塔島ひろみ
うしろに大きな川がある
大きなモノたちが流れている
町を貫いて 幅をきかして流れる ニンゲンがつくった川のふちに
取り囲んで あしげにして
追いつめていく
なにも悪くない彼を 白いへびを
逃げ場のない場所に追い込んで
執拗にいじめる
巨大なモノらは猛烈なスピード 轟音をとどろかせ
耳がおかしくなってしまいそう
頭がこわれてしまいそう
胸がつぶれてしまいそう
おそろしくて くやしくてしょうがなくて
彼を打つのだ
抵抗しようのない 弱い(そうに見える)へびを
バシンバシン 打っても打っても川の音にかき消されるからより強く 激しく 大勢で打つ
血が出ている 舌を出している
ニンゲンの川に近付いちゃいけない
あのモノにはみんなニンゲンが入ってて
流れの先は海じゃない
ニンゲンがいっぱい集まって
殺してるんだ
ニンゲンがニンゲンを 殺してるんだ
巻き込まれたらうちら ひとたまりもない
白へびは痛そうで かわいそうで みじめで
うごかなかったけど生きていた
目をとじていたけど 聞いていた
その小さな耳に口を近づけ
うちらには ニンゲンさまがついてんだい!
と私はわめいた
へびは少しピクピクとする
おれらには ニンゲンさまがついてんだぞい!
仲間も叫んだ
川ができるまえは 向こうに行けたよ
ちょっと行くと海があって空があって およいだり とんだり いろんなのがいる
2階のベランダでキツネが洗濯物を干している
キツネは太陽を探していた
(篠崎2、京葉道路そばで)