くり返されるオレンジという出来事 2

 

芦田みゆき

 
 

「うまくむけないよ」

 

Qはオレンジに突き立てた爪を、ゆっくりとはずす。

 

手のひらを伝った果汁は、手首から肘へと流れていく。
Qはまだ固いオレンジの表皮に唇をつける。

 

雨がもっと降ればいい。

 

固く閉めきった湿度の高い部屋に、オレンジの香りが充満し、あたしは息苦しい。
もっともっと、あたしの内部を洗い流すように、降りつづけばいいのに。

 

あたしはQから乱暴にオレンジを奪い取る。
破れた表皮から溢れだすオレンジを舌で吸い上げ、おもいきり囓りついた。

 

内部が露出する。
あたしの乳房がオレンジの水玉に染まった。

 

 

 

くり返されるオレンジという出来事 2」への2件のフィードバック

    • お返事遅くなってすみません。小説を書いていた伊東さんですね!
      10年位前から写真を撮っています。
      観ていただいてありがとうございます!

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