今井義行
太陽は見ていた───わたしは 夢の夢の夢で
こおりやの縁に腰をかけ練乳のしるをぽたぽたと垂らしていた
とてもまばゆい その日には
喪服の似合うおんなが露地をとおりすぎていって
喪服のしたには 赤ん坊をはぐくむ
しろい乳首が とがっているだろうとおもった
(だれの火葬があったのかしら)
わたしは52歳になりました いてもたってもいられない精液はすずらん
姿見のない部屋には手鏡を買って帰った
「帰省しなくていい あたしの
しごとは もうおわっているの」
BE MY BABY (BE MY LITTLE BABY)
わたしのかあちゃんはわたしのあかちゃん
のぞいた手鏡のなかに・・・・・・こづくえをひらいて
あさぬのに いのりの品目のさらだ
を ならべた ひじきは黑い
のぞいた手鏡のなかに 亀戸天神のおふだ
亀戸天神さま 亀戸天神さま 亀戸天神さま
のぞいた手鏡のなかに、おれだけのはまぐり
BE MY BABY (BE MY LITTLE BABY)
わたしのかあちゃんはわたしのあかちゃん
何もしらない赤ちゃん 東京発の東海道線
透きとおるようなすなはま はだしになってはしりたくて
そうおもったら もうはだしでした
波に打ちあげられた貝殻ひろい BE MY BABY
ほねやかわなどすくいあげては BE MY BABY
わたしのかあちゃんは わたしのあかちゃん
こころおきなく わたしにだかれてほしいのだ
よだれたらしてほしいのだ じゃあじゃあー
ないてほしいのだ 初めて会ったわたしの頬へ
破れてしまった睾丸のような狂おしい太陽は
見ていた───わたし の
BE MY BABY (BE MY LITTLE BABY)
BE MY BABY (BE MY LITTLE BABY)
亀戸天神さま 亀戸天神さま 亀戸天神さま
のぞいた手鏡のなかに、おれだけのはまぐり
シャララララ シャララララ・・・・・・
うみかぜにそってあるいていたとき
波に打ちあげられた濃いあおのおんなの肩ひもは、ことだま