ピカドン🉂

 

工藤冬里

 
 

原爆ドーム横の黒いビルがその直角をこちらに向けて陰翳のティンクトゥ―ラを分けているその直線のみが感情を捉える

いかにも無宗教のモニュメントの空洞から、水、火、ドームの頭、の順に見通すその設計は「マリエンバード」の直線を思わせる

セレモニーからは外れた場所にあるモニュメントは三六〇度から見上げる視線に晒されているその陰翳を分ける直線が無い

白茶けた復興のなかで黒い線は行き詰まっているその八月六日のセミのノイズのなかで彫られていく白い線は光なのでデューラー以来の線から自由になれているかもしれない

再開発の手が入った駅前の一角のお好み焼き屋「のん」で箸を使わないでと勧められるそのサンドイッチ様態のままの食べ方できっぱりと構造を分ける

現実平面に象徴層を定着させる手続き言い換えれば見えないものへの変換のためのフィルターを持つことは重要であるそのフォーマットを見出した人は幸いであるその人は暫しの猶予期間を楽しむ

尾道「ultra」に被爆者の遺品を撮影した作品があるその作者の石内都の言葉:どこかで生きているかもしれません。帰ってくるかもしれないんです。そのときのために、きれいに撮っておきたい。

彼らが本当に帰ってくることを知らないままその象徴界を広げるその道は滅びに至る幅を持つ

 

 

 

#poetry #rock musician

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です