佐々木 眞
「お父さん、虫歯の英語ってなあに?
「虫歯、虫歯の英語かあ、バッド・トゥースかな」
「バッドトース」
「そうじゃないよ。バッド・トゥース」
「バッド・トース」
「お母さん、よろしくお伝えください、ってなに?」
「ごきげんよう、のことよ」
「よろしく、よろしく、よろしく」
「ぼく、佐々木蔵之助ですお」
「佐々木耕君じゃないの?」
「違いますお、佐々木蔵之助です」
「佐々木蔵之助さん、こんにちは」
「こんにちは」
「ぼく、タカハシさんに『手とまってる』『やり直し』っていわれちゃったよ」
そんなやつ、お父さんがやっつけてやる。
「お父さん、さらにってなに?」
「それに加えて、っていうことだよ」
「さらに、さらに」
「お母さん、けっきょくってなに?」
「ほんとうのところ、ってことよ」
「けっきょく、けっきょく、けっきょく」
「お母さん、フツウってなに?」
「フツウねえ。フツウ、フツウ、フツウは普通ってことよ。耕君、普通に戻ってみる?」
「僕、フツウに戻りますお」
「そうか。よし普通に戻るぞお、いち、にの、さん!」
「お母さん、宝物ってなあに?」
「一番大切なものだよ。耕君、お母さんの宝物って何だか分かる?」
「…………耕君だお」
「あったりい! それじゃあ耕君の宝物はなあに?」
「お母さんだお」