工藤冬里
東京が陥没して
ヨハンナは本籍を失くし
都々逸を失くした
代わりに隆起した小江戸は無かった
総体が肥溜 と言ってもよかった
月も魚も
手を伸ばせば掴めるところにあったのに
今では全てが電話口に後退した
東京を通してしか存在しなかった京都たちがカウンターであることを止め
ラカンの言う「女は存在しない」が現実になった
逆に言えば
女しか存在しなくなったのだ
不在に関して
最も活発になるのは女たちだからだ
アンテパス家の管理人クーザ氏の妻ヨハンナは
そのような女の一人であった
彼女が
内部情報を電話口で医師に教えたのだ
座っていたのはイケメンの若者二人であった
フクシマで会おう、って言ったよね?言ったよね?今またもう一度言うよ、フクシマで会おう、確かに言ったからね
えーっ ヤバイヤバい 分かんない分かんない
その頃東京は植木屋の服を探していた
ついでに植木屋の体も探していた
植木屋は東京の声で
才ノヽ∋ ー
と言った
ヨハンナはかれの足を掴んだ
#poetry #rock musician