とがりんぼう、ウフフっちゃ。

 

南 椌椌

 
 


© kuukuu

 

先週、吉祥寺のはずれ
「ギャラリー ナベサン」で
詩書出版の「書肆山田の本」という
展示会が開かれていた
編集・装幀で素晴らしい本作りをされていた
「書肆山田」の社主・鈴木一民さんの奥様
大泉史世さんが昨年お亡くなりになって以来
新しい詩集の出版をされていなかった

遺された詩集のなかから
一民さんが、どのくらいあったろうか
多くの美本・稀覯本を搬入されて
美しく陳列、即売されていたのだった

僕は一民さんと、飲みながら
詩集だしたいね
という話をなんどかして
けっきょく、できずじまいだった
なんか愚図愚図してしまったのだ

1980年、池袋の詩書店で買った
吉岡実『ポール・クレイの食卓』
小さな赤い函に入ったフランス装の詩集
表紙には片山健さんの鉛筆画が添えられている
大好きなおふたりによる
『ポール・クレイの食卓』
それ以前から、吉岡実さんの詩集は
何冊も愛読してきたが
この一冊はとりわけ大事な本だ

吉岡さんとは渋谷の百軒店の喫茶店で
お会いしたこともあった
詩の話はしたかなあ
舞踏のはなしを沢山したのだった

10日日曜日、展示最終日になって
一民さんが持ってこられた
鈴木志郎康さんの
『とがりんぼう、ウフフっちゃ。』が
書肆山田の本を買う、ラストになった
『とがりんぼう、ウフフっちゃ。』
なんともなんとも 愛らしい
こんなにすばらしくて いいのか!
80歳を過ぎて志郎康さんが
ピカピカの一年生のような
やさしくておちゃめで 
深い詩集を遺された

「浜風文庫」のさとう三千魚さんのことも
なんども出てきます

帰り道の自転車が
ウフフっちゃ、にこにこしてた

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です