よこしまなすいようび

 

今井義行

 
 

・・・・よこしまな匂いのすいようび
そのような あさの おとずれに
あけがたの月星の残りでは足りず
ろうそく、のような妻を創ろう・・・。
哀歓を しる ひと そんな妻を

葦原をすぎて
朝凪へいたり

そのひとはやってきた 晩い夏のうまれというほか
は なにも知らされず、

どこの 土地から 来たのかも、

潮煙にのまれ
どこの そらから 来たのかも、なにも

なめらかな 息が わたしの耳を撫でた

わたしは 何度も
寝返りをうつので
わたしの
眠りの姿態とは
ひらがなの「く」の字の形で

その眠りの姿態
「く」の字 は 
《 あ、なにか、「く」るよ 》の「く」
のような 想いがしていて、

わたしは 「ようこそ」と いいました

渡り廊下を 過ぎるような 夢、みよう

夢、みよう 夢、みよう

なめらかな ろうそくの ような・・・・
姿態とは 動作したときのからだの薫

わたし、瑠璃色の 記念碑を建てます

≪晩夏にゆきがふるのならば
着衣のみだれ、まどのゆき≫

歓喜もあれば 哀訴もあって 甘酸ともいう

それが何だ?
姦淫のないじんせいなんてあるか

環礁のある ももは、ゆれつつ

暁のまきば は あしとあしのあいだに 茂り──
天井の 霧もよう きれい
敷布の 蘭もよう きれい

広い緑のまきばには、放牧されている羊たちが仰ぎ

くちびるとつめさきがあればゆるやかに濡れあえる
と わたしたちは いのって うたがうことはなく

あなたは しろい鼠蹊部をひらかれて「蜜蠟に挿して」と 欲した

敷布の 蘭もよう きれい
なみもようねがえりはねて
わたしはこしをひきよせる

わたしはこしにひたいをつける
わたしはこしをひきよせる
わたしはこしにまぶたをつける
わたしはまつげつまびかれ

わたしは睾丸に ろうを ぬりこまれ・・・
わたしはちぢれつまびかれ

暁の まきば は あしとあしのあいだに 茂る──
碧いトルコ石の首飾りの妻

ひたいにまあるいあせの珠
脱がれたヒールや靴したや
わたしはちぢれつまびかれ

わたしはまつげつまびかれ
わたしはろうそくのくちにふくまれてとけそうで
わたしはまつげつまびかれ

わたしはまつげつまびかれ
わたしは睾丸に ろうを ぬりこまれ・・・
わたしはちぢれつまびかれ

わたしは まるい ろうそくのむねを
わたしはむねをひきよせる
わたしは まるい ろうそくのむねを
つよく、つよく こねる

暁のまきば は あしとあしのあいだに 茂る──
ガス火をともすおとがする
葉ものをきざむおとがする

豆を茹でるせなかの揺れに
湯気さえへやへ身をよじる
ろうそくのような妻は、すこしずつしろくにじむ
わたしは ほのおをとめる

ろうそくのような妻は、すこしずつしろくにじむ
葉ものを盛るしろい背に
湯気さえへやへ身をよじる
ろうそくのような妻は、≪おたべなさい≫と わたしにいった

わたしはくちに豆をふくむ
わたしはゆびで葉をつまむ
わたしはくちにふくみつつ

≪晩夏にゆきがふるのならば
着衣のみだれ、まどのゆき≫

≪晩夏にゆきがふるのならば
着衣のみだれ、まどのゆき≫

暁のまきば は あしとあしのあいだに 茂る──

わたしはくちに唇、ふくみ
尿道と性愛はあわせかがみ

そして ろうそくのような妻は 折りたたまれた ちいさな紙片を ひらき

stay hungry, stay foolish
そう ジョブズは いったの と わたしにいった
そうして──
なんでも鑑定団 は 何曜日? と ろうそくのような妻は、わたしにいった

「火曜日 それに夜の番組だ
空0識りたいもの があるの・・・・・・?」

≪あたしのこころ、あたしのからだ≫

stay hungry, stay foolishと ジョブズは いったの
直感で いきよ といった

直感で いきよ といった

はずされた蠟のレンズから檸檬のひとみ
敷布の 蘭もよう きれい
わたしはつめでおしひらく

わたしはつめでおしひらく
わたしはつめで蘭を左右におしひらく
わたしはつめでおしひらく

わたしはつめでおしひらく
わたしはつめで蘭を左右におしひらく
わたしはつめでおしひらく

つめさきで蘭をおしひらきおしひらきおしひらき、
のばしてのばしてのばしてのばしてのばして・・・・・、 閃光礼拝──

羊たちが飛び散る、いちもくさんに飛び散って、

ときのうつりに見舞われて
尿道と性愛はあわせかがみ
夢の中で とろけるような
靴はく影の背にてをまわし

≪晩夏にゆきがふるのならば
着衣のみだれ、まどのゆき≫

≪晩夏にゆきがふるのならば
着衣のみだれ、まどのゆき≫

暁のまきば は あしとあしのあいだに 茂る──

天井の 霧もよう きれい
夢の中に しずまるような
靴はく影の背にてをまわし

いかないで、暁のまきば 暁のまきば・・・・・・
いかないで、暁のまきば 暁のまきば・・・・・・
いかないで、暁のまきば 暁のまきば・・・・・・
いかないで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、

≪晩夏にゆきがふるのならば
着衣のみだれ、まどのゆき≫

≪晩夏にゆきがふるのならば
着衣のみだれ、まどのゆき≫

とろとろとろ とろとろとろ しろいこころとからだ こぼす
ろうそく、のような妻 哀歓を しる ひと そんな妻・・・・・・。

 

 

 

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