この口

 

廿楽順治

 
 

手を洗わないでめしを喰っています

わたしは誰かと聞くな
この口に入ったものは真理

喰ったあとの声がおそろしいので
落ちたパンもたべる
その信仰は見あげたものである

父母のしつけは忘れた
死んだのはよくおぼえているが
生きたことは思い出せない

だから手を洗わない
理由は音をたてない

この口からでるものは
きたない影

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です