原田淳子
百年か
千年か
以前、以降、が生まれた夜明け
胸に宿る黒い炎
蘇生する白い炎
ガーゼは吊るされ
光を濾過して、わたしの衣服となった
窓辺のフレアスカート
輪郭を失くした軒先で
主人は煙草をふかしてる
わたしは罹災の地図を舐めて歩く
有線だけは威勢がよくて
プラットホームで空回って
乗客の肩に乗る
涙でピアスが痒い
“動くな、死ね、蘇れ”
ひとびとは触れられない細胞壁のむこう
戻れない世界、はじめまして。
きみの名は?
わたしの胸に燃えたぎるフレア
みえないから、きっとグレー
慈しむべき、まるごとの身体
試練と観察は愛を発明する
つまづいた石のうえに物語がある
希望は石の下に、密やかにある
( 死なないために )
まだ、ことばは地面のなか
詩なんて時じゃないだろう
潔癖と寛容の天秤座は泣き顔の雨
謝らないで、
あなたごと抱きしめてあげる
わたしに腕があれば
死と生の双子座は風花
春を謳う
築いた城は朽ちる
いつか観た、『王と鳥』ね
完膚なきまでに
打ちひしがれ打ちのめされ
約束は、脆く、淡く
オンラインは苦手
カメラは怖いから回さない
夢であえたら
夢がなければ、千年のあとに
夜の大学通りのベンチにて
心臓で電報を打つ
珈琲に滲んで文字は消えた
遺されたのは周波しかないなんて
文明の墓です
太陽の審判
朝
粥をつくる
香草を刻む
いちにちの身体
まだ生かされている
命は器に盛られている
糸は切れ切れに、波を縫う