原田淳子
四月は風ばかり吹いて、エメラルド
猫よ、
きみの眼の色の季節
ギリシャの海
波の結晶
猫よ、
きみはわたしのこどもでもなく
わたしの友人でもなく
恋人でもない
夢のおわりの朝
緑の眼でわたしを目撃する
幾億幾千もの虐殺を逃れて
きみの生はこの部屋に転がる
きみの緑がわたしの眼を舐める
家族/共同体/国家を逃れて
嘶き、共闘しよう
剥奪されない、生でいよう
緑の獣でいよう
四月の風が緑を噴きあげる
狂わされた季節に花たちが咲き急ぐ
白、黄、青、、
待って、と、つぶやく
まだ靴を履いていない
駆けあがる呼吸に
わたしの空洞のオルガンが軋む
和音未満の点線
貧しきものにも等しく時間は降る
愛と似て
時間は歪められない
緑の氾濫に、いのち萌ゆ