工藤冬里
いっぽんの名前のない木が言語を拒否して立っていた
その果実は味覚による命名を拒否して生っているのだった
去らせることに関する愛の定義はJ-POPでは言語化が難しかった
一滴も残さずに絞り出しても名前のない木がある以上それは伝わらなかった
腑に落ちることが目的ではないからだ
混ざらないことが言葉のやくわりだった
一部は逃れ出て安全な場所に置かれる
自然な話し方という誇張で画像は編集され
肌色のマスクを通して
言葉を拒否した木の周りを役立つ言葉が回る
その木いがいのすべての形容詞が総動員される
命名できない果実があるということが他の全てを成り立たせているのだ
すべての朗読で言語が使用されるが
夕陽の丘に翼が舞い
ひかりの束の源は沈む太陽ではなく名前の無い実だ
進んで従うためにもその実が必要だ
拡声器を使ったり黙り込んだりしてみても味は分からない
分からない味をベタな声で語ることが敬意なのだ
名前のない果実のアルペジオを受け入れ、捨ててはならない
不可能の木の周りを決意が回る
家の中の型に囚われない石の壁がいい感じだ
言葉を短くすることで解決する時期もある
話題を出してもらったり男女の役割を変えたりするのも有効だ
いったん始まればたのしくなるのは木に名前がないからだ
そこではあるものをないと言うシュミレーショニズムを逆手に取ることも許されるだろう
岩盤を削る努力とは言い換えによる更新を続けることである
#poetry #rock musician