少女のようなあなたの旅立ちに

 

ヒヨコブタ

 
 

話上手なおとなのなかその人はいつも静かだった

 
話すことで人をひきつける魅力をもつおとなより
とつとつと話すひとのことばを聞き漏らさぬように観察していた
おとなの輪のなかに入らぬおとながいてもいいと知った
悲しいときにそっと静かにしているおとながいてもいいと

彼女らしい旅立ちというのは酷すぎる
いつもどおり好き勝手な話が飛び交いはじめても
彼女はもう傷つかないでいい
わたしをそっと見守り
わたしの話を聞き取ろうとしてくれたそのひとは
たしかに
旅立ってしまった
たくさんの編物をありがとう
こころをこめて偉ぶることもないその贈り物が宝物だった

どんなに会いたくともこうして別れゆくなら
彼女のよく笑った顔をこころに切りとっておこう

さようなら大切な
少女のようなあなたへ

 

 

 

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