原田淳子
降りつづける雨に
時を刻む針も溶けて
振り子は揺れるのをやめた
街は蝋でかためられ
眠れぬ遺跡となった
あぁいつか
あなたと
あの境界のうえを歩きましたね
数えてはならない時間のなかで
わたしは青林檎を石に乗せて
あなたは赤林檎を頭に乗せた
ちいさな芽にすら笑いながら
樹の名をつけた
わたしは時間を手にしたくて
林檎に口づけして追放された
いまは
淡水魚たちがとおりすぎてゆきます
ここまでは
波はとどきません
あなたが線を引いたから
流れは蝋で息をとめ
雨滴すら真珠のよう
このはわたしの粒
なにの粒でしたか
記憶を失いましたが
ひかるまで
待ちます
時間をやめた
距離のなかで