胸の日

 

廿楽順治

 
 

子どものふくらんだ胸が
空のむこうへ ひらかれていく

その町でわたしたちは
六十年あまりを暮らしていました

ももいろのスーパーがあり
扉の影は いつもこわれていた

おおきな冷凍庫から よたよたやってくる
わたしたちの子どもそっくりの鳥

仕方なく
胸は ふくらんでしまったのでしょう

ひらいた空へ
わたしたちはぼろぼろの機影のように

(入っていく)

けれども ふるい
じぶんの爆音のほかはきこえてこない

 

 

 

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