長屋正月

 

廿楽順治

 
 

なんどだって
われわれは丸くあつまってしまうのだ

(うたをうたいだすやつもいて)

泣いている船長の老人
それがどうやらみんなの親らしい

ぼくは中上健次の『岬』を読んでいるんです

とつぜんへんなことをいう少年
麩菓子の箱が積まれてある部屋であった

ののしりあう発音が
どれも水のなかでのようにくぐもっている

(どうしてそこにケロヨンがいるのだろう)

死んでうすくなったその丸に
こんどはわたしがすわって

あきることなく
さむい夜に出る船の話をくりかえす

 

 

 

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