誰もいない

 

たいい りょう

 
 

誰もいない
町は 人ごみに
溢れているけれど

わたしのこころには
誰もいない

目に映る人びとや光景は
何もかもが 幻影で
捕まえることなど
できはしない

わたしのこころの深奥にある
悲しみは
誰も見向きもしなければ
外へと流れては ゆかない

わたしは ひとり
湿った陽光の照射する部屋で
メランコリーに潰されている

夜の月あかりは 寂寥に深い傷を
舐めまわす

そして
何ひとつ
わたしは 過去の痛みを
思い出せない

 

 

 

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