工藤冬里
手放し運転
手放しに喜ばれる
暴風にフェンスの蔦が靡く
白く装っていても
中身はドロドロ、みたいな
殖産興業の
谷を朝市は
痩せ細り
暴風は
何でも売れます
警報だらけの
仁淀川
ドレスの白から
白を抜け
木々は靡く
おいでおいで
赤い橋を渡れ
フロントガラスに
溜まる雨粒
ワイプアウトされない
航走履歴
飽和状態で推移していく
仁淀は殆ど湖
通行止めになる前に
この白を抜けろ
枝の散乱
緑の橋を抜け
白い橋も抜け
ここから川は逆に流れる
ここには遺跡がある
黒岩
遺跡があるのは
風がここで止まるからだ
ここで最後のひぐらしを聴いた
* *
針の穴を通すように俯き
筵の上で一点を凝視する祈りの横顔
デザインされた横顔の高知
家の中の蛇は放って置け
すべての小富士に登れ
空いたアパートの部屋をゲストハウスにすると
なりすましのカップルが住みついた
昔は葉を食べていた
今は蜜を食べている
となりすました蝶disguising transformerは言うが
心など信用できない
肉の代わりに石を食べたって本当ですか?
* *
川は逆には流れていなかった
久万からさえも
変容と変革のからまりのように
私たちは太平洋に転がり落ちる