佐々木 眞
極楽の昼下がり、お釈迦様は長い、長いお昼寝から覚めて、遥か下方の地上を眺めていると、おりしもハロウィンで賑わう、渋谷のスクランブル交差点が見えました。
と、ふとあることを思いついたお釈迦様は、女郎蜘蛛の杜子春を呼びました。
「これ杜子春や、あのスクランブル交差点全体を覆うような、大きな、大きな巣をかけなさい」
「はい」
と答えた杜子春が、お釈迦様の仰せの通りに、天上から大きな、大きな蜘蛛の巣をふんわりと投げかけましたが、せわしなく交差点を行き来する人々の目には、もちろん見えません。
さうして、この見えない蜘蛛の巣のベールの下を通る人は、男も、女も、男でも女でもない人たちも、大人も、子供も、みんな揃って尻子玉を引っこ抜かれてしまいました。
とさ。