雨夜

 

藤生すゆ葉

 
 

やさしい風が
わたしを追い越す
木々の香りと

足元をみると
小柄なヒメジョオンが見上げている

闇に照らされた 生があった

光が消えた街に音が灯り
鼓膜をくすぐる

通りすがりの黒猫
表情もほころんでいる

時を越して運ばれた線は
静かに弾け皮膚に温度をもたらす
わたしのあたたかさに気づかせる

目を開けると滲む輪郭
やわらかさを映す
一枚の透明

わたしの内側に遠くの温もりが響きだす

零れ落ちるくらいのそれは
なつかしい はじめまして

わたしのなかを広がり
ほのかな甘みを帯びて
音になる

      あ

            あ

        り

          が 

          た
 
 
            い

 
言葉

すべての景色に

 

 

 

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