おとうと

 

廿楽順治

 
 

おとうとをまもれなかった

それだけを
根にもって

わたしの父親は生きてきたらしい
(そうだ、おまえがいけなかったのだ)

おとうとの
傷ついたくちびるの

あの血はいつまでもかわかない
それがにくたらしい

老いてから
大学ノートにそのことを書いた

死ぬまぎわまで
おとうとには会おうとしなかった

わたしたちの夢の土地は
ときとして

そのような
遠いおとうとで濡れている

 

 

 

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