工藤冬里
彼は川の地方の雇われたかみそり、と呼ばれていた
どすのメッキーとか
京成サブ
みたいなものだ
(ずっと咳してる奴がいるな)
悪が悪を挫くという
白竜みたいな図式が
イニシエからあったのだ
(ずっと咳してる奴がいるな)
いまや悪い奴らの方が真剣だ、とは「ソシアリズム」の台詞だが、
時代はさらに進んで善人も悪人もともにコロナの婚宴に招待される道ゆきとなった
(ずっと咳してる奴がいるな)
彼の真剣さが意味をなさず
十部族の(真剣な)曖昧さも意味をなさなくなったのがこの春だ
(ずっと咳してる奴がいるな)
春はコロナを見ておらず
コロナは春を見ていなかった
(ずっと咳してる奴がいるな)
おれはアーカイブ化に勤しんでいて
春にもあらずコロナにもあらず
大他者になり得ぬそれらを通して
小文字の欲望を形成することなどしなかった
最後の春はそのように換骨堕胎されて過ぎる
(ずっと咳してる奴がいるな)
春の手の中で石のように硬く
コロナの手の中で粘土のように柔らかい
でもあと一周走り忘れています、
と顳顬の光る平面によって構成されている多面体としての頭部が語る
人種の違いよりもパーツのアフォーダンスのようなものが際立つ
(ずっと咳してる奴がいるな)
経験とは後追いの電影であり
知っていたが見るまでは思い出せない記憶だ
(それにしてもずっと咳してる奴がいるな)
#poetry #rock musician