穴出し蜥蜴 誰ぞに呼ばれん

 

一条美由紀

 
 


夜明けと共に勘違いした幸福感は剥がれて
人 イコール 一人 とメモる
毎回同じことを繰り返し
やっと他人との距離感を確定する
頭上ではハッピー、ハッピー
と鳥が鳴く

 


誰も住まなくなった家の床が
揺れるボートのようにぐにゃりと沈む
散らかった家は惨めな痕跡となる
立ち止まる風と時間だけがその営みを覚えてる
やがて記憶は薄れて霧と漂う
いつか全てを忘れて空からこの地を見た時、
私は泣くだろう、意味もわからずに。

 


俺が死んだら猫飼うの?
君が先に死んだらホームに行くよ。
どちらか一人になったら寂しいな。
お互い何とか長生きしようね。

 

 

 

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