと
足元をみると
小柄なヒメジョオンが見上げている
闇に照らされた 生があった
光が消えた街に音が灯り
鼓膜をくすぐる
通りすがりの黒猫
表情もほころんでいる
時を越して運ばれた線は
静かに弾け皮膚に温度をもたらす
わたしのあたたかさに気づかせる
目を開けると滲む輪郭
やわらかさを映す
一枚の透明
わたしの内側に遠くの温もりが響きだす
零れ落ちるくらいのそれは
なつかしい はじめまして
わたしのなかを広がり
ほのかな甘みを帯びて
音になる
あ
あ
あ
り
が
た
い
言葉
すべての景色に