工藤冬里
わたくしとはひとつのうち捨てられたアルシーヴである
戦火のなか詩どころではない、ではなく、だから詩しかない、とジジェクは書いたが、
この災厄のなかで詩よりも上に来るのが写真のアルシーヴであるような場合、ひとは墓所を購入したことになる
生まれた村を出ぬまま
庭の柿の下を掘り進んだ
渡り歩くのは山窩や家船だけであり
ライブツアーなど考えも及ばなかった
恋愛のために、さらにはそのあざむきのために、生きているのは数日のように感じられた
スクリューの轟音のなかで掘り進み
四人の妻は地の溶鉱炉に達した
ネガティブな情報は最小限にとどめられ
母より大きい娘が
アルシーヴの轟音のなかで解決策に注目しやる気を教えていく
二人の黒い影がアフリカンシンセ風に揺れている
どんな人であろうとシンコペーションを拒否した歌で耳から教え
目の見えない人には後ろから話しかけてはいけない
鍛冶屋の親しみやすさと散髪屋の気遣いは
詩の轟音のなかで
以前のようには啄めないまま
この災厄を経て
千年の間カットされる
端女の時間割は白紙に戻す
スクリューのテクノロジーはハリー・スミスが
コンテンツの統合は天使が請け負う
最後の日に神殿で
アルシーヴ化をdisられる
写真群はギゼン者の外面に降りかかる
一円玉が内面に落ちる音を聞くために
電子的に人を呼び寄せる
石はとてつもなく大きいが
轟音のなかで崩される
種に食い込む外側
#poetry #rock musician