南 椌椌
夏だからか盆だからか
誕生月が古稀だからか 残余だからか
気温体温36.8度 庭の蚊々氏はスコブルだ
いやたまたまなのだろうが 来ては去る
右から左から 思い出のヒトばかり
こちらがくしゃみすると
あちらで必ずくしゃみする
呼びもしないのに 思い出の殻を破って
いつのまにかマスクの裏で呵々大笑
いっしょに酒飲んでる 稀有な男たち
懐かしいです 痩せて太っておかっぱで
詩人の昶さんはどうしてますか
反核リュックのケンちゃん八重歯は健在ですか
すみえ姉さんは55歳でしたね 若いです
やけに蝉が鳴いてます 兆億の蝉
歌おうとして 歌詞を忘れてると
鼻歌めいて歌う 誰もいない海
音がはずれてるので 本当に誰もいない
青梅の工房で粘土を捏ねてると
ぐにゃりと指先から顔をだすヤツ
泥んこ遊びが大好きな 餓鬼じゃり子ども
雨の砂場で時を忘れて何日も
なにが楽しいのか 思い出のヒト
日々是好日 死ねばあの世の好々爺
逃げ場だよね 蟻が父さんなら母さんも蟻だ
そこまで言わなくとも
十分にキミの真意は伝わるよとキミ
足の指先はちんちらするので
映画館で靴下をぬぐ
でも途中でまた履いた
襟を正して見なくてはならない
死と生の海辺の映画館に
象は静かに座っている
七時間は長いか短いか人生
オオバヤシ監督は82歳
フー・ボー監督は29歳
お互いの映画のことばで
世界の希望と生と死について語りあったか
終戦解放75年のうち我が70年の夏
2020年8月15日を前にして
ソウル西方坡州市文山僻邑独居の弟よ、
その素焼きの係累兄弟姉妹を
イムジン河に投げ捨ててくれ
川底のナマズ一家に捧げてくれ
やがて眼くらむような明るい未来
千年の堆積からどこかの坊主が拾うだろう
朝の国の無名の坊主がオレと出逢う
体感温度38度線のさてもさてもな妄想です