※2014年10月末から2015年3月までの渡辺洋さんのツイート、FBポストの一部です。
渡辺 洋
12月13日
妻娘にiPadを買ってもらって、 病室から発信テスト中.。
入院前に、転移してできた脳腫瘍を別の病院で焼ききり(4本で4時間)、12 月1日に 入院したとき、直前のPET検査では、癌は肺と十二指腸(2か所)で、まず歩けなくなるほどの貧血に輸血しながら、とにかく困難な十二指腸を先に切除し内出血を止めようと打ち合わせしていた。
胃と十二指腸の内視鏡を撮ったところ、出血がすごく、その日(金曜日)から食事止め。明けて8日の月曜から腸が痛み出す。もともと肺が出発点で呼吸器で入院したのだが、打ち合わせをしていた消化器の医師たちが飛んできて、レントゲン、夜には水分も止められて、鼻から胃の中身を吸い出すチューブ。
火曜日、これは今まで見つかっていなかった小腸ガンだということになり、夕方から手術5時間。泰子とは少し話すが、後は昏睡。翌日聞いたら、大腸ガンと後から見つかった出血の中心だと思われる十二指腸のガンひとつを切除したとのこと。今日はここまで。おやすみ。
12月14日
便、開通。1, 2時間ごとに、しばしゆるゆるでトイレに走ることになりそう。尿の管をおととい抜いて、昨日もおとといも「間に合わなかった」ことが(笑)。
ボランティア学生に救われたホームレスのおっさんにしか見えない父娘。 (写真)
ゆうべ一箇所「小腸」を「大腸」と書き間違い。
来てくれた妻とFaceTimeで無料テレビ電話。病室で^_^
五時頃、鈴木一民さんが来てくれる。関西営業から帰ったばかりとか。あらためてこちらの経過を説明し、後は岩田さんの話や、周囲のガンにかかった人の話など。
ヴァイタル(体温、血圧、酸素)、レントゲン(こんなにたくさんとっていいの?)、問診、排泄の繰り返し。12月も半分。あ、採血も1日おきくらい。
12月15日
ex-S堂のすでに退職された大先輩2人が来てくれる。あれこれ話して一時間半。おみやげが折口全集2冊(元本)。これは病室で読むには、モノとして重すぎるんじゃない?
入院してから読んだ本。N.ギンズブルグ『マンゾーニ家の人々(上)』、伊藤計劃『虐殺器官』、富岡多恵子(再話)『近松名作集』、カルヴィーノ『まっぷたつの子爵』。今読んでいるのは『新選 岩田宏詩集』巻末の散文と解説、パヴェーゼ『月と篝火』。
12月16日
治療のフェイズが変わって身体がついていけない、1, 2日毎に悪夢。ふーっ。トイレがやたら近くてそのたびに点滴の電源を抜くのがちょっとうんざり。
12月17日
窓際のベッドに移してもらえた。 (写真)
午後、ex-青土社/河出(現在は病室から場所の見えるM)のSくんと、ex-新宿書房のMくんが来てくれる。これからどんな経済で生きていくかとか、Mくんのわがままな感じが面白い。
週1, 2回来てくれる若者。「話すこと、あんまりないね」 (写真)
富士、iPadでなんとかかすかに。
右の方。 (写真)
12月19日
パヴェーゼさんの『月と篝火』読了。捨て子である主人公が孤児養育の補助金目当てに貧しい農家の下働きとして買われ、苦労を重ねたのちにアメリカに脱出し、財をなしてイタリアに戻ってくるが、葡萄などの農村の貧しさは変わらず、ファッショとパルチザンとして戦った人々もお金と宗教に回帰している。
主人公の神話のような遍歴、ファッショとパルチザンとの二重スパイとして殺される、元の雇い主の娘。イタリアの映画美しく切り取られそうな風景を背景にえがかれる物語はどこか淡く苦い。そしてこの小説を書いて作者は自殺した。
12月22日
あれこれの意表を付く速い展開に気持ちを整理できない状況。今週末くらいには書けるかな?
12月25日
小腸ガンの手術後の養生も終息に向かい、本当ならぼちぼち退院になりそうなところ、先週なかばから左脚が動かず、立てず、歩けず、踏ん張れず、で調べたところ、脳への転移がまた進んでいるとのことで、今日から放射線の全脳照射。2週間くらい、年越しで。いやはや、やれやれです。転移と治療のいたちごっこにならないといいけど。
みなさん、ありがとうございます。ガン患者としてできるのは落ち込まないでいることだけかもしれません。
医学とくに外科が進んでいるとはよく聞きますね。でも、ぼくの十二指腸のガンの予定される術式を、先日、ドクターXが「悪いとこだけ切りゃいいじゃん」と、あっさり5分くらいで処置して否定してしまったのには唖然としました^_^
左手も若干不自由になって来ました。進行と治療の追っ掛けっこです。二日がかりで入力しやすい体勢を摸索^_^
Sくん、来れば会えるよ。正月でも。
病院の方で、今年と去年の健康診断の記録や写真を 取り寄せたところ、これで見逃すのは仕方ないとのこと。恐ろしい肺ガンのスピード。
全脳照射でびゅー。初回の準備は長く照射はあっという間。
ナイフは見送りです。
これから成長しそうな小さな腫瘍が多そうなのでナイフでは無理という判断