正山千夏
細かい雨粒が
メガネのレンズにいっぱいだ
夏の終わりの夜の雨
ワイパーは動かない
私は歩き続ける
風がそれを
蒸発させてくれることを
期待しながら
東京はこんなにもいっぱい人がいて
孤独な人も同じくいっぱいだ
自分を孤独に追い詰めて
自分どころか他人を許すこともできず追い詰めて
自分ですべてを終わらせてしまった
あの人もきっと孤独症
人ごとなんかじゃない
自分も同じところにいる気がしてる
努力に見返りなんて求めない
なんて言いながら
愛ですら簡単に
ひっくり返って憎悪になる
承認されない魂のやりどころ
抱えて不眠になる夜
いっそ透明になれればきれいだけれど
生まれてきたのはなぜだろう
関わりあいたいのはなぜ
否定されても理解されなくても
思いを差し出して
傷ついてしまうのはなぜ
刺されれば
死んでしまうのはなぜ
ひとりじゃないのにひとりだ
ひとりなのにひとりじゃない
メガネは雨粒でいっぱいだ
土砂降りじゃないのにいつのまにか
闇にしっとりと濡れている