鈴木志郎康
トロリン、
トロリン、
トロリン、
ヘッ。
ある男を、
その連れ合いが、
なじった。
ヘッ。
バカ詩人!
そっちじゃなくてこっちを持ってよ。
こっちのことを考えてね。
詩人でしょう、
あんた、
想像力を働かせなさい。
バカ詩人ね。
男は答えた。
仕方ねえんだ。
書かれた言葉はみんな自己中、
言葉を書く人みんな自己中、
詩人は言葉を追ってみんな自己中心。
自己中から出られない。
自己中だから面白い、
朔太郎なんか超自己中だ。
光太郎も超自己中だ。
えらーい、
有名詩人なんぞは、
みんな超自己中なんだぞ。
書かれた詩はみんな超自己中だ。
超自己中だからみんなが読むんだって。
何言ってるのよ。
それとこれとはちがうわよ。
バカ詩人、
バカ詩人、
バカ詩人。
へえ、
詩って超自己中を目指すのね、
バカ詩人さん。
ワッハッハッ、
ハ、
ハ、
ハ。
その男と、
連れ合いは、
揃って笑った。
トロリン、
ヘッ。