燈明

 

たいい りょう

 
 

生者が 死者へと
変貌し
彼岸へと赴くとき
残されし者は
死者の足下に
燈明を手向ける

盲目の死者たちは
微かな光を頼りに
無限の世界へと
渡ってゆく

瞼を焦がす
ような
彼岸の灯りは
未だ死者のもとには
届いていない

長い長い 道程を
経て
死者は 大いなる光を
身に纏う

その時 生者は 死者との
再会を果たす

 

 

 

生と死
二つの世界

 

たいい りょう

 
 

私は 生きているのか
私は 死んでいるのか

生者と死者が
入り交じる世界

夢なのか
現なのか

私は黄泉の世界を
さ迷った

そこには
父がいた
母がいた

私の意識は
朦朧とした

私は死を覚えた
私は死に憧れた

長い長い時間をかけて
生の世界に立ち返った

生と死
二つの世界
それは同じ時空間にあった

 

 

 

あの子

 

たいい りょう

 
 

二階建ての家
一階はブティック
二階は寝室

あの子が
また私の前に現れた

元気に飛び跳ねる
女の子
まるでバレリーナ

「ここはね 悠希お兄ちゃんと
   恋人が寝る場所なんだよ」
と私に快活に話した

私は寝ていた
肩を叩かれた

肩を叩いたのは
あの子
それとも
昨日の妖精

「私には娘がいた」
とそう叫んで

私は目を覚ました

 

 

 

明日

 

たいい りょう

 
 

明日は 来るのか
今日は いなくなったか
昨日は まだいるか

記憶は はるか地中の彼方に
埋もれた

深く深く
どこまでもどこまでも遠く
記憶は私を未来へと
連れ去った

真っ白なキャンバスは
無限の色彩がうごめいている

何も覚えてはいない
すべて身体に刻まれている

その刻印は 明日に向かって
地平線を滑り出した

明日は 来たのか
昨日は 来るのか

 

 

 

浅い眠り

 

たいい りょう

 
 

そこは
かつての
私の記憶

生命の持続が
記憶に刻み込まれた

脳を超越し
身体を離脱し
記憶は浅い眠りに
浸り続けた

モノクロの記憶は
過去から現在を経て
未来へと続く架橋

浅い眠り
身体のこわばりは
私の記憶を抑制した

 

 

 

笑顔

 

たいい りょう

 
 

あの子は
夢の中にいた

美しい容姿のまま
涼しげな眼差し

そっと笑顔で
語りかけた
    「お父さん」と

私は沈黙のまま
微笑み返した

あの子は
生きていた
私の中に
生きていた

これからも
生き続ける

穏やかな微笑みを
私にくれながら