役者の恋

 

長谷川哲士

 
 

紙で作った靴穿かされて
車に無理矢理乗せられて
ドライヴドライヴハイスピード
紙の靴なんて牛乳パック改造よ
臭くてぬるぬる
奴は此処で降りて歩いて行けと
言い腐った深夜のウォーキング
どこかで肉を焼いてる匂いがするよ
どうやって歩けと
行く先は何処なのだ苦しみはとこしえか
破れた靴で歩いて行く
ずるずる足の裏まですぐそこだ
底が消失した靴で荊道なんざ歩けませんよ
おい何とかしろよ
噛みつき不倫で悪いか俺名役者だぞ
あなたに恋をしただけだ
会社まで辞める必要はないよ
もう何年続いたのかな
お前熟女キャバクラで働くまでになり
俺は国宝役者のままフカッとした絨毯の上
ふらり六方踏むだけよンベンベンベンベンベンベンンッ
ぅよおおおおおっ
道ならぬ恋なんて有る筈も無くなんて勘違い
意識は飛ばされ未完の渦巻き星雲に
チューッと吸い取られ
僕俺儂と出世魚の如く一人称を変容させて
挙句の果てには儂から鷲への突発変容
遠くの空越え突き抜けて高速最高速最々高速
摩擦熱摩擦熱熱いよう
発火しながら飛行する鷲
入れ物の無い意識は笑いながら鷲と合一しようと
速く速く燃える飛ぶ追い越し合うふたつ
塵芥に成っても成りたくなってもどっちゃでもいい
とにかく行く
宇宙が見える
目ん玉の風景
両手の小指のみ震えているぷるぷる

 

 

 

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