炭をつぐ

 

駿河昌樹

 
 

佐藤佐太郎の
第一歌集『軽風』に

炭つげば木の葉けぶりてゐたりけりうら寒くして今日も暮れつる *

とある

「うら寒くして今日も暮れつる」
から
なんと近代は
逃げ遠ざかろうと
して
きたことか

逃げたところで
「うら寒くして今日も暮れつる」

どこまでも追ってくる
どこにでも現われる

佐藤佐太郎の主張した
純粋短歌
とは
なんだったか?

「うら寒くして今日も暮れつる」
から
逃げないことか

思われる

この世の
ひたすらな
うら寒さ
すべてのものの
暮れゆくさま

そのなかにい続けて
ただ
炭をつぐ

炭をつぐ

 

 

* 大正15年作

 

 

 

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