アタミ

 

廿楽順治

 
 

町の
左はんぶんは死んでいた

あたらしいパン屋があり
となりに葬儀屋がある

人影は 建物のさかい目で
足が切れていた

(寝返った将軍のように)

髭をはやした花屋の主人が
店員と仕入れのことを熱くはなしていた

その顔のはんぶんは
もう なくなっていて

くらすことが
どこか遠くでたたかうことのようだ

(けっして思い出されない空)

わたしたち家族は
その左側の川をわたろうとして

まだわたれない

 

 

 

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