帽子

 

塔島ひろみ

 
 

黄色い帽子たちが迫ってくる
背の順にならんで石をけり 傘をふりまわし
ゴミを蹴散らし 捨て猫を踏み
竹をなぎたおし 看板をぶっとばし
おならをし
通り過ぎていった橋のたもとに
交通誘導員の死骸がある
大きな穴があいていた
私は うっすら見える山を見ていた
土手の向こうに
京成が走る
黄色い帽子たちは何しろこれから
戦争にいくのだ
零戦に乗るのだ
一番背が低い帽子の
背中だけ見え
それから吸い込まれるみたいに
見えなくなった

 

 

 

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