鋭角って言葉から始まって身体を通り越してしまった

 

鈴木志郎康

 

 

鋭角って言えば、
先が鋭い刃物。
で、身体を刺せば、
血が出るね。
そして、出血多量なら死ぬね。
でも、
木を削ると、
温かみが生まれる。
曲面が温かみを生むんだね。
曲面を削り出す手を持つ人、
鋭角を持って温かみを生み出す人、
わたしは、
そんな手を持つ人じゃなかったなあ。

ん、でね。
わたしはね、
今年になって、
一月の末から二月の末に、
三度、慶應大学付属病院の救急外来に運ばれたんだ。
一度はタクシーで、二度は救急車で、
頭痛と顔の強ばり、烈しい嘔吐の感じ、そして痰が絡んでの呼吸困難。
救急車の中で過呼吸になり手先が痺れ、
「ゆっくり深く呼吸して」って言われた。
救急外来の診察じゃ、
採血して、CT撮って、レントゲン撮って、
別に異常ない、
と薬を吸入して痰を吐いて
家に戻った。
そして、町内の小林医院にいって
吸入の薬を処方して貰って、
家で、まあ、なんとかFBに投稿はしたが、
その直後、
玄関の段差で仰向け転倒しちゃった。
麻理ひとりじゃ起きあがらせることができないで、
丁度来ていた電気工事の人に起こして貰い、
ベッドに運んで貰ったわけ。
麻理いわく。
仰向けなった蝦蟇ガエルみたいだったってね。
10日経っても左の胸を痛めてまだ痛い。

発作っていうのはね。
頭痛と顔の強ばりは朝の六時、
烈しい嘔吐の感じは夜中の三時、
呼吸困難は夜中の二時、
夜中から朝に掛けて、
気持ちが悪くなったり、
息苦しくなったり、
それは三月になった今でも続いている。
近く小林医院で処方して貰った
吐き気止めの薬と吸入の薬で
何とか時を過ごしている。
昨年の七月から服用している
前立腺癌の新薬のパンフを見たら、
どうも、その副作用じゃないかと、
当てずっぽうに思ってる。
だが、担当医はそんなことはないと言ってる。

ぐだぐだ書いたけど、
書いてもしょうもないことですね。
身体って、
当人だけものなんだからね。
病のことを言葉にすると、
「お大事に」
と、言葉が返ってくる。
当人じゃないからどうしようもないものね。
でも、そこで、
身体が当人だけものでもなくなってくるんだ。
つまり、その先の身体の消失ってこと。
そこに、
名前と言葉と写真とか、
身体無き存在が残ってくる。
また記憶の中の存在になる。

家の中で、
麻理がいると、
麻理の身体が
なんやかんや
動いているのを感じて、
安心しているけど、
彼女が外出してしまって、
いなくなると、
急に、
寂しさが襲ってくるんですね。
身体の存在って、
そういうもんなんですね。
その存在が温かみってことかな。

 

 

 

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