豪奢・静寂・逸楽

 

加藤 閑

 
 

夏色に豪奢を呼ぶ歯生え揃ふ

光舞ふ花鳥を描き纏ふかな

生毛はや薔薇に染まりて懶惰

手のなかで羽化する揚羽愛を告げ

雷鳴秘めし空は女友達の色

熱風にしばし盲目太古の戈

金の雲無人の船のマスト灼く

オパールの裸体いづみに沈めゆく

信仰の茎剝いでゆく夏星座

白はすにカロンの櫂のしづけさよ

峰雲は静寂に立ち海に落つ

驟雨去り智慧の実熟す領土かな

恋人ら合歓ひらく音に息を吞む

液体に玉蟲と寝て溶ける夢

言葉なきエピキュリアンに夏日射し

逸楽の演技者たらんと蛇殺す

逸楽に眼射られ舌抜かれ晩夏

ゆふやけにキャラバンを組む贋天使

憑代としていかづちに撃たれけり

いちじゆくの割れて喜悦の落暉かな

 

 

 

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